ペルセウスはペガススに乗ったのか?ペガスス座の翼とモコモコ腹の謎
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    2022.10.17

    ペルセウスはペガススに乗ったのか?ペガスス座の翼とモコモコ腹の謎

    ペルセウスはペガススに乗っていない!?

    秋はあまり目立った星座はありませんが、その中でピカイチの知名度を誇るのがペガスス座でしょう。今回はペガススの由来をひもといてみましょう。

    秋の代表的な星座5選。ケフェウス王とカシオペヤ王妃の娘がアンドロメダ姫。カシオペヤが娘を自慢しすぎたに神の怒りを買い、アンドロメダ姫は岸壁に捕らわれ、海の化け物(くじら座)の生け贄に。助けに来たのがペルセウス。ペガススに乗って助けに来たというが……。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    星図に描かれたペガススは翼が生えた白い馬です。その出自はというと、ギリシア神話に登場する有名な勇者ペルセウスが怪物メドゥーサの首を切り、そのほとばしる血から生まれた馬という説が有名です。メドゥーサを退治したペルセウスはペガススにまたがり、飛び立ちます。アンドロメダ姫があわや海の化け物(くじら座)に食われようというところ、ペルセウスが空を飛んで駆けつけ、バッサリと化け物を退治。アンドロメダ姫救出に成功し、ふたりは結婚。めでたしめでたしという物語なのですが、実はちょっと違うのです。

    ペルセウスは大神ゼウスの子です。冒険に出る前に、いろんな神さまから豪華な冒険道具一式を餞別がてらにもらっています。その中に、伝令の神ヘルメスからもらった翼の生えた草履があります。つまり、ペルセウスはペガススに乗らなくても空を飛べたのです。

    実際、ギリシア神話の中に、ペガススがペルセウスを運んだというエピソードは見当たりません。そもそもペガススの誕生に関わったこと以外にペルセウスとの接点はありません。ただ、ベレロポーンという別の勇者を乗せて、キマイラという別の怪物を退治するのを助けたという神話は伝わっています。

    そもそもギリシア時代のペガスス座は、単に「ウマ座」と呼ばれていました。いつ翼が生えたのか、よくわかりません。星座の来歴としてはよくある話ですが、星座が誕生した古代メソポタミアから古代ギリシアを経て、ヨーロッパに渡る間にいろんな変形が生じます。その間、たくさんの星図が描かれていますが、その中で誰かが、ただの馬だったペガススに翼を描き加えたとしても不思議ではありません。実際、ペガスス座には、馬の頭や鼻、脚にはそれを示す星がありますが、翼の部分にめぼしい星はありません。翼を意味する名がついた星もありません。なぜ翼が生えているのか、よくわからないのです。

    翼はあるが、それを示す星はないペガスス座。(画像:ステラナビゲータ/アストロアーツ)

    ペガススのお腹がモコモコしているのはなぜ

    また、星座のペガススは胴体だけで下半身がありません。星座図を見ると、腹のあたりがモコモコっとした不思議な馬です。

    ここでもうひとつ、ギリシア神話の中のエピソードを紹介しましょう。ある女性が望まぬ妊娠をしてしまい、父親に知られないように馬になって逃げおおせたという話があります。膨らんだお腹を隠しているので、馬の腹がモコモコッとしている。古代ギリシアの学者の中には、これこそが「ウマ座」の神話だと主張する人もいました。いずれにしろホントのところは闇の中、ペガススの由来はわりとミステリアスなのです。 

    秋の夜空はあまり目立つ星はありませんが、ペガススの大きな四辺形はよく目立ちます。メソポタミアではこの大きな四角は「畑」と呼ばれていました。そのまわりには農耕具の絵が描かれています。古代、この四辺形は、農作業の時期などを示すカレンダー的な役目をしていたのかもしれません。日本では「四つ星」「升」などと呼ばれていました。

    見上げると大きな四辺形が天頂を通過していきます。なぜ翼があるのか、なぜ白い馬なのか、由来がいまひとつはっきりしないペガススの物語を空想してみるのも楽しいでしょう。

    構成/佐藤恵菜

    私がガイドしました!
    星空案内人
    廣瀬匠
    星空案内人 天文系ライター。株式会社アストロアーツで天文ニュースの編集などに携わる。天文学の歴史も研究していて、パリ第7大学で古代インドの天文学を 扱った論文で博士号を取得。星のソムリエ®の資格を持つ案内人でもある。アストロアーツより、宇宙の不思議に出会うモバイルアプリ「星空ナビ」iPhoneAndroid版無料公開中。

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