夜明けの東の空に惑星がひしめく春
2021年も押しつまってきたところで、2022年の星空の見どころをご案内しましょう。
注目の天文現象は2つあります。
ひとつは、惑星たちのオンパレードです。来年は、春先の東の空に惑星が集合するのをはじめ、金星と木星の大接近、火星の最接近など、惑星を追いかけるのが楽しい一年です。
2つめは、11月8日の皆既月食です。全国的に見られます。しかも、月食中に天王星食が起こるという激レア現象です。
では、惑星たちの見どころからご案内しましょう。
春先の、明け方の東の空に惑星がわらわらと集まってきます。この時期の明け方は、そこまで冷え込まないので観察の絶好のチャンスです。ぜひ早起きしたいものです。
3月20日には金星が太陽からもっとも離れる西方最大離角を迎えます。光度マイナス4.5等という輝きを持って明け方の空に現れます。この光度は、日中の空でも見えるほどの明るさです。
3月28〜29日にかけては明け方の空に細い月と火星、土星が集まります。
4月は25〜28日にかけて、月が土星、火星、金星、木星のそばを通過していきます。28日の午前4時には金星と海王星があと少しで重なるというところまで大接近します。数十年に一度の歴史的瞬間なのですが、海王星が肉眼で見えないため、あまり注目されていません。
一応、望遠鏡か双眼鏡を使って観察できる可能性はあります。ただ、海王星をフレームにとらえたとしても、金星の光にかき消されてよく見えないでしょう。海王星はこの時点で7.9等。とても暗いのです。金星は-4.1等で、その差は12等。明るさは6万3千倍も違います。しかし、望遠鏡の視野に金星を入れれば確実に海王星も入るというほどの近さなので、「あの輝きのうち6万3千分の1は海王星のものだ」と考えるのもありかもしれませんね。海王星単独では、それなりの熟練者か自動導入望遠鏡でないと視野に入れることすらできません。もし、カメラで金星と海王星がとらえられたら、歴史的な一枚になるでしょう。
木星と金星が近すぎる!
次に、5月1日には木星と金星が接近します。その間、約14’(14分=0.23度)。満月の半径ほどの距離しかありません。
上の図は、望遠鏡を使って見た場合の木星と金星です。木星の周りにある4つの星はガリレオ衛星です。かなり近いことがおわかりでしょう。
これほど近い木星と金星、しかも金星はまだかなり明るい状態です。ふたつの惑星がどのように見えるのか。ぜひ肉眼で確かめてください。望遠鏡なら、倍率によっては木星のガリレオ衛星と金星が若干欠けている(半月より少し膨らんでいるくらい)のを同時に見るチャンスです。この2つは、天体望遠鏡のパイオニアであるガリレオ・ガリレイが地動説の重要な証拠とした現象でもあります。
このほかにも4月上旬には火星と土星、5月30日には火星と木星が接近するなど、春は惑星の接近ラッシュです。また、12月には火星が接近してきて、冬の星座たちの間で赤さと明るさを競います。水星は数か月に一度、空の低いところで見頃を迎えます。肉眼で見えない天王星と海王星も来年は観測にトライするいいチャンスです。本コラムでもその都度みなさまに情報を届けますので、お見逃しなく!
11月8日、皆既月食&天王星食の歴史的瞬間
2022年最大のトピックは11月8日の皆既月食です。しかも全国的に観測できます。
皆既になるのが19時すぎで、皆既が終わるのが20時40分過ぎ。1時間半にわたって皆既状態が楽しめます。
さらにすごいことが起こります。月食中に天王星が月に隠されるのです。特に、東京より西の地域では、皆既月食中に起こります。天王星は十分に高い視力と暗い空でなければ肉眼では見えないので、望遠鏡か双眼鏡をセットして観測してください。激レア現象です。
皆既になった月は、消えるわけでなく、ぼーっと赤黒い影が見えます。この赤銅色の月に、ほんのり青緑色の天王星が吸い込まれていく瞬間、いったいどんなふうに見えるのか……。私も息をこらして観察したいと思います。
このほか2022年の星空の見どころに、次のような現象があります。
1月4日未明、三大流星群のしぶんぎ座流星群が見頃を迎えます。
7月21〜22日の深夜、火星が月に隠されます。全過程が見られるのは北日本に限られますが、関西より東では月の欠けた部分から赤い火星が出現するようすを楽しめます。
12月1日 火星が地球に最接近。光度マイナス1.8等まで明るくなります。
来年は1年を通して惑星たちに注目ですね。早めに起きて東の空を見る1年になりそうです。さらに詳しくは『アストロガイド星空年鑑2022』をご覧いただければと思います。よいお年をお迎えください!