ここはグアムの言葉・チャモロ語で「風の吹く山」の名の通り年間を通して秒速8〜15メートルの強い風が吹き抜ける。青い海と深い緑に囲まれたこの場所はグアムの自然の力強さを象徴する存在である。
静寂と熱気が交差するなか約2万人が山頂を目指す
ゲルマン神話に登場する春の女神Estore(エオストレ)が語源とされるイースター(復活祭)の早朝、まだ夜が明けきらない暗いうちからおよそ2万人の島民たちが続々とフムヨン・マングロの登山口に集う。
静寂のなか、灯りを手に頂上を目指して力強く歩きはじめる姿はまるで神話か伝説のワンシーンのように荘厳さを帯びている。
春の訪れと生命の復活、繁栄を祝う行事とされるイースターの早朝トレッキングは、1970年代、グアムの中西部Mongmong(モンモン)地区の有志によって始められたもので、今ではグアムの伝統行事として受け継がれている。
強風が吹く稜線を進む冒険トレイル

登山口脇にはローマ数字の「I=1」が書かれた十字架が立ち、そこから順に道沿いに全部で14基の目印が設置されている。その番号を追って進めば迷うことはない。だがなかには風雨にさらされて朽ち果て、番号が確認できないものや土に埋もれてしまったものもあり単調ではない。
足元の土壌は、玄武岩でできた赤土と石灰岩が入り混じった粘土質で、雨が降っていなくても滑りやすいので、歩きやすい靴と軍手の携行がおすすめだ。

さらに高さ2メートルほどの剣のように鋭い茎と葉を持つソードグラスやススキが強風にあおられて行く手をさえぎり、前を行く同行者の姿が見えなくなることが多々ある。
まるでRPG(ロールプレイングゲーム)の冒険さながら緩やかな稜線のフィールドを進んでいくと、一気に視界が開け、グアムおよび米国の史跡記念物に指定されている名勝「Cetti(セッティ)湾」と入り組んだ海岸線と深く青い海が織りなす壮大な絶景が眼下にひろがる。
さらに歩を進めると、古代の噴火によって形成された枕状溶岩の双子の丘「Atillong Acho/アティロング・アチョ)」や高さ300m級の丘陵地帯が連なる景観は雄大で、グアムの大自然のスケールを実感させられる。道中ところどころ、道が平らになった場所が点在している。稀少な野生の蘭や高山植物を眺めながら休憩をとるのに最適だ。

山頂からの眺めは屈指の美しさ
「XI=11」の目印の左奥にある小さな祠を過ぎると、広い草原が拡がり、その先の緩やかな斜面を登っていくと「XIV=14」の目印が立つ分岐点に着く。

ここを右(南方向)に進めば、ゴールは目前である。フムヨン・マングロの山頂からの眺望はグアムでも屈指の美しさを誇る。
観光の中心・タモン地区から車で約40分、登山口から片道およそ35分で、本格的な登山装備がなくても登れるため初心者や観光客にも人気だ。大自然のスケールと春の祝祭を繋ぐフムヨン・マングロへのトレッキングはアウトドア愛好家はもちろん、気軽に冒険感を楽しみたい初心者にとっても魅力的な「風が吹く山」である。






