セドナ版「奇跡のリンゴ」は、開拓者時代の味。 | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2020.12.08

    セドナ版「奇跡のリンゴ」は、開拓者時代の味。

    世界的な聖地・パワースポット、セドナに住んで23年になる写心家・NANAさんは、セドナの大自然をガイドしながら、住んでいる人だけが触れられる四季折々のセドナの大自然を写真に収めています。アリゾナ州は乾燥して季節感に乏しいというイメージがありますが、NANAさんの案内するセドナは、美しくて美味しい秋真っ盛り。知られざるセドナの秋の風物詩をお届けします。

    アリゾナの宝石・オーククリークキャニオンの紅葉。

    ーー日本では紅葉のシーズンですが、セドナにも秋の風物詩などはありますか? アリゾナには、四季がないようなイメージですが。

    NANA    そうですよね。アリゾナというとサボテンが生えている沙漠と岩山のイメージですからね(笑)。でも、セドナを含む北アリゾナは標高が高いので、南の方とは全く気候が違って、四季があるんです。セドナの標高は、約1370m、隣町のフラッグスタッフは標高が約2400mくらいあって、スキー場もあるんですよ。ですから、紅葉も見られるんです。

    ーーセドナにも紅葉する木があるんですね? 

    NANA     ほとんどが黄色の葉っぱなのですが、川沿いだけで見られます。四季があるとは言え、乾燥地帯ではあるので、ほとんどはジュニパーやサイプレスといった常緑樹で、落葉樹があるのは川沿いだけです。紅葉が見られるのは、ほぼ、セドナの北のオーククリーク・キャニオンという地帯の一部だけで、とても貴重です。だから、オーククリーク・キャニオンは、「アリゾナの宝石」とも言われているんです。

    川沿いに観られるセドナの黄葉。静かな流れが水鏡に‥‥。

    NANA  中でも州立公園のウエストフォークは人気があって、秋の週末になると駐車場がいっぱいで、入れない車がたくさん路上駐車しています。三脚を担いで写真を撮りにくる人たちもたくさんいます。

    ーー日本の紅葉とは、やっぱり違いますか?

    NANA     日本の紅葉の方がずっと鮮やかで美しいですよ。セドナの紅葉は、ピンクとかオレンジ色っぽい、やわらかな色ですね。やっぱり私も日本人なので、桜の頃や紅葉の頃は日本が恋しくなります。そんな時は、そのウエストフォークの紅葉を観に行くんです。そこは昔、ホテルがあったところで、作家のゼイン・グレイや、ハリウッドスターのジェイムス・スチュワート、俳優のクラーク・ゲーブルなど有名な人たちも訪れ、愛した場所だと言われています。

    州立公園に続く橋。この下にオーククリークの川が流れている。

    NANA    オーククリーク・キャニオンまでのトレイルは、渓谷の中に入っていくのですが、奥に行くにつれ、徐々に黄色に染まったコットンウッドの葉や淡い色のメイプルの一種の紅葉が現れます。入り口近くは黄色い葉が主なので、赤い紅葉が見えてくると、なんだかワクワクしてくるんです(笑)。それと、セドナならではなのは、やはりその背景に岩山があるってことでしょうか。

    渓谷がやわらかな秋の色に染まる。

    ーーやはり、紅葉の場所でも、岩山はあるんですね?

    NANA    そうですね。セドナの街の方は赤い岩山ですが、オーククリーク・キャニオンの上の方になると白い岩が目立ってきます。石灰岩の層ですね。オーククリーク・キャニオンに入ると標高が一気に上がるので、セドナの街から見ると岩山の上の方に見えていた地層が、横に見えてくるんです。ですから、赤い岩と白い岩が両方ある感じですね。地下水が豊富なので、こんな岩山のような場所でも森があるんでしょうね。岩と木々のコントラストが美しく、セドナらしい秋を描いています。

    岩から染み出した水分が酸化して縦縞模様を創っている。手前には湧き水が流れ出している。

    NANA  それと日本と違うのは、やはり乾燥していることですね。地下水があったとしても地表は乾燥しているので、落ち葉が朽ちていかないで、カラカラに乾燥してしまう。ですから、足元の落ち葉は色がフェイドアウトして、パステルカラーになるんです。それもまた、セドナらしい秋の風景かもしれませんね。

    ふと足元を見ると、敷き詰められた落ち葉がパステルカラーに地面を覆っている。

    ーー他にセドナらしい秋を感じることはありますか?

    NANA    セドナは、実はリンゴが穫れるアリゾナでも貴重な場所なんです。秋になると道端にリンゴを売る売店が出て、それが住民にとっての秋の楽しみですね。セドナのリンゴはすべてオーガニックです。そして、そのオーガニックのリンゴを昔ながらの手作業で絞ったリンゴジュースが、季節限定で売られるんです。

    リンゴと絞りたてのリンゴジュースを売る友達の売店。

    ーー天然のオーガニック・アップルジュースですね! セドナの街でも売っているんですか?

    NANA    セドナの街中でも一か所だけ売店がありますが、基本的にはリンゴが穫れるオーククリーク・キャニオンにある屋台のような売店で、超季節限定で売られるんです。普通の店では売っていません。アメリカでは、アップルサイダーと称して売られています。サイダーといっても炭酸じゃなくて、日本人が考えるジュースです。私の友達の旦那さんがリンゴ園で働いているので、毎年、秋になると、私の友達が売店でリンゴとリンゴジュースを売るんです。そこに買いに行くのが、私たちの秋の恒例行事です(笑)。

    今だに農園で手作業で作られるリンゴジュース 。

    ーー岩だらけのアリゾナでリンゴが穫れるんですね? リンゴは元々あったんですか?

