そこで今回は、多民族国家カナダから、とっておきのバーベキュー料理をご紹介。「ブライ(braai)」と呼ばれる南アフリカのバーベキューの定番、串焼き「ソサティ」と、うずまきソーセージ「ブルボス」です。
「なにこれ、おいしい!」「新しい味!」と言わせちゃおう!
国際色豊かなバーベキュー会は、新アイデアの宝庫!
キャンプで、あるいは川辺や庭先で。身近なアウトドア活動としてバーベキューを楽しむ方も多いのではないでしょうか。
こんにちは。カナダ・バンクーバー在住の佐知ゆりこです。
アウトドア好きが多いバンクーバー。もちろんバーベキューは大人気です。カナダにはさまざまな国にルーツを持つ人が住んでいるため、食事系の集まりでは国際色豊かなメニューに出会えるのがおもしろいところ。今回は、南アフリカ出身の友人が主催するバーベキュー会にお呼ばれしてきましたよ。
まずは、参加者の持ち寄りの前菜を少しご紹介。
ひときわ目立っていたのは、ケーキのような見た目のサラダ「シューバ」。ロシアをはじめ旧ソ連圏でお祝いの食卓に親しまれている料理で、じゃがいも、魚、にんじん、ビーツ、卵、マヨネーズなどを層に重ねたサラダです。

ベジタリアンの人も参加する集まりでは、前菜は野菜料理が中心に。キヌアサラダもよく見かけます。


さて、庭先のバーベキューグリルをのぞいてみましょう。
「ソサティ」と「ブルボス」。それってなんですか?
グリルには見慣れないものが並んでいます。串に刺さった肉のあいだに、オレンジ色の何か。そして、とぐろを巻いたソーセージ。
「これ、なんですか?」と聞くと、友人はこう教えてくれました。
「ソサティとブルボスだよ」

串焼きのほうが「ソサティ(sosatie)」。そして、ぐるぐるソーセージが「ブルボス(boerewors)」。両方とも、南アフリカのバーベキューの定番料理。
ちなみに南アフリカでは、バーベキューのことを「ブライ(braai)」と呼びます。そして9月24日は、南アフリカの国民の祝日「ヘリテージ・デー(文化遺産の日)」。この日は通称「ナショナル・ブライ・デー」とも呼ばれ、国じゅうで火をおこして肉を焼く日となっています。単なる調理法ではなく、文化なのですね。
「ちょうど焼けたから、食べてみて」と、友人。
では、実食レポート、いきますよ。
肉とドライアプリコット、そしてカレー風味のスパイス
角切り肉のあいだに、ドライアプリコット(干しあんず)と玉ねぎが交互に刺さっています。肉と甘い果物? と半信半疑でひと口食べてみると、これが……
「おいしい!」
カレーのようなスパイスの香りが立ちのぼり、そのあとから、じゅわりと甘みがくる。焼かれたドライアプリコットは肉汁を吸って、とろりとやわらかくなっています。スパイスのアクセントと、太陽を思わせる自然な甘さ。この組み合わせが、想像以上に合うのです。
この日のお肉は牛肉。ラムでもおいしいとのこと。カレー風味のマリネ液に、一晩漬け込んでから焼くのが基本だといいます。
カレーといえばインドや東南アジア、と思っていたけれど、南アフリカでもよく使われていたとは知らなかった!
ケープタウン発、串焼きの「食の交流史」
「ソサティ」という名前を聞いて思いついたのが、シンガポールやマレーシアなど東南アジアで親しまれているストリートフードの「サテ(satay)」。牛肉や鶏肉の串焼きに甘いピーナッツソースをつけて食べる、あの料理です。

「ソサティって、名前がサテに似ているね。南アフリカなのにアジアっぽいスパイスが使われているのも意外」
と感想を言うと、南アフリカ出身の友人はこう答えます。
「南アフリカは昔から交易の重要な拠点だったからね。インドや東南アジアのスパイスが伝統料理によく使われているよ」
なるほど、ソサティの背景には南アフリカの交易の歴史があるわけですね。
17世紀、ヨーロッパとアジアを結ぶ航路の中継地となったケープ(現在のケープタウン)には、交易や植民地支配を通じて、インドや東南アジアのスパイスを使う食文化も伝わりました。アフリカ、ヨーロッパ、アジアの食文化が交わるなかで、「カレー風味+ドライフルーツ+肉」という南アフリカらしい「ソサティ」が育っていったと考えられています。

ソサティの作り方は家庭ごとにいろいろあるけれど、この日のレシピは「カレー粉+アプリコットジャム+酢」を混ぜたマリネ液に角切り肉を一晩漬け込み、ドライアプリコットや玉ねぎと交互に串に刺してバーベキューグリルで焼く、というもの。調理のコツとしては、「糖分で表面が焦げやすいので、弱火でじっくり焼くといい」とのことです。
見た目のインパクト大! うずまきソーセージ「ブルボス」
もうひとつの主役は、「ブルボス(boerewors)」。アフリカーンス語で「農民(boere)のソーセージ(wors)」という意味です。

グリルの上でとぐろを巻く姿は、とにかくインパクト大! 牛肉や豚肉などの粗挽き肉に、コリアンダーシード、クローブ、ナツメグ、黒こしょうなどのスパイスを効かせたジューシーな一品です。
焼きたてを食べてみると……
「ガッツリ! かなり肉々しい!」
そう筆者が言うと、友人は「南アフリカでは、ブルボスと呼べるソーセージは肉90%以上、脂肪は肉の30%以下などの規格があるからね」と教えてくれました。なるほど、納得の肉々しさです。
ブルボスは、カットせずにうずまきのまま焼くこと、フォークで穴をあけたりしないことが調理のポイントだとか。日本でも、輸入食肉を扱う専門店の通販などで手に入ります。

なにこれ、おしゃれ! 太陽が似合うドリンク「ピムス・カップ」
最後に、おまけとしてイギリスの人気のドリンクをご紹介。
この日の飲み物は、「ピムス・カップ」と呼ばれるイギリス発の赤いカクテル。ロンドン生まれのリキュール「ピムス(Pimm’s)」を使います。

「ピムス」は、ジンをベースにしたハーブとフルーツのリキュール。世界最高峰のテニストーナメントであるウィンブルドンの会場でもおなじみの、アウトドアシーンにぴったりの飲み物です。イギリスのホームパーティの定番ドリンクなのだそう。
作り方はとても簡単。大きなピッチャーにスライスしたオレンジ、いちご、きゅうりなどを入れて、ピムスを注ぎ、そこにピムスの3倍程度の量の炭酸レモネードを入れて混ぜるだけ。口当たりが軽くて、とっても爽やかなのです。
しかしこのピムス、最近日本での取り扱いが終了してしまったようで、入手困難だとか。海外では比較的手に入りやすいので、ぜひ機会があれば探してみてください。

世界でいろいろ、バーベキュー
ひとことで「バーベキュー」といっても、メニューや楽しみ方は国によってさまざま。特に、歴史的にいろいろな文化の影響を受けてきた国の料理は意外性があっておもしろい! ターメリックやコリアンダーなどのスパイスや、甘いジャム、ドライフルーツなどをお肉にあわせるという新展開も、バーベキューなら取り入れやすいです。
「世界の文化を感じる一品」をひとつレパートリーに加えて、次のバーベキューでは蘊蓄でも語りつつ、「なにこれ、おいしい! 新しい!」と、話題をさらってみてくださいね。
※「boerewors」の発音は「ブールヴォース」に近いですが、日本では「ブルボス」という表記が使われているため、本記事では「ブルボス」に統一しています。




