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BOOK 01
山とともに友とともに過ごした、青春と呼ぶにふさわしい日々
『パンドラ ―約束の頂―』
大石明弘著
山と溪谷社
¥2,200

10代の終わりから40代にかけての25年ほどの間は、人生のなかでもいちばん勢いがある時期なのではないかと思う。親元を離れて自立し、社会に出て経済的にも精神的にも体力の面でもみなぎっている。一生の付き合いとなるような人たちとの出会いもまたこの時期に多いかもしれない。
本書は、そんな時間の多くを山に懸けてきた著者の青春群像であり半生記だ。16歳のときに星野道夫の写真集に出会い触発されて北アルプスをひとりで縦走し、大学では山岳部入部と同時に部のシェアハウスに入居。強烈な先輩たちと少年漫画のような日々を送る。当時の先輩部員のひとりがアルピニストの野口健氏だった。野口氏ら先輩に刺激を受けながら、徐々に自らの追い求める山へと進んでいく。
著者が綴る25年間のラストに挑む山が、ネパールの北東にあるパンドラだ。一生の付き合いとなる出会いを果たしながらも、山に消えていってしまった仲間たち。彼女彼らの存在が“約束の頂”へと向かう原動力となるのだが、頂までの道のりは順風満帆とはいかない。行く意味すらも考え直してしまう事態が起きる。それでも進み続け、ついにそのときを迎えるのだった。
人はいくつもの出会いによって形作られているのだ。
BOOK 02
今現在も文明と距離を置いて暮らす民族
『ラストアイランド 北センチネル島 なぜ外界との接触を拒み続けるのか』
アダム・グッドハート著
笠井亮平訳
白水社
¥2,640

おそらく有史より外部との接触がない北センチネル島。インド領ながらインド洋東部のタイやミャンマーに近い海域のアンダマン諸島にある。島は久米島とほぼ同じくらいの大きさ。現在も島への上陸はもとより接近すら法的に禁じられている。島外の人間が入れば免疫を持たない島の住人センチネル族に感染症が起こりうるための保護目的だが、何より彼らが接触を拒んでいるのだ。なぜなのか?
旅行作家である著者が、アンダマン諸島の他の島に暮らす部族の歴史や関係者の手記、現地での専門家へのインタビューをもとに隔絶された島の真相に迫る。未知への探究はときに残酷さを伴う。本書は多角的な視点を与えてくれる。
BOOK 03
文庫で復刻! 探検家の原点はアマゾン探検に
『ぐうたら原始行』
関野吉晴著
ヒロミブックス
¥1,100

人類拡散の足跡を逆に辿る約5万キロ旅のグレートジャーニーを’93年から’02年にかけて実践した著者。その原点となる体験が南米アマゾンでの探検、それを綴ったのが本書だ。’74年に出版され長らく絶版だったが復刻した。20代の著者がジャングルで生活をともにした人びととの交流の記録。50年を経ても色褪せない探検譚だと感じ入る反面、著者の嘆きから発行当時と今は変わらない社会構造なのだとも。「やる自由とやらない自由がある」という視点はひとつの学びになった。
BOOK 04
「頂に立ちたい」邁進する主人公が瑞々しく眩しい
『富嶽を駆けよ』
有馬桓次郎著
祥伝社
¥1,980

かつて富士山に女性は登ることはできなかった。女人禁足が解かれるのは明治に入ってから。しかし、江戸時代に男装し頂を目指した女性がいた! 主人公・辰は、「富士の頂に立つ」ことを夢見ている。大願を果たすまでは嫁入りもできないと婚約者を待たせているような状態だ。新しい世の中を目指す協力者を得て、登頂が現実味を帯びてくる。
素直な辰の姿に改めて感じる。本当にやりたいことには理由などないのだ。
実在の高山たつはこの物語を天でどう感じるだろう。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2026年7月号より)




