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2026.07.05

呑兵衛が集まる田植えで外飲み!?ファンが支える京都の酒米プロジェクト

呑兵衛が集まる田植えで外飲み!?ファンが支える京都の酒米プロジェクト
GW以降7月ごろまで全国各地で田植えのイベントが行われていて、お子さんと共に泥と戯れる親御さんも多い。令和のコメ騒動なんてのもあったから、現場を見たいという人もいるでしょう。ここ京都市の南部に位置する伏見区では、単なる田植えではなく、日本酒造りに使われる酒米の田植えがきるイベントが人気。もちろん、田植えの後は外で酒飲み! 単なるアウトドア飲み会ではない、田植えイベントの魅力とは?
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私が昨年の春、最初に飲んだ城陽酒造による「NANZAN」。陶芸家さんの名前が由来だそう。
そのあと立て続けに飲んだ、増田德兵衛商店の「月の桂 塩鯛」と齊藤酒造「英勲 真向(まっこう)」。

飲み屋で出会ったお酒からの田植え参加

大昔、日韓共催のサッカーW杯が開催されたころまでBE-PAL本誌の編集部員だったインディです。誌面にも出ていたので、オールド読者なら覚えておられる方もいらっしゃるかも? このWEB BE-PALを立ち上げた初代担当は私です(笑) スマホのない時代、ガラケーでシェルパ斉藤さんのトラクター旅をライブ配信したことも。いまはUターン移住して、出身地の京都で活動しております。休肝日は作るものの、お酒がない人生は考えられないというスタンスは以前から変わりません。

昨年、京都の酒処・伏見にある酒屋さんの角打ち的な店で飲んでいたら、店主から見慣れぬラベルの日本酒を勧められました。南山(なんざん)と書いてある。

「これは伏見区の向島(むかいじま)の農家さんがつくる京都の酒米“祝”(いわい)を使った特別なお酒なんです」

聞けば、3つの酒蔵と地域の酒販店、そして農家の方がコラボした取り組みで、数量も多くはなく、飲める店、買える店も限られているんだとか。

口にしてびっくり、なんと芳醇で旨い酒なんでしょう。すっかり気に入ってしまい、さらに話を聞いてみると、このお酒のプロジェクトには、日本酒愛好家が田植えや稲刈りに参加できるんだとか。それは楽しそう! 

というわけで、昨年からこのプロジェクトの日本酒を飲み続け、ようやく今年の春になって「京都酒林会」の田植えイベントの告知を発見。参加費は20歳以上が4,000円(田植え体験+日本酒飲み放題+アテ&軽食付、小学生〜20歳未満は500円、未就学児は無料)とのこと。すぐに応募して、なんとか参加することができました。

イベント当日は曇りのち快晴。伏見区の向島は田畑の多いエリア。

梅雨の晴れ間の週末、オヤジふたりで田植えに向かいます。目的地は近鉄・向島駅から徒歩数分のところにある農地。この向島は、日本最大の淡水湖だった巨椋池(おぐらいけ)の跡地に位置していて、駅の周辺には住宅や団地があり、広大な田んぼや畑が広がっています。

会場となる田んぼの前にあるJAの施設には、すでに帽子を被り、アウトドアウエアに身を包んだ方や親子連れなど大勢の人が集まり、今か今かと田植えのスタートを待ち構えています。

時間になり、京都酒林会の方が進行して、このプロジェクトに参加している酒蔵のひとつ、「月の桂」の会長・増田德兵衛さん、田んぼを管理している山田ファームの山田耕一さんが挨拶と説明をされ、田植えイベントがスタート。みなさん一斉に田んぼへ向かいます。長靴持参でも裸足でもOKと事前に知らされていたので、田植え初心者の私はおニューの長靴を履いて田んぼへ。

山田ファームの山田耕一さん(左端)が説明。「月の桂」増田德兵衛商店の会長さん(右端)も。
京都産酒造好適米の「祝」の苗が、どっさりと用意されました。

田植え初体験! 田んぼの土からいい匂いが!

最初にファームの方から簡単に田植えの手順を教わります。事前にお手本が少し済ませてあり、それに倣って田植えを順々にしていくわけです。まずは手のひらにどっさりと苗を載せてもらい、そこから3~4本ずつ苗を手に取って土に植えていけばいいそうで。

苗を受け取り、田んぼに足を踏み入れると、ぐにゅっ⁉ 足を取られて二歩目に進めない! なんと、水の入った田んぼの土(泥)はこんなに粘性があるんですね。うーんと力一杯足を上げるとスポンッ! 長靴から足が抜けちゃった(笑) これはイケません。ええい、ままよ!と裸足になることに。まわりを見るとほとんどの人は裸足じゃないですか。おニューの長靴は無駄になりました(苦笑)

でも、裸足で水が張られた田んぼの中に足を入れると、なんだか温かくて気持ちいい。あー、思い出した、これは“泥スパ”の感覚だ。裸足だとちゃんと二歩目も三歩目も踏み出せます。よしよし、苗を3本ほど指で取り外し、かがんでちょいと刺して植え込みます。できました、初田植え。意外と簡単じゃないですか~ まわりを見ると、小さなお子ちゃまもやっています。これは負けられない。急ぎながらも丁寧に慎重に、苗を植えていきました。

