「そして日本海サーフトリップ」東田トモヒロの波乗り四方山話
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    2022.12.12

    「そして日本海サーフトリップ」東田トモヒロの波乗り四方山話

    日本津々浦々を愛車のハイエースで巡るシンガーソングライターの東田トモヒロさん。その傍らには必ずサーフボードがあります。サーフ天国ニッポン!

    冬こそ海に漕ぎ出でる!

    自分のライフスタイルの中に「波乗り」が定着して随分と月日が流れましたが、年を重ねるごとにその奥深さにはね、ほんと魅了されています。

    考えてみれば僕もやはりそうでしたが、初めてのサーフィンの経験は「夏」だったというケースが圧倒的に多いようです。ビギナーはウエットスーツを持ちませんのでね、それはごく自然なことでもありますが。

    波に乗る東田さん

    旅に必ず持ち出すのはミッドレングスのサーフボード。

    ボードの上に立てるようになり、海に入るという行為そのものに強い魅力を感じた人は、秋になってもサーフィンをやりたいと思いたち、サーフショップなどで最初のウエットスーツを購入する事になります。そしてさらに「冬もやったるで」的な肝が座った人においては、冬用のウエットスーツ、いわゆるセミドライスーツをオーダーします。こうして経験者の中から少なからず「サーフィンがライフスタイルの一つになる」という素敵な扉を叩く人々が現れる事になるのです、多分ね。

    バックドアに腰掛ける東田さん

    冬の旅はサーフボードとスケートボード、楽器にセミドライスーツを積んで。

    この感覚は、昨今のキャンプブームから派生そして発展した「冬キャン」なるカテゴリーの誕生への導線に酷似しているとも言えなくない。冬のサーフィン、あるいは冬のキャンプは、よりハードコア志向の高い、しぶとくも逞しい精神レベルの持ち主たちに愛好されている世界と言えるでしょう、ある意味ね。

    もしかしたらそんな人種の一人であるかもしれない僕は、ここに敢えて申し上げたい。サーフィンは晩秋、そして冬場こそ熱い経験の出来るスポーツなのではないかとね!「とね」っとか言ったりしてますが。

    太平洋はジョンやポール、日本海はジョージ

    なんせもう秋から冬にかけてようやく現れ始める波があるのです、この島国日本には。その側面においては、サーフィンはウィンタースポーツの一つでもあると言っても過言ではありません。極めて独断ではありますが、その舞台のトップランカーこそ、どこであろう「日本海」だと思うのです。ここから今回はこの日本海、特に僕にとって馴染みのある北陸以西の日本海について語ってみたいと思います。

    サーフィンを始めた頃、僕にとってそのフィールドはほとんどの場合「太平洋」でした。太平洋は大海原の名にふさわしく、どこまでも果てしない広い広い海ですから、南から、あるいは東からのうねり、そして台風の豪快なスウェルもキャッチします。

    プロサーファーとプロフォトグラファーが残した名場面なども無数に収録されている、サーファーにとってはまさに夢の舞台ですよね。

    日本海の夕陽

    水平線に沈む夕陽を観られるのも、日本海の旅の醍醐味。

    千葉、湘南、宮崎など、世界的にもその名前の知られたエリアは、ポイント名まで数え上げようものならまさに枚挙にいとまもないほどです。例えばそれらのエリアをビートルズに変換するならば、ジョン・レノンやポール・マッカートニーであり、そこに包含されている各ポイントは、彼らが残した数多くの名曲的な存在と言えるかも知れません。

    例えば湘南の大崎は「ヘイジュード」、千葉の東浪見は「インマイライフ」とかね。だとすると日本海は、まさにジョージ・ハリスンに例えることができるでしょう。(リンゴスターはどこ?って声が聞こえてきそうですが)

    ジョージの名曲「Here comes the sun」のごとく決して派手ではありませんが、アルバムに欠かせない名脇役。夏の終わりあたりから、ゆっくりと頭をもたげてくる、渋くてじわじわ効く日本海の波は、ジョージ・ハリスンと彼が残したナンバーの佇まいそのものであります、ちょっと強引な論理だけどね。

    海の嬉しい“裏切り”

    それは4年前の9月の中頃のことでした。鳥取のとあるポイントで、僕は素晴らしく気持ちのいい波と出逢ってしまいました。その日の出来事は、不思議なことに僕の中で何か弾けるものがあったのです。

