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蜘蛛の目の数は?

多くの蜘蛛は8個の目を持ちますが、その大きさや配置は種類によって異なります。また、目の数が8個に満たない種類も存在します。蜘蛛の目の仕組みも併せて、詳しく見ていきましょう。
基本は8個
一般的に、蜘蛛には大きさの異なる目が8個あります。前列に4個、後列に4個の配置が多いですが、3列や4列の場合もあります。
蜘蛛の目は、一つのレンズからできている単眼です。単眼は、光の強弱を認識できる程度の機能しか持ちません。
単眼の対にあるのが、多くの昆虫が持つ複眼です。複眼は、小さな個眼がたくさん集まってできた目で、例えばトンボは1万~3万個の個眼を持つといわれています。
複眼を持つ動物は視野が広く、種によりますが物体の色や形、動きがよく見えると考えられています。蜘蛛は目が8個あるとはいえ、それぞれが単眼なので視力は低いのです。
種類によって目の数は異なる
目の数が8個以下の蜘蛛もいます。洞窟のような真っ暗な場所には、完全に目を失った種類も存在し、感覚毛や糸の振動で獲物を探知して生活しています。
2023年には、沖縄や奄美などで新種の蜘蛛が5種類発見され、うち洞窟の深いところで見つかった3種類は目や体の色を失っていました。
蜘蛛の目の数や配置の違いは、その種が暮らす環境や狩りの方法に応じた進化の結果と考えられます。
蜘蛛の視覚活動

視力の低い蜘蛛は、どのように周囲の状況を把握しているのでしょうか。ここでは、蜘蛛が獲物を知覚する方法を紹介します。
目ではなく糸で獲物を知覚する
多くの蜘蛛は、目の代わりに糸を使って周囲の状況を知覚します。視力が低いと視覚情報で獲物を感知できないため、積極的に動き回って餌を探すのは得策ではありません。
そこで蜘蛛は、糸を出して網状の巣を張り、獲物がかかるのを待ちます。かかった獲物の居場所は、糸を振動させたときの反応で突き止めているのです。
蜘蛛の糸は弦楽器のように振動回数が多く、100nm(ナノメートル)の細かな振動も感知できるといわれています。100nmとは、ミリ単位でいうと0.0001mmです。
ハエトリグモはピンボケ度で距離を知覚する
蜘蛛の中でも、ハエトリグモは他の種類に比べて高い視力を持つとされています。その理由は巣を作らず、自ら獲物に跳びかかって捕食するためで、英語では『ジャンピングスパイダー』と呼ばれています。
ただ、視力が高いといっても、対象物がはっきりと見えるほどではありません。ハエトリグモは、ピンボケの度合いを使って対象までの距離を把握しているといわれています。
遠くのものはピンボケ度が小さく、近くになるほど大きくなる性質を利用し、対象物との距離を測っているそうです。なお、ハエトリグモは人家に現れることがありますが、小さな害虫を食べてくれるため、益虫として知られています。
知っておくと面白い蜘蛛の生態

蜘蛛には、その体の大きさや姿かたちからは想像できない、面白い生態があります。ユニークな生態を三つ紹介します。
バルーニングで空を飛べる
子どもの蜘蛛や、体の小さな蜘蛛は糸を使って空を飛ぶことができ、これを『バルーニング』と呼びます。糸が凧のような役割を果たし、まさにバルーン(気球)のように風に乗って、空中を移動できるのです。
さらに、蜘蛛は風がないときでも空を飛べます。蜘蛛の糸には静電気力が働いており、空中電場を利用して、風に頼らずとも空中の移動が可能なのです。
なお、山形県では蜘蛛のバルーニングを『雪迎え』と呼び、雪が間もなく降る予兆として冬支度の準備を始める合図にもしているのだとか。
糸の強度は鋼鉄の約5倍
蜘蛛の糸は、強度が高いことで知られており、鋼鉄の約5倍あるといわれています。計算上、直径0.5mmの太さがあれば、60kgの人間をつり下げられるほどの強度を誇ります。
直径1cmの蜘蛛の糸で巣を作ると、理論上はジャンボジェット機を捕まえることも可能です。さらに、ナイロンのように伸縮性もあり、重さも同じ強度の鋼鉄の1/6とハイスペックな素材なのです。
また、蜘蛛の巣は一部が損傷すると、他の部分の強度が増すように作られており、獲物を効率よく捕まえる一因にもなっています。
蜘蛛の糸を模倣した素材を開発したり、蜘蛛の巣の仕組みをインターネットセキュリティーへ応用したりと、人間も蜘蛛の糸から多くのインスピレーションを得ています。
コーヒーを飲むと酔っぱらう
低い視力を補うべく、しなやかで強靭な糸を自由自在に操る蜘蛛ですが、コーヒーを摂取すると酔っぱらってでたらめな巣を作ります。これは、とあるアメリカ人が偶然発見し、研究機関の実験によって確かめられました。
実験では、お茶やジュースを与えてみたものの、コーヒーを摂取させたときが最も酔っぱらった様子が観察されたようです。このことから、蜘蛛がコーヒーで酔っぱらうのは、カフェインが中枢神経を麻痺させるためとされています。
まとめ

蜘蛛の目は基本8個ですが、8個以下の種や、目を持たない種も存在します。多くの蜘蛛は視力が低いため、糸のわずかな振動を感じ取って、獲物の位置を特定しています。比較的視力の高いハエトリグモも、ピンボケの度合いで獲物との距離感を測る程度です。
また、蜘蛛は糸を使って空を飛ぶこともあり、その糸は鋼鉄の約5倍の強度を誇ります。高性能な糸に注目が集まる一方で、コーヒーで酔ってしまう意外な一面も知られています。蜘蛛は、賢さとかわいらしさを併せ持った、面白い生き物といえるでしょう。