コツは手元ばかりを見ないで、視線を上げて前を見ながら植えることだそう。その言いつけを守って、なんとか無事に1列植えることができました。よし、もう一丁! と残っている苗を受け取り、まだ埋まっていない列へも植えていきます。

土に苗を植え込んでいると、手元からなんとも香しい匂いが。なんだろう。聞けば、山田ファームさんは肥料として鰹節や昆布の類いも混ぜているのだとか。さすがです。

小一時間で田植えの作業は終了。足に着いた泥を水で流して、元の会場に戻ります。するとお酒に合わせてアテが提供されるブースにはすでに行列が。毎年参加されている方は田植えを早く終えて、飲み食いモードなんですね。出遅れたー。

こんなふうにみなさん次々と苗を植えていきます。手が泥まみれで自分が植えているところは撮れず。。。
若いファミリーから年配の方々まで、楽しく田植えが進みます。

アフター田植えは風を感じる外飲み

この日は暑くもなく寒くもなく、過ごしやすい気温で昼から飲むには最高の日和。この京都酒林会のプロジェクトに参加している3つの酒蔵、増田德兵衛商店の「月の桂 塩鯛」、齊藤酒造「英勲 真向」、城陽酒造「NANZAN」のお酒が振舞われました。今日はそれぞれの蔵の夏酒などもあるそうで、私は持参した3つのお猪口で次々と試飲。いやあ、日曜のお昼にこんな外飲みすると、美味しい酒がますます旨く感じるなあ。みなさん、レジャーシートを広げて、思い思いに楽しんでおられます。隣に座っていた方々に聞くと、我々と同じく初参加だそう。田植えが体験できて、風を感じながらお酒が飲めて、おつまみも充実していて、もう最高!と口々に仰ってました。

ちょうどお昼から始まったこの田植えイベント、15時にお開き。この日の参加者は総勢150人超え、空いた一升瓶は36本とのこと。いやあ、飲みました。お酒の原料になる貴重な酒米が育てられる現場に立ち会えて、貴重な体験となりました。

ほとんどの大人の参加者は、酒器を持参。私はお猪口を3つ。
次々と一升瓶が空になっていきます。隣のブースでは飲食店の方がおつまみを調理。
3種飲み比べ。旨いだけでなく、勉強になります。次回は下に敷くプレートも用意しよう。
安心してください、“やわらぎ水”もたくさんございます。「月の桂」の仕込水!

テロワールを追求する三位一体の取り組み

イベントが終了して、後日、主催の京都酒林会の方に話を伺いました。伏見区内の酒販店、津乃嘉商店の井上雅晶さんと、伏水酒蔵堂の光山俊一さんです。

昭和初期につくられた京都産酒造好適米の「祝」は、しばらく姿を消していましたが、平成4年ごろから伏見で祝を使った日本酒が製品化され、徐々に認知され始めます。

「平成に入って酒税法の改正がありましたが、漫画『夏子の酒』などの影響もあり、こだわりの酒造りに注目が集まり始めていました。酒米を育てることから京都・伏見での独自性のある日本酒造りができればと農家・蔵元・酒販店の三位一体で取り組み、伏見区内で祝を栽培することになりました。当初、“和醸の会”という名前で日本酒好きのお客様に、田植えから稲刈りまで関わっていただきました」(井上さん)

ワインの世界では、畑で葡萄を育ててワインを造るので、その土地の個性“テロワール”が重視されますが、日本酒では従来、酒蔵からは遠く離れた産地から酒米を購入して造るのが一般的だったのです。今では山田ファーム、中嶋農園、高宮農園の3軒の地元農家さんが、この京都酒林会のプロジェクトに参加、毎年、祝を育てています。

「最初の商品は増田德兵衛商店の『月の桂 塩鯛』です。その後、2018年に城陽酒造の『NANZAN』が、そして3年前に齊藤酒造の『英勲 真向』が加わり、現在は3つの酒蔵で計3銘柄のラインナップです。これらの商品は生産本数に限りもあり、一般流通はしていなくて、伏見区をはじめとした京都市内5軒の酒販店と一部の飲食店のみで扱っています」(光山さん)

酒蔵と農家さんら“つくり手”の顔が見えるプロジェクトでもあり、愛飲家のサポーターの方たちが広く支える地域の取り組みでもありますね。特に今回の田植えイベントは今までにないくらいの大盛況だったそうで、我々のような初参加者もいれば、リピーターも多く、中には関東の宇都宮市からはるばるやってきた方もいたそう。

「山田ファームさんは“桃山だいこん”を唯一つくっている農家さんです。この歴史ある地元の伝統野菜を、イベントのおつまみにできないかなと考えています」(井上さん)

次回、京都酒林会の稲刈りは、10月6日に決定! 関心のある方は、秋口にぜひチェックしてみてください。収穫した酒米「祝」を使った日本酒ができあがるのは、来年の3月ごろ。我々が植えた苗が日本酒になるわけで、これは絶対に飲まなきゃ。お披露目イベントも開催してほしいですね。

大成功だった田植えイベントの締めには、豪華賞品が当たるジャンケン大会で大盛り上がり。

●京都酒林会

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