    NANA     アリゾナといっても、岩ばかりではありませんよ。北アリゾナの川沿いは森があって湧水が豊富なので、開拓者時代に入植した人たちが、オーククリーク沿いに果樹園を切り開いたんです。だから、リンゴは自生のものではありません。アップタウンにある私の両親の家の住所は、日本語で言えば「果樹園通り」。元々は果樹園だったところで、近くには開拓者時代の家とリンゴ園がミュージアムになっています。オーククリーク・キャニオンで売られているリンゴは、開拓者時代からのリンゴ園で、今も無農薬のリンゴが収穫されているんです。

    開拓者時代から続くリンゴ園。

    ーー開拓者の時代から続いているなんて、まさにアメリカ版「奇跡のリンゴ」ですね! 開拓時代は、そこはどんなところだったんでしょう?

    NANA     私も日本からいらした方にいただいた『奇跡のリンゴ』という本を読んでとても感動したのですが、「あれ?考えてみたらセドナのリンゴは、みんな無農薬だ!」と想って(笑)。

    開拓時代がどんなところだったか、ということは、ミュージアムやセドナの歴史の本とかで知る限りでは、ワイルド・ウエストって感じだったんでしょうね。西部劇の映画の舞台になってもいるので、50年代に撮られたハリウッド映画の中で、昔のセドナの様子が見られます。私がたまたまテレビで観た映画では、セドナのロデオ大会とかありました(笑)。今はパワースポットとして有名になったセドナも、昔はカウボーイの町って感じだったんでしょうね。

    リンゴ園に残っている古い看板。

    ーー現在のセドナのイメージとは随分、違いますね。

    NANA     「セドナ」という街の名前自体が、開拓者の歴史に関係しているんです。シュネブリーさんという開拓者がセドナに家を建てて、少しずつ部屋を増やして、セドナで初めての宿屋を開いたんです。それから、雑貨屋さんと郵便局を兼ねることになって、その消印にSchnebly Station という名称で申請したところ、「長すぎて消印には収まらない」ということで却下されて、「どうしようか?」ということになった時、シュネブリーさんの弟が、「義姉さんの名前にしたら?」と提案したそうです。つまり、シュネブリーさんの奥さんの名前が「セドナ」だったので、消印に「セドナ」が使われて、そのまま街の名前になったというわけなんです。

    ーーへえ! 面白いですね。その郵便局は、まだ残っているんですか?

    NANA     郵便局は残っていませんが、リンゴを手にしているセドナさんの銅像がセドナの図書館の前にあります。やはり、その当時から、リンゴがセドナの特産物として扱われていたのでしょうね。その後には、セドナの西の方にワイナリーも開かれました。豊かな湧き水と石灰質の土がブドウの栽培に適していたようなんですね。

    オーククリーク沿いには至るところから古代に閉じ込められた水が湧き出している。

    ーー湧き水があるということは、雪もたくさん降るんですか?

    NANA     セドナの北にあるフラッグスタッフでは雪が降りますが、日本のような雪解け水が伏流水となって湧き出ているという感じではなく、約3億年前に閉じ込められたものすごい量の古代水が地下に貯まっていて、それが湧き出しているんです。

    地質学的に見ると、北アリゾナは水瓶の上にあるような感じだと言われています。私は、開拓者時代にトンプソンさんという家族が使っていた水汲み小屋に、湧き水を汲みに行っています。ですから、水はほとんど買ったことがありません。その小屋は、リンゴや収穫物の貯蔵庫としても使われていたそうです。

    開拓者時代に造られた水汲み小屋。

    ーー日本では四季の移ろいがはっきりしていて、いつでも身近にあるから、わざわざ自然の中に行くことが少ないような気がします。でも、都会にいて忙しく暮らしていても、自然の恵みを大切に味わいたいなあ、と思います。

    NANA     そうですね。セドナのスローライフを通して、自然の恵みに感謝すると共に、開拓者時代やもっと前の古の原住民の人たちの暮らしに想いを馳せると、私たちが贅沢に感じる「オーガニック」が、本来は普通であることに気づかされます。大地にとって健康な状態は、私たちにとっても健康な状態であること。マザーアースの中で生かされていることを常に心に留めていきたいですね!

    移ろいゆく季節を彩る紅葉と悠久を形どる切り株のような岩。

    ◯ NANA プロフィール 

    東京生まれ。高校卒業後、スウェーデンに渡り、美術学校へ。その後、ストックホルム大学で、スウェーデン語と民族学を学ぶ。帰国後、アメリカ人と結婚し、アメリカ、アリゾナ州セドナに移り住む。セドナの自然を案内しながら、セドナ、そして北アリゾナの自然を撮り続けている。その他、ウエディング写真、ホームページ用写真、記念写真の撮影も行いながら、大自然の美しさを通して、命の尊さを伝えたいと想っている。写心(写真)家・ガイドの他に、誘導瞑想、エネルギーワーク、地元のサイキックなどのセッションの通訳、そして自らもヒューマンデザイン・リーディングというセッションを行う。

    NanaさんのHPは、sedonana.com、インスタグラムは、sedonanaworld

    写真/NANA
    構成/ 尾崎 靖(エディトリアル・ディレクター)

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