雛はまるで綿菓子のよう!「期間限定」のフィールドでたくましく子育てをするコチドリを撮る | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

自然観察・昆虫

2026.06.06

雛はまるで綿菓子のよう!「期間限定」のフィールドでたくましく子育てをするコチドリを撮る 

雛はまるで綿菓子のよう!「期間限定」のフィールドでたくましく子育てをするコチドリを撮る 
この時期の野鳥たちは林道も河原も繁殖期の真っ最中。毎年出かける多摩川などの河原でも、今頃は可愛らしいコチドリが子育てに励んでいるはずだ。コチドリは全長約16センチ。日本には夏に飛来する渡り鳥で、河原や埋立地などの開けた場所で繁殖する。西日本では一部が留鳥として越冬する。その子育ての様子をそっと覗きたくなり、とある推測をもとに「意外な場所」を探してみると、密かに子育てをしているコチドリに会うことができた。今回は身近な野鳥、コチドリにまつわる探索と撮影こぼれ話を紹介したい。

金色のアイリングが可愛らしい「地面の鳥」

多摩川の河原に咲いたハルシャギクを背景に佇むコチドリのオス。

コチドリの「千鳥」とは大きな群れになることに由来する、とする説が有力だ。初夏の昼下がり、河原に響く「ピオ」というどこか哀愁を帯びた鳴き声が印象的な鳥。小さな石で形成された河原や農耕地などの開けた地面にいることが多く観察しやすい野鳥なのだが、その生息環境の多くはコチドリの身体の色とほとんど同色の砂礫地などで、遠くからではなかなかその存在に気づきにくい。よって、観察や撮影はしばしば難儀する。

ところで「千鳥足」(ちどりあし)という言葉がある。酒に酔った人がおぼつかない足取りであちらにふらふら、こちらにふらふらと歩く様子を表す。これはコチドリが餌を探す際の動きーー少し歩いては立ち止まって辺りを見まわし、再び少し歩いては立ち止まりーーが酔っぱらいのジグザグ歩行に似ていることに因むとされている。特に雛を撮影する際は、この立ち止まる瞬間をいかに押さえるかがポイントになってくる。ただでさえ小さな身体であることに加え、周囲に溶け込む保護色を纏った雛に対して、カメラのピント合わせを補助する被写体認識機能が用を成さなくなってしまうからである。

孵化して数日経ったと思われるコチドリの雛。ふわふわの身体の印象に反して、脚のつくりはたくましさを感じさせる。
オスは瞳を縁取る金色のアイリングが目立つ。河原の石の上では探索に難儀するが、このように水辺では見つけやすい。

さて、このコチドリ、くっきりした金色のアイリングを持つオスの親鳥の表情が可愛らしく魅力的だが、雛の姿もまた輪をかけてキュートなのだ。孵化してすぐ餌を探して歩き始める雛の身体の大きさは人の親指ほど。まるで綿菓子かフェルト細工の小さなぬいぐるみが駆けているような光景は一度見たら忘れられない。毎年この時期は河原にその姿を求めてしまう理由が分かっていただけると思う。昨年は思いがけず多摩川を探索中に至近距離で観察する機会を得たのだった。

昨年、多摩川の河原の「駐車場」で会えた親子。ふつう、雛は3〜4羽だが、この家族は1羽だった。
こちらはコチドリのメス。ユウゲショウのピンク色の花と絡めてみた。多摩川の河原は帰化植物の種類も多く、彩りに満ちている。
飛翔しながら「ピイ、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ、ピイ……」と鳴くコチドリのオスの声が、河原に響く。

カモフラージュ効果を発揮する場所で繁殖

小石混じりの河原に作られた巣。卵の外観は周囲と見分けが付かないほどだ。コチドリがこうした環境を営巣地に選ぶ理由がよくわかる(発見後は観察・訪問を控えた)。

コチドリが子育てに選ぶ環境、それは小石混じりの砂礫地だ。コチドリは簡単に整地した地面に直に卵を産む。卵はそれは見事な保護色をしている。孵化したての雛も同様である。雛はすぐに自力で昆虫などの餌を探して動き回るが、親鳥は放任しているわけではない。上空に猛禽類やカラスなどが現れると「止まれ」の命令(声)を発するのだ。これを聞いた雛はピタッと伏せて動きを止める。この時、先に述べたように保護色を纏った雛の身体は小石などに溶け込んで「見えない」状態になってしまう。ちなみにこのような場合、カメラのオートフォーカス(AF)も効かなくなるため、オーソドックスな1点AFでピント合わせするほかない。コチドリにとって砂礫地が最もカモフラージュ効果を発揮する場所であることがお分かりいただけると思う。

私がこれまでコチドリの繁殖を観察してきて気づいたことが一つ。それは、子育ては河原以外でも行われているということだ。去年、多摩川で出会ったコチドリが子育てをしていたのは、河川敷の中でも河原の水辺というより土手寄りの少年野球のグランド横の駐車場だった。自然の小石ではなく車が停めやすいように敷かれた砂利が、やはりコチドリ親子をカモフラージュしていたのだ。この日以後、私は同じような環境でコチドリを探すようになった。

昨年、河原の「駐車場」そばで会えた雛。何もない更地に比べ、植物が根付いてくると視覚的に雛の存在が目立つようになる。

繁殖時期の近所の「新しい更地」は要チェック

昨年、コチドリが子育てをしていた場所。敷地は約150メートル四方ほどの広さ。関係者以外は立ち入り禁止だった。繁殖のタイミングと「更地」の期間が合致すれば、コチドリにとってこれほど営巣に適した場所はないと言えるだろう(現在は建設工事が進行中)。

