
マアジやシマアジ、ムロアジなど、それぞれに異なる特徴や味わいがあり、釣りや料理での楽しみ方も多彩です。
鮮度や脂のノリを見極めるコツもあわせて解説します。
(出典)photoAC
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「アジ」とはどんな魚か
スズキ目アジ科の魚
アジはスズキ目アジ科に属する海水魚で、日本近海を中心に広く分布しています。沿岸から沖合まで幅広く生息し、群れで行動する習性があるため、漁獲量も多く、私たちの食卓に身近な存在です。回遊性があり、季節や水温の変化に応じて移動することから、釣りの対象としても非常に人気があります。
とくに江戸時代以降は、干物や酢じめなどの加工技術が発達し、保存性の高さから弁当や朝食の定番食材として重宝されてきました。現在でもその親しみやすさと調理のしやすさから、日常の料理に欠かせない存在となっており、刺身やフライといった生食・揚げ物だけでなく、塩焼きや南蛮漬け、干物など幅広い調理法に対応できる魚として活用されています。
名前の由来
「アジ」という名前の語源には諸説ありますが、有力なのは「味が良い魚(=味が良い→アジ)」という説です。また、古くは「あぢ」とも表記され、発音が時代とともに変化したとする見方もあります。いずれの説も、アジが古くから日本人にとって身近で、美味とされてきた魚であることを物語っています。
アジとサバとの違い
アジとサバは見た目が似ており、混同されやすい魚ですが、いくつかの明確な違いがあります。アジは横から見ると扁平な体型で、背中が青緑色、体側には種類によりますが黄色いラインがあることが多いです。また、尾の付け根には鋭いゼイゴが並んでいるのも特徴です。
ゼイゴとは、アジ科の魚に特有のもので、尾に近い側線上に、硬く発達した鱗が帯状に並んだもののことです。調理の際は取り除く必要があるため、アジをさばく際の目印にもなります。
一方で、サバは体型がより丸く、背中には独特の波状模様があります。味わいにも違いがあり、アジは比較的淡白で上品な味、サバは脂がのって濃厚な味わいとなっています。料理の用途や味の好みによって使い分けると良いでしょう。
アジの種類
マアジ
最も一般的で広く流通しているアジ。日本全国の沿岸部に生息し、漁獲量も多い魚です。体側に黄色い縦帯があり、側線には鋭いゼイゴが並んでいます。養殖も行われており、天然ものと区別されることもあります。鮮度が高いものは刺身やたたきに、加熱調理ではアジフライや南蛮漬け、干物など幅広く使われます。
マルアジ
マアジに似ていますが、体がやや丸みを帯びており、側線が滑らかでゼイゴも目立ちません。主に沖合に回遊する回遊魚で、味はやや淡白。マアジより脂が少なく、干物や煮付けに向いています。スーパーなどで見かけることもありますが、干物などが多く、刺身用途では流通が限られます。
メアジ
目が大きいことからその名がついた種類で、体長は小型です。回遊性が高く、春から秋にかけてサビキ釣りで大量に釣れることがあります。身は締まっていて刺身や唐揚げに向いています。サイズが小さいため、刺身の調理にはやや手間がかかりますが、クセがなく、旨味のある味わいを楽しめます。
シマアジ
アジ科の中でも特に高級魚とされる種類。背中に薄く縞模様があることが名前の由来です。体はやや丸く、全長は60cmを超えることもあります。養殖も盛んで、脂がしっかりのった白身は刺身や寿司ネタとして人気。マアジとは異なり、食味はより濃厚で、天然物は高級魚として扱われています。
ムロアジ
主に伊豆諸島や南西諸島などの温暖な海域で漁獲されるアジです。体は細長く、背中はやや青黒い色合いをしています。生食にはあまり向かず、干物やくさやなどの加工品にされることが多い魚です。ややクセのある味わいですが、噛むほどに旨味が出てくる独特の風味があります。
金アジ
「金アジ」はマアジのブランド名で、瀬戸内海や長崎県五島列島などの特定漁場で育ったマアジを指します。プランクトンが豊富な海域で育つため、脂のノリが良く、身質も良好。天然の良質なマアジを選別して「金アジ」として販売するため、一般のマアジよりも高値で取引されます。
セグロ
セグロは、西日本を中心に使われるマアジの地方名で、背中が黒っぽく見えることからこの名がついています。分類としてはマアジと同一種ですが、特に沖合を群れで回遊する回遊型のマアジを指すことが多く、沿岸に定着するアジ(瀬付きマアジ)と区別されます。
脂はやや控えめで、さっぱりとした味わい。塩焼きやフライに向いています。
美味しいアジの見分け方
体高による違い
アジは同じ種類でも、体型によって味わいが異なります。体高があり扁平な「平アジ」と呼ばれ、脂がのっており刺身や寿司にすると非常に美味。煮物や焼き物などの、ほかのアジ料理全般に向いています。
逆に、体が丸みを帯びた「丸アジ」は水気が多くあっさりとしているため、刺身より、どちらかといえばフライなどで食べるのに向いています。
色味による違い
鮮度の良いアジは、背中が青緑色で、体側が銀白色に輝いています。目が澄んでいて、うろこがしっかりと付いているものが新鮮な証。色がくすんでいたり、目が濁っているものは鮮度が落ちている可能性があるため、購入時には注意が必要です。
アジの種類を知って楽しいフィッシングライフ!

アジは初心者からベテランまで幅広い層に親しまれている釣魚で、狙い方も多彩です。手軽に楽しめるサビキ釣りをはじめ、ルアーを使ったアジングや、エサを使うウキ釣りなど、釣り方に応じて異なる楽しみ方ができます。季節や地域によって釣れる種類やサイズが変わるため、釣果に応じた調理や食べ比べも楽しみの一つです。
釣って楽しい、食べて美味しいアジ。種類や特徴を知ることで、より深くアジの魅力を味わえるでしょう。ぜひ身近な海で、アジ釣りにチャレンジしてみてください。