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    2025.05.10

    ヨットで世界一周は楽あり苦もあり! 双胴船(カタマラン)修理の様子をレポート

    ヨットで世