    もちろんそれよりも前から日本海側の波は何度も経験していたのですが、深く感動には至らなかったかも知れません。サーフトリップがもたらしてくれる運命的な波との出逢いは、まさに奇跡の一言に尽きますが、今思えばあれはそんな出来事だった様に思います。

    波とサーファー

    山陰のポイントでのサーファーのラインナップ。

    よくサーファーは天気図や波予報などの情報を集めて、大まかな予想を立てて海へと向かうのですが、その予想をいい意味で裏切ってくれたのですね、その日の日本海の波は。
    どう考えてもこんな波が現れる気圧配置ではないのに、いわゆる「胸」ぐらいの美しいブレイクとラインナップが幾重にも続いていました。

    サーファーも比較的少なく、ビジターの僕も十分に楽しめるくらい波に乗れました。そしてとにかく水がどこまでも美しく澄んでいた。日本海の水の透明度に、すっかり心を奪われてしまいました。

    それ以来、「秋には必ず日本海に出よう」と決心して、年間のライブのスケジューリングをするようにしています。

    一期一会の思い出深い波

    その計画が功をそうしたのか、ここ3年間の自分にとってのベストウェイブは、すべて日本海の波という事になっているのです。

    2020年のベストは冬の終わりに訪れた、石川県は能登半島の先端あたりのビーチで出逢った波。強い北風によって生み出された波でしたが、そのポイントだけは風の影響をかわして、豪快なうねりだけが届いていました。台風のスウェルには及ばないにしても、僕にとっては十分に力強く、それでいて綺麗にブレイクしてゆく波でした。

    海辺に停まる車

    福井のとあるポイントに集まったサーファーたち。

    2021年は福井の三国の郊外にある無数のビーチブレイクの中の一つ。この時、サーファーはこのポイントにおいて僕ひとりきりでした。「頭」くらいの波でかなりのロングライドが出来ましたので、プルアウト(波から離脱して再び沖に出る体勢に戻る)した時とても興奮状態にありましたところ、カモメの群れが僕の目の前に飛来し、祝福してくれたことを覚えたいます。ああなんてロマンチックなのでしょう。真っ白なカモメたちの翼と、真っ青な空のコントラストが今も目に焼き付いています。

    そして2022年。今年のベストもやはり今のところ日本海。これは甲乙つけがたい二つの波が記憶されています。一つは能登半島美付け根あたりにある、とあるリーフのポイント。こちらはなかなかスリルのある「頭オーバー」の波でした。秋の台風が本州を縦断して過ぎ去った直後の「バックスウェル」というものです。

    仲良くしてくれているローカルのサーファーの方に案内してもらって入るような、そのエリアにおいてはこの上なく貴重なポイントです。ライブ前にテイクオフした極上の一本の波でしたね。

    そしてもう一つはつい先日、11月に訪れた鳥取の波です。鳥取市と米子市の間にいくつものサーフポイントが点在していますが、その中の一つのポイントで出逢った波です。2時間ぐらい入っていてまともに乗れた波はたったの一本でしたが、これが実に気持ち良かった。

    自分にだけもたらされた波だと思うと、その奇跡を信じないわけにはいきませんもの。

    日本海ならではのあれこれ

    日本海は太平洋に比べて面積が狭いので、うねりの元となる低気圧から、波が届く岸までのスパンがどうしても短くなります。ゆえに低気圧が過ぎ去ってしまうと、あっという間に波がなくなるケースが多いようです。

    それから太平洋のほどの大きな潮の干満差もありませんから、満ち引きで生まれる波というものあまり見られません。つまり、太平洋と比べて波乗りに適した波がキープされる時間が限られているということになります。

    だからこそ、その稀な機会に出逢えた時の喜びはひとしおなのです。夏が終わり、風が北寄りにシフトし始めるころに、日本海は波が現れ始めます。秋の初め頃はまだ小さく、冬型の気圧配置がきつくなるほどに海は荒れてゆくようです。

    登山もサーフィンも絶頂の間が短い

    ところで波乗りってのはほんと不思議な遊びですよね。プロのサーファーの場合においてさえ、サーフボードの上に立っている時間よりも、パドルしている時間とか、ただひたすら海に浮かんでいる時間の方が圧倒的に長いもの。それがわかっていながらなぜ人はまた海に向かうのでしょうか?不思議でなりません。

