ウポポイ(民族共生象徴空間)でアイヌ文化を体験する
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    2020.07.31

    ウポポイ(民族共生象徴空間)でアイヌ文化を体験する

    私が書きました!
    エディター
    松本麻美
    普段は社会課題や教育、地方ぐらし、アートなどをテーマとした媒体の製作に従事。ビーパルではライフスタイル系の記事を執筆しています。

    アイヌ民族の文化を伝える「ウポポイ」

    「アイヌ民族」。

    その独自の文化は、脈々と現代まで引き継がれています。

    そんなアイヌ民族の文化について、「ウポポイ(民族共生象徴空間)」(北海道白老町)のホームページには、以下のように書かれています。

    〈日本語と系統の異なる言語である「アイヌ語」をはじめ、自然界すべての物に魂が宿るとされている「宗教観」、祭りや家庭での行事などに踊られる「古式舞踊」、独特の「文様」による刺繍、木彫り等の工芸など、固有の文化を発展させてきました。古い記録から伝統的な踊りを復活させようと取り組む人たちや、新しいアイヌ音楽を創造する人たちも増えています。〉

    ■引用元(https://ainu-upopoy.jp/ainu-culture/)

    草木の繊維から作られた衣服。国立アイヌ民族博物館の展示品

    「ウポポイ(民族共生象徴空間)は、アイヌ文化を復興・発展させることを目的に、2020712日にオープンしました。

    施設全体は公園のようになっていて、展示室やシアターを備える「国立アイヌ民族博物館」、アイヌ民族の昔の家屋の「チセ」群を再現した「伝統的コタン」、その他、伝統的なおどりや楽器、木彫、刺繍などの実演を見ることのできる「体験交流ホール」「体験学習館」「工房」が建ち、少し離れたところに慰霊のための施設もあります。

    最初に、文化を体系的に知る博物館へ

    ウポポイの最寄りは白老(しらおい)駅。白老駅までは新千歳空港からは高速バスやJR北海道・室蘭本線が通っていて、駅から10分ほど歩いたところにあります。

    歓迎の広場

    入場ゲートを通過するとまず目に入るのが、国立アイヌ民族博物館。

    エントランスすぐにある博物館

    常設の「基本展示室」は、アイヌ民族の視点で語る6つのテーマ展示で構成されていて、アイヌ民族の文化にまつわる資料を展示しています。

    基本展示室の中央にある「ことば」エリア

    展示室の中央にあるエリアのテーマは、「ことば」。そこでは、アイヌ語で書かれた雑誌やアイヌに伝わる神謡をまとめた知里幸恵さんの自筆ノートなどが展示されている他、囲炉裏ばたに座っているような気分でアイヌ語での語りを聞くことができるコーナーがあり、アイヌ語に親しめます。

    アイヌ語では「こんにちは」を「イランカラプテ」(プは小さく表記される)と言いますが、字面から実際の発音は想像しづらいもの。長い文章となると、なおさらです。

    このコーナーでは音声で聞くことができ、アイヌ語を生きた言語として捉えられるように感じます。

    「ことば」エリアは、「世界」「くらし」「歴史」「しごと」「交流」5つのテーマに囲まれています。

    日常的に着る衣服や狩猟道具、正装の衣服、カムイと関係を持つための儀礼の道具など、生活をうかがい知ることのできる物。

    子守の道具なども展示される

    刀などの鉄器、漆塗りの器など、周辺地域と交易を持つことで得られた品々。

    縄文文化から現代までのアイヌ民族の歴史を表した年表と関連する資料など、アイヌ文化を包括的に知ることができます。

    体験を通じてアイヌ文化にふれることができるコーナー「探究展示 テンパテンパ」。「テンパテンパ」とは、「さわってね」という意味のアイヌ語(新型コロナウイルス感染対策のため、訪問時は展示のみ)

    その他、現代の作家による工芸品も展示されていて、アイヌ民族の文化は脈々と現代まで引き継がれてきていることに肌で触れることができました。

    伝統技術を受け継いだ作家の作品

    展示を見た後は、併設されたライブラリで理解を深める事ができます。

    ライブラリには、アイヌ民族に関する書籍や資料が集まっている。絵本もあるので、小さい子どもにもおすすめ(訪問時は新型コロナウイルス対策により閉鎖中)

