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天体観測ファンのみなさん、あなたの「憧れの星座」は何でしょう?生まれた日で決まる星座の方ではなく、夜空に浮かぶ方の、です。「さそり座。一度は完璧な姿で見てみたい」「はくちょう座。構図の美しさが好き」など、さまざまな「推し星座」があることでしょう。
静岡の田舎に生まれ育った筆者は、自宅が茶畑に囲まれており、光害とは無縁の人生を送ってきました。自宅の庭で空を見上げれば、二等星ぐらいまでのたいていの星は肉眼で観測できたのです。ですがいくら光害がないといっても、北緯34度の静岡県では、どんなに頑張っても見られない星があります。
そう、南十字星。そんなわけで南十字星(みなみじゅうじ座)は、長いこと筆者の憧れの星座でした。
ところが台湾では、場所と時期の選択さえ間違えなければ、南十字星が見えてしまうのです。
天体ファン必見 南十字星鑑賞スポットはここ!
南十字星は、「北緯26度30分以南であれば4つの星すべてを観測できる」といわれています。東京が北緯35度なので、26度は結構南ですね。日本で南十字星を観測できるのは沖縄県の石垣島や宮古島、波照間島など一部の地域に限られますが、台湾本島の北端である富貴角灯台は、北緯26度22分。
つまり、台湾本島では南十字星が観測できてしまうのです。
気候条件などが合致すれば、台北市で最も高い山「陽明山」からも南十字星を観測することは可能です。ですが観測の可能性を高めたいのであれば、ひたすら南を目指すのが吉。
台湾本島のほぼ真ん中には、北回帰線が通っています。台湾の気候はここを境に、北は亜熱帯、南は熱帯に分かれます。南十字星の観測に適しているのは、北回帰線よりも南にある台南(たいなん)市や屏東(へいとう)県など。
南十字星は4月~6月の18時半~20時頃に南の空の低い位置で観測できるので、海に面していて、視界を遮るものが南側にない場所を目指すとよいでしょう。特におすすめなのは屏東県の墾丁(ケンディン)。

台湾に天体観測スポットは多数ありますが、「海に面していて、視界を遮るものが南側にない」という点において、墾丁の右に出るものはありません。南側には「遮るもの」どころか、陸地そのものがないわけですから…。
台湾本島から尻尾のように突き出た半島上にあり、東は太平洋、西は台湾海峡、南はバシー海峡と、3つの海に囲まれた場所。バシー海峡の向こう側はフィリピンです。
墾丁を含むエリアは「墾丁国家公園」という自然保護区になっています。南北にも東西にも約24kmと非常に範囲が広いので、墾丁の中でもおすすめの観測スポットをいくつかご紹介しましょう。
まずは「鵝鑾鼻(がらんび)灯台」周辺。

鵝鑾鼻灯台は1881年に屏東県鵝鑾鼻岬の先端に建造された、台湾最南端の灯台。地政学上重要な場所であるため、台湾唯一の武装灯台でもあります。
もともとは屏東県の文化財でしたが、2024年に国定文化財に格上げされました。灯台周辺には「台湾最南端の碑」や、「台湾最南端のセブンイレブン」などがあります。
鵝鑾鼻灯台は台湾で最も光が強い灯台でもあり、「東亜の光」という別称があるほど。光が強いと天体観測には向かないのでは?と思われるかもしれませんが、逆に、灯台以外に光を放つものがないのです。灯台の光が届かない方面はまさに漆黒の闇。夕暮れどきに灯台を訪れ、夜になったら灯台周辺で天体観測を楽しむのがおすすめです。
もうひとつは「社頂(シャーディン)自然公園」。

社頂自然公園は標高約200mの丘陵で周囲には高い建物も光源もないため、天体観測にうってつけ。周囲には草原が広がり、台湾の固有種であるタイワンジカが思い思いに草を食んでいます。
ここのタイワンジカは、個体数が減少していた野生のタイワンジカを政府と保護チームが時間と労力をかけて増やしてきたもので、いまではその総数は3000匹にもなるそう。
仰ぎ見れば、そこには満天の星空が広がっています。南十字星が見えない季節であっても、この星空を一目見るために、ここに来る価値がある…そんな場所です。

世界でここだけ!小学校に国際基準の天文台
そして最後にご紹介するのは、墾丁から少し北上した車城(チャーチョン)にある「車城国民小学校」。ここにある天文台、その名も「南十字天文台」は、いま世界の天体ファンたちから熱い視線を注がれている場所。
2024年、イギリス・アメリカ・日本・チリ・南アフリカなどの天文研究チームの協力を得て、国際天文学連の小惑星センター(IAU Minor Planet Center)から天文台コードを付与されました。


筆者の母校(静岡県の公立高校)にも天文台がありました。光学機器メーカーの五藤光学研究所製だったため「ゴトーくん」という愛称がつけられていたその天文台は、学校のシンボルとして校舎の屋上に鎮座していました。
このように、高校に天文台があるという話はたまに聞きますが、小学校に設置されているのはなかなか珍しいのではないでしょうか。しかも小惑星センターによる天文台コードつき。天文台コードつきの天文台がある小学校は、世界でここ、車城国民小学校だけです。
この天文台は2023年に設置されました。地域住民の憩いの場であり、屏東県の観光スポットでもあります。毎週金曜日から日曜日の19時から21時には一般開放されており、小学校の校長先生だった施世治(シー・シージー)氏による天文解説を聞くことができます。



なお、墾丁や車城が位置する屏東県は、マグロや桜エビなどの海産物でも有名。南十字星の観測時期とほぼ重複する5月上旬から7月上旬までは、屏東県の初夏の風物詩である「屏東黒鮪魚文化観光季(屏東クロマグロ文化観光祭)」が行われています。
期間中は、音楽ステージ、マーケット、グルメイベントなど、さまざまな催しが行われる予定。南十字星観測時にはこれらのイベントにも足を延ばして、さまざまな面から屏東県を満喫してみては。
<車城・墾丁へのアクセス>
台湾高鐵(新幹線)の左營駅2番出口から、観光バス「墾丁快線」に乗車。
車城:「高鐵左營站」から約100分、「車城農會」下車。
墾丁:「高鐵左營站」から約140分、終点の「小灣」下車。
https://www.ptbus.com.tw/en/news_info/0/1/118?status=5





