松鳥むう「おとんと田んぼの奮闘記」第五回
いざ!真夏の草取りDAYS

7月上旬の田植えの頃から30度超えは当たり前の日々。川口由一先生の不耕起栽培法ではあるけれど、我が田んぼは応用編として全面に水を張った。水と日光たっぷりの環境。そりゃ、雑草たちは絶好調である。苗の横で雑草たちもぐんぐんぐんぐんと、こっちの心配などお構いなしに育ちまくっていく。
苗の根が活着するには田植えから1週間ほどかかる。が、私の田植えは、毎日午前中の4時間ほどしかせず、かつ、10日ほどかけて行ったので、田植え終了時にはすでに初日に田植えした苗は活着済みの模様。つまり、田植え完了の翌日から、速攻、手作業による雑草取りスタートなのである。だいたい、出穂するまでの1か月半ほど、毎日雑草と戯れDAYS。もちろん、田植え同様、毎日の午前中と時間があれば夕方に1時間ほどしかやらないと決めていた。普段、デスクワーク多めの生活に慣れている私の身体さん。「きっと、暑くてバテるんやろうな……(汗)」と思っていた。ところがこれが、思っていたよりもしんどくない。自分でもちょっと予想外だった。まず、草取り中、足元はずっと水に浸かっている。うちの田んぼの水は山から引いているので、猛暑といえどもそれなりに冷たく、足元はずっと程よい冷たさをキープできている。真夏に取材で離島や各地の郷土料理を訪ね歩いている時の方が断然暑い! 自動車免許を持っていない私は、アスファルトの道を、日傘をさしながら延々と歩いて取材しまくるので、1日の終わりには身体が火照りまくりでクーラーに氷にと冷え冷えにしないとそれこそ熱中症になってしまう。それに比べ、足元が冷たいだけでこんなにも体力が削られないなんて! 個人的に、意外な発見だった。
幼少時の自分に出会える田んぼ
更にもうひとつ、雑草取りをワクワクさせてくれるモノがあった。田んぼに出現する様々な雑草たちや、その草の合間に登場するカエルなどの様々な虫たちである。
「あれ? 田んぼに入って来るアマガエルって、緑やなくて茶色なんや!?」とか、
「あれ? オタマジャクシの軍団を見〜ひんかったのに、なんで、カエルが大量におるんや? よその田んぼから来た子らか?」とか、
「こんなトコ(=田んぼの脇の林)に、こんな赤い実が成る樹があったんや。なんて名前なんやろ?」とか、
「この草、他と比べて根っこがめっちゃ強靭すぎるんやけど! 力任せに引っこ抜いたら指がめっちゃ痛過ぎや!」とか、
「わ!カエルが一斉に鳴き出した! 何? 何? 何きっかけ?」とかとか……。
毎日が新しい発見と出会い続きなのである。子供の頃は、毎日、草むらに突っ込んで行ってはいろんな野草を採ったり食べたりし〜の、田んぼに入ってはオタマジャクシを獲りまくり〜のとやっていたのに。40年ぶりくらいに、当時の自然に物怖じしていなかった頃の気持ちが蘇ってきて、ひとり密かにニヤニヤしてしまうのだった。
ああ、あの頃は、どんなに遊んでも1日が終わるのがものすごく遅かったのにな〜などと遠い目をしながら。
ちなみに、不耕起栽培歴10年以上の私の田んぼお師匠は「春の雑草は、小さな花なんか咲いててかわいいと思えるけど、夏の雑草はそんな悠長なコトは思えない!」と切実に語っていたので、私も数年後にはこんな呑気な想いで草取りはやってないのかもしれない。

そうそう。田植え時に、苗と苗の間を40cm間隔で測りながら苗を植えたのは、この雑草取りで苗の間に入って屈んで作業をするためだ。本来は毎日1列置きに雑草を取ったほうが、雑草のところにいる虫たちが、雑草がなくなるコトで居場所を求めて苗の方に来ないので良いのだが、不耕起栽培田んぼ1年目の私は、そのコトがすっぽり頭から抜けてしまっていて、田植えした場所から毎日、律儀に列を空けるコトなく行っていた。そう気がついたのは、雑草取りを一通りやり終えた後だった。でも、その後、特段、苗が虫にやられるコトはなかったので良し良しだ。
増える雑草と減る御髪

さて、問題はおとんとおかんである。朝起きるなり「田んぼに草取りに行ってくる」と言うと、「こんな暑いのに行くの!?」と返ってくる。と、そこまでは別に良いのだが、毎日毎日行ってると、おとんが次第にキレ出すのである。
「お父さん、自分が去年、熱中症になったから、余計に心配してはるんやって」と、おかん。
心配してくれるのはありがたい。が、なんで、毎度キレる必要があるのか? 暑さよりもキレられる方がしんどいったらありゃしない。前回の「迷惑かけるなら帰って来るな!」発言も相まってか、私の頭皮にゃ、見事なでっかい円形脱毛が5つもできてしまったよ……。元々、睡眠不足続きなどでもすぐに円形脱毛ができやすい体質なのだけれど、こんな5つもできたのは人生初である。日々、髪の量が減っていく感じが半端ない。頭がバーコード化していくおっちゃんたちの気持ちに、この時ばかりは心底共感した次第。田んぼの雑草は取っても取ってもどんどん生えるのに、それに反比例していく私の御髪よ……。
円形脱毛になるくらいなら田んぼはしないほうが良いっていう身体のサインだろうか? でも、田んぼの雑草や虫たちを見てなんの悩みもなかった子供の頃の気持ちが返り咲いているのも確かなのだ。
「なんだかな〜」と相反するモヤモヤとした想いで暑い暑い初めての田んぼの夏が過ぎて行った。果たして、雑草に負けずに不耕起栽培の苗は稲へと育つのか? 無事に出穂したのかどうかは、また次回のお話で。




