川沿いの遊歩道を歩くのって風情がありますよね。川面がきらめき、風が吹き、都会にいても自然を感じられる瞬間です。
でもそんな遊歩道が「川沿い」ではなく「川の中」だったらどんな感覚なのか。今日はそんな体験ができる変わった場所をリポートしましょう。
市の中心部を川がうねうねと蛇行して流れる「川の街」
本題に入る前に、まずは私が住むオーストラリア第3の都市ブリスベンの他とは違う地理的特徴について紹介します。なんと街の中心部をブリスベン川という大きな川が「うねうねと蛇行して」流れています。「東京だって隅田川が、大阪だって淀川があるじゃないか」と言われそうですが、このブリスベン川の際立った特徴は「市の中心部で大きく蛇行していること」です(隅田川も上流では蛇行しているところがあるのですが、浅草あたりから下流はときおりゆるやかに曲がる程度です)。
で、川が蛇行しているとどうなるか? カーブの外側は急流のため岩肌が削れて高さ約20メールの切り立った崖になったり、流れがゆるい内側は砂浜やマングローブ林ができたりと、様々な変わった表情を見せてくれます。
※グーグルマップで「brisbane central」と入れていただくとブリスベン市の中心部の地図が出てきます。
そんな自然に満ちたすぐそばに高さ数十階の高層ビルが林立して不思議な空間を醸し出します。そういうことからオーストラリア内でも「リバーシティー(川の街)」と称されることが多いブリスベン。そんな川の姿を堪能できるように川沿いの遊歩道がいくつも作られ、それぞれが別の表情を見せています。
そんな遊歩道を数回にわたって紹介するこのシリーズ。第1回は冒頭に紹介した「川べりではなく川の中を行くリバーウォーク」。正式名称は「ニューファームリバーウォーク(New Farm River Walk)」です。
エレベーターで一気に崖下へ
スタート地点は市の中心部の東側にある「ストーリーブリッジ(Story Bridge)」の北詰の東側。崖の上から川べりまで降りる階段とスロープ、そしてエスカレーターがあります。アウトドア派としては徒歩一択と高らかに宣言したいところですが、エレベーターの「召喚される感」も捨てがたいです(下降するので「地獄へ召喚感」かもしれませんが)。
到着するとそこはクラフトビール醸造所の直営パブ&レストラン(日本風のホステスさんがいるパブではなく普通の飲み屋)。一杯ひっかけたい衝動に駆られますが、その楽しみはあとに置いておいて先を進みます。
3分ほど歩くと、いよいよ「ニューファームリバーウォーク」のスタート地点。右が歩行者用、左が自転車用(電動キックボードもこちら側)とわかれていて、路面の色も変えてあります。路面はアスファルトのような素材です。
右も左も川の不思議なスリル感
スタート前にお伝えしておきますがこの「ニューファームリバーウォーク」、長さは870メートルで途中に屋根付きの休憩スペースはあっても退避路みたいなものはありません。特に夏場(亜熱帯なので10月~4月くらいは暑い。ちなみに南半球なので季節は逆転します)は炎天下ではなく、朝早くから夕暮れ以降の利用をおすすめします。
さて遊歩道から右を見ると川。
左を見ると川の向こうに高級マンション。
川べりを並行して進むことも、橋で川を垂直に横切ることもしょっちゅうありますが、川の流れに沿って歩く「水上歩道」は貴重な体験です。路面から川面まではせいぜい5メートルくらいですが「水上にいる」と思うとゾクゾクとしたスリルを感じます。
途中に5ヵ所ほど休憩所があります。蛇口もあり。川やそこを行く船を眺めながらお弁当やおやつにするのもいいでしょう。
そうこうするうちに終点に到着。陸地の道を歩いても戻れますが、そのままUターンして今度は街の中心部方面を眺めながら歩くのもいいでしょう。
崖上にも遊歩道。2つの角度からの絶景を
スタート地点にもどったらぜひ先ほどお伝えした2つのめの「召喚エレベーター」に乗って崖の上まで上がってください。崖上にも遊歩道があるので川や摩天楼を別の角度から眺められます。特におすすめは日が落ちてから夜景になるまでのいっとき。
すみません。ちゃんと「夜景モード」のあるスマホを買わなきゃと思いました。
今回通った「ニューファームリバーウォーク」ですが……船の運航を妨げない範囲でもう少し川の中央近くにつくったらさらにゾクゾク感が楽しめる気がしました。いつかそういうものができたら、またリポートします。
次回は「摩天楼沿いのボードウォーク」の予定です。
オーストラリア在住ライター(海外書き人クラブ)
柳沢有紀夫