    登山家が山頂にとどまる時間が短いのと似てなくない様な気がします。もしかしたら、偉大なる大自然の中に我が身をおく、それだけで満足しているのかも知れませんね。

    音楽のライブもそんなところです。長時間かけて街から街へと移動して、到着した場所で機材を拵えてリハーサル。しかしながら本番のライブなんてあっという間です。やはり好きなのでしょうね、何はともあれ。その行為そのものに「生きがい」を感じているのだと思います。

    余談ですが「生きがい」って英訳できないみたいですよ。西洋圏にはその感覚が無かったのでしょうね。「生きがい」の真意に神秘性を感じているのでしょうか「IKIGAI」として欧米で話題になっているみたいです、面白いですね。

    とまあこのように、日本海のポテンシャルの高さを実感を伴う形で再認識したことで、サーフトリップがより楽しみになった昨今なのです。アナログレコードのA面の曲を聴きたいがために購入したものの、B面の曲もメチャいいじゃん的な感覚とでも申しましょうか。

    それから日本海の旅は、もしかしたら太平洋のそれよりも、より美しい海に出逢える機会に恵まれるかも知れません。

    美しい青い海、ここはモルディブか!?

    特に僕がこのところすっかり心を動かされているのが、山口の海です。日本海といえばとにかく荒々しく、時には吹雪混じりでゴツゴツした岩にドカーンと灰色の波が打ちつけるみたいなイメージがすり込まれてる方もいらっしゃるかも知れませんが、山口の海ははだいぶそこからはかけ離れていました。

    青空の角島大橋

    美しい山口の海と角島大橋。

    夏場や初秋に訪れたからかも知れませんが、絵に描いたような「白い砂浜にコバルトブルーの海」がそこには広がっていたのです。清ヶ浜、二位の浜、大浜など美しいビーチがいくつもありますが、特筆すべきはやはり角島。

    角島大橋は雑誌などにもよく取り上げられますのでね、ご存知の方いらっしゃるかと思いますが、角島の道の駅の目の前に広がる海なんかもう「あれ?モルディブ?」っと海外にでも来たかのような錯覚に陥るほど美しい。

    すぐそばにキャンプ場もありますのでね、キャンプを楽しみに行くだけでも最高の風景に巡り会えると思いますよ。このあたりはもちろんサーフポイントでもありますから、海に入るときはローカルの方々への敬意を常に心掛けたいものです。

    波に乗る東田さん

    能登半島でのライディングショット 。

    さらに言うなら日本海側はとても神秘的なエリアでもあります。京都の北に位置する天橋立の界隈や、鳥取や島根の海沿いに点在する地名に隠された歴史など、その辺りを調べたりしながら旅をするのも面白いかも知れません。

    世界に誇るべき日本の海、日本海。機会があればぜひその旅に出かけてみてくださいね。決してB面ではないことに気付かされますよ。

    今回のおすすめアウトドアミュージック

    グレゴリー・アラン・イサコフ「The Stable Song」
    彼もまた日本海ばりに渋いミュージシャン。海沿いを旅しながら聴いてみてください。浸れますから。

    東田トモヒロNEWS

    東田トモヒロ Christmas Live at THUMBS UP 横浜
    毎年年末に行っているBirthdayLive今年は少し早く開催します!

    日程:2022.12.23FRI
    会場 : THUMBS UP  (神奈川県横浜市西区南幸2丁目1-22 相鉄ムービル)
    出演:東田トモヒロ(Vo,Gt)、小山善章(Bass)、三好正晃(Gt)、辻コースケ(Per
    DJ : Tommy Returntables
    時間:OPEN 18:30 / START 19:30 2set
    料金: ご予約 3000yen / 当日 3500yen (別途 1ドリンク+1フードのオーダー)
    チケットインフォメーション : 横浜THUMBS UP 045(314)8705  https://www.stovesyokohama.com/

    ライブのポスター

    サブスクリプションコミュニティTSC(Tomo Surf Club)
    シンガーソングライター東田トモヒロとつくる、持続可能な音楽のコミュニティです。
    月額制のサブスクリプションで、独自の配信ライブや、インターネットラジオ配信等いくつかのオリジナルコンテンツを用意して、みなさんとコミュニケーションを図っています。ぜひご参加ください。
    https://community.camp-fire.jp/projects/view/338326

    私が書きました!
    シンガーソングライター
    東田トモヒロ

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