去年、自宅の近所にあったスーパーが閉店し、その後更地になった場所があった。広大な駐車場だった場所を含めてアスファルトも剥がされ、外周はフェンスで囲われた。そして昨年の今頃にここを通りかかった時、あの「ピオ」というコチドリの特徴ある鳴き声を耳にしたのだ。双眼鏡とカメラを持って再訪すると、やはり、すでに成長したコチドリの雛とその親鳥の姿があった。周囲に河川はないが、条件を満たせばコチドリがこのような更地を繁殖地に選ぶことが分かったのは大きな収穫だった。ちなみに、今年この場所では残念ながら建物の建設工事が始まってしまい、コチドリたちに再会することは叶わない。

ここでは成長した3羽の雛と親鳥の姿が確認できた。
カメラを構える人間のそばにやって来てくれた幼鳥。一方、警戒心の強い親鳥は、偵察時以外は基本的に人間のそばには近づいて来ない。

しかし今シーズン、去年のこの経験を生かして探索したことで、別の場所でコチドリたちに会うことができた。そこは以前、大きな工場が立っていた場所だったが、ひと月ほど前に車で通りかかった時、広大な更地になっていたのだ。建物が撤去された後きれいに小石などで整地され、敷地の外周は金網が設置されて関係者以外は立ち入ることができない状態だ。整地されて間もないのでカモフラージュ効果を妨げてしまう雑草も少なめ。これこそがコチドリが子育てに相応しい場所として目をつける「新しい更地」なのだった。5月のある日、双眼鏡とカメラを持って出かけてみた。雑草もほとんど根付いていない更地を金網越しに双眼鏡で探索していくと……地面に伏せている鳥のシルエットが! まさしく抱卵中のコチドリのメスだった。離れたところにはオスの姿も確認できた。

親鳥に守られて育つやんちゃな雛を撮るときのポイント

まだ肌寒い朝、親鳥のお腹の下で暖をとる3羽の雛の足が見える。左は弾き出された(?)1羽の雛。

そして、広い敷地にはもうひと組のコチドリがいた。なんとメスのお腹の下には雛が隠れている様子。当日は5月というのに気温が15度にも満たない肌寒い日だったせいか、まだ十分な羽毛を持たない雛は頻繁に親鳥のお腹で暖をとっていた。ただ、親鳥の身体もそう大きくはない。このコチドリのファミリーは雛が4羽。窮屈なせいかまたは好奇心からか、やんちゃな雛たちは我慢し切れず(?)すぐに親の懐を飛び出して餌を探していた。

突然、親鳥が立ち上がったので、お腹の下にいた4羽の雛が揃っているところが観られた。

ところで、今回のように金網で守られた生息環境というのは、仕方のないことだが撮影する側にとってはもどかしい場面が多い。今回はコチドリを警戒させないよう車に乗ったまま金網にレンズを押し当てるように撮影した。当たり前だが、警戒心の強い野鳥ほどカメラからの距離が遠くなり、生き物としての表情や美しさといった要素を表現しづらくなる。おまけに保護色に守られたコチドリのような野鳥の場合、すでに述べたようにカメラはピントを「外し」気味でピンボケ写真を量産してしまうのだ。

できるだけカメラを低く構えて撮影すれば、被写体(雛と親鳥)と背景の距離差ができて主題が明瞭になってくる。

ついでながらカメラの被写体認識機能を少しでも働かせるためには、できるだけ被写体であるコチドリと背景との距離差を作ってあげることが肝心だが、そのためにはカメラを可能な限り低く構える必要がある。具体的には車から降り、できるだけ低い目線でカメラを構えることがベターだ。背景が抜けて被写体も際立ちピントの合焦精度も向上する。だが、そうするとコチドリは警戒度を上げてしまい、金網の奥へと遠ざかってしまうのだ。やんちゃで好奇心たっぷりの雛は意外に金網の方へ近づいて来てくれるのだが、定期的に親鳥の方へ戻っていってしまう。あくまで雛たちは親鳥と付かず離れず行動しているので、撮影する際はやはり親鳥をいかに警戒させないかがカギとなるのだ。

雛の存在が際立つように撮影した昨年の例。ここまでカメラを下げるのがベストだが、撮影時の姿勢や砂利にのせた腕の痛みはおのずとキツくなってくる。
逆光を利用してコチドリを強調した例。光をうまく使えば、それほどカメラを低く構えなくてもメリハリをつけることができる。

今シーズンもなんとかコチドリの子育ての様子が観られた。金網で侵入者から守られた広い場所だし、河原のように洪水で雛たちが生命の危機に遭遇することもない。コチドリにとってはカラスや猛禽類の襲撃の可能性を除けば安心して過ごせる場所ではないかと感じた。実際、よく晴れた週末の日中に再訪すると、強くなってきた陽射しが地面で生活するコチドリたちの存在をさらに目立たなくさせていた。双眼鏡で探すのも一苦労だが、これぞ彼らの生きる知恵なのだ。あなたの身近な場所で今回紹介したような「更地」を見つけたら双眼鏡と耳でチェックしてみてほしい。意外な場所でたくましく命を育むコチドリたちが見つかるかもしれない。

著者画像

中村雅和さん

野鳥好き編集者

幼少期から生き物や鉄道に親しむ。プロラボ、住宅地図会社の営業マン、編集プロダクション、バス運転士、自然保護団体職員などを経てフリーの編集者に。現在はライターの仕事をしながら、バードウォッチングと野鳥撮影に勤しんでいる。

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