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キャンピングカーの達人、伴 隆之のビルダー訪問記
以前、岡モータースやアネックスといったキャンピングカーメーカーの工場や歴史を紹介しましたが、今回は長野県須坂市に拠点を置くフロット・モビールの製造現場を見せてもらいながらお話を聞くことができたので紹介していこうと思います。

家族の手作りキャンピングカーからビルダーへ

まずはフロット・モビールの成り立ちを説明していきましょう。
キャンプ大好き一家の長男である代表の高森裕士さんは、幼少期のある日、キャンプ中に驚くほどの大雨に遭遇。その旅の直後、高森さんの父がキャンプ旅を快適にするため中古のワンボックスカーを購入し、家族みんなでキャンピングカーを自作することに。クルマが完成すると家族での旅が激変し、すぐに出かけられる機動性の高さや、キャンピングカーそのものの楽しさを知るようになりました。
そんな幼少期のできごとをきっかけに、物づくりが好きになった高森さん。高校は工業高校を選択し、基本の五教科だけでなくキャンピングカーの図面を引いたり、強度計算などといった専門的分野の勉学に励んだそう。卒業後はビルダー業として腕を磨き、35歳の時に独立して2010年にフロット・モビールを起業。現在は弟の剛さんや多くのスタッフとともに、製造現場を盛り立てています。
タウンエースバンといえばフロット・モビール

社名のフロット・モビールはドイツ語で「軽快な」「しゃれた」「粋な」を意味します。創設第1弾となるキャンピングカーの開発にあたってはブランドの顔になるモデルということもあり、あえて定番のハイエースを選択せず、タウンエースバンを選択することに。
その理由は、いままでいろいろなキャンピングカーを作ってきたなかで、「ハイエースだと大き過ぎる」「販売価格500万・600万円(2010年当時)では高い」などの声が多くあったから。
立ち上げ当初はどのクルマをベース車にするかは決めておらず、NV200バネットなども検討していたとか。決め手になったのは他社でのタウンエースベースのキャンピングカーが少なかったことに加え、ちょうど選定に悩んでいたところに4WDモデルが追加されることがトヨタからアナウンスされたことがきっかけ。さらに、軽自動車ではなく普通車で、ソロもしくは2人で手軽に旅にも使える1台、というコンセプトに合致したことで決定したそうです。
そうして誕生したのがロングセラーモデルとなっている「シュピーレン」。2014年の登場から12年が経過しましたが、熟成を重ね年々使いやすさや快適性も高められています。
そして製造の効率化や資材管理といった事業の拡大もあり、フロット・モビールは2024年に14年続けた長野県上高井郡高山村にあった工場から、上信越道・小布施スマートICにほど近い、現在の新工場へと移転することになりました。
シュピーレンができるまで

新工場にある敷地内にはメーカーから届いたばかりのベース車であるタウンエースバンがずらり。車両は当然新車なのですが、最初に洗車されて工場内へと入ります。工場内は行程ごとに4ブースに分かれており、それぞれのスペシャリストが作業を行っています。

製造工程は以下のようになっています。
1・ベース車に装着されているインテリアトリムやセカンドシートなどをすべて取り外す



2・車内の断熱加工、ルーフをカットしルーフベント(換気扇)の取り付け

3・内張りやフロアの架装

4・家具の製造はNCルーターを使用。正確な寸法に切り出された木材を職人が組み上げ


5・ベッド製作のためのフレームや芯材をカットし、表地やクッション材をカットして縫製


6・家具を車内に取り付け、電装システムの取り付け及び配線


7・最後にキャンピングカー専用のセカンドシートを取り付けて、注文書を確認して納車

といった流れになっています。
家具製造やベッドなどの縫製は工場内の別スペースで行われており、ブースごとの分業制を確立しているため、作業は無駄なくスムーズなのがとても印象的でした。現在、シュピーレンはひと月に平均で約4台を製造しているとのこと。仕様にもよりますが、納期はおおよそ2年となっています。
最新モデルはクーラーの装着も可能
こうして作られるシュピーレンですが、現在はセカンドシートに1人掛けのバタフライシートや2人掛けのバタフライシート、分割式1+1人掛けバタフライシート、3人掛けバタフライシートなど、ユーザーの使い方に応じ、4つのモデルをラインナップ。
また、最新モデルはデンソーが企画した車載専用クーラー「キャンクール」を搭載することも可能。クーラーの電源はDC24V仕様なので発熱のリスクが低いことに加え、消費電力も定格300Wとポータブル電源でも稼働できるのが魅力となっています。


国産ワンボックスベースのキャンピングカーではハイエースやキャラバンなどがメジャーですが、タウンエースバンにこだわり続けその使いやすさを追求するフロット・モビール。
高森さんをはじめ、スタッフがていねいに作っている姿を見ていて、「毎日の通勤・買い物にも普通に使えるキャンピングカー」というこだわりが強く感じられました。また、シュピーレンに実際に3日間ほど試乗してみて、ベッド展開や収納のしやすさ、スイッチの位置などがしっかりと考えられているため使い勝手がとてもよく、快適性がとても高いことがよくわかりました。
日ごろ見ることができない工場見学。また機会があれば、ほかのビルダーの工場も紹介できればと思います。