    ミュージアムショップを覗けば、マスキングテープやマグカップなど伝統文様をモチーフにした雑貨のほか、博物館オリジナルグッズ、現代作家の工芸作品が並んでいます。

    博物館オリジナルグッズ

    マスキングテープ。とてもかわいい

    作家の作品もたくさんある

    伝統的な家やイベントで文化を体験

    博物館の外へ出ると、ポロト湖に沿って他の施設が建っています。

    体験交流ホール

    体験学習館

    入り口から向かって奥にあるのは「伝統的コタン」。「コタン」とは「集落」を意味していて、昔の家屋の「チセ」群を再現しています。

    コタン遠景。建設の様子も見ることができた。一番左と左から2番目のチセに入って見学できる。手前に写っているのは、丸木舟「チプ(プは小文字)」

    ウポポイで見られるチセの主な材料は木材とカヤ。屋根が段になっていて、窓は2つ。部屋の中央に囲炉裏が設置されています。

    2つある窓の役割、奥に置かれた調度品など、スタッフがチセの構造や内部での生活について解説してくれた

    この囲炉裏の火には「アペフチカムイ」が宿っていて、一番身近なカムイ。他のカムイとの間を取り持つ役目を持っていると言います。

    チセに2つ空いている窓のうち一つは、カムイを迎えるための窓。地域やコタンによるものの、大抵は東を向いているそうです。囲炉裏を囲みながら窓の外の明るさを見ると、冬の日照時間が短く凍える日は、火や太陽の明るさと暖かさがどんなにありがたかたく感じたろうと思いました。

    訪問時(7/14)のイベントスケジュール。時期によって変わる。スケジュールはHPでも公開されているので、気になる人はチェックしよう

    伝統的なおどりや楽器、木彫、刺繍などの実演は、それぞれスケジュールが組まれています。

    チセの前の広場では、輪唱する座り唄「ウポポ」や伝統的な楽器「ムックリ」の演奏、熊の霊送りの踊り「イヨマンテリムセ(ムは小文字)」を見ることができました。

    イヨマンテリムセ(ムは小文字)。ポロト湖を背景に正装した彼らの姿はとても映えていた

    ここでも、アイヌ民族の文化を体感することができました。博物館で知識を身に着けた後に見ると、理解がより深まります。

    ムックリは、動物の声や風の音に似せたり自分の気持ちを乗せたりしながら演奏するものだそうです。音楽や踊りを踊る心持ちは人類共通なのでしょうか。

    その他、刺繍の実演を見ることができたり、

    モニターも用意され、手前で実演してくれたスタッフの手元もよく見えるようになっていた

    湖畔でのんびりと過ごすこともできます。

    ポロト湖沿いにはベンチが設置されている

    数や種類の豊富な展示やイベントでアイヌ民族の文化を体験し、湖畔でのんびりし……と、様々な時間の過ごし方を楽しめます。これは年間パスが欲しくなります。

    まずは、ウポポイを訪れてみて

    「ウポポイ」はアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味し、「民族共生象徴」には、「先住民族の尊厳を尊重し差別のない多様な文化を持つ活力ある社会を築いていくための象徴」という意義が込められています。

    多様な価値観があるからこそ、社会は豊かな文化を育てることができます。                             

    カムイと関係を築きながら生活をしてきたアイヌ民族の文化。その視点から自分の自然との向き合い方を振り返ったら、新しい発見をした。なんてこともあるかもしれません。

    ただ、百聞は一見に如かず。まずは、体験しにウポポイへ行ってみませんか?

     

    ■アイヌ民族の文化は、公益財団法人アイヌ民族文化財団のHPでも知ることができます。
    https://www.ff-ainu.or.jp/index.html#top001

    施設情報

    ウポポイ(民族共生象徴空間)

    北海道白老郡白老町若草町2丁目3
    開園時間:9:00〜18:00(土日祝・夏季は〜20:00、冬季は〜17:00)
    閉園日:月曜日(祝日または休日の場合は翌日以降の平日)
    https://ainu-upopoy.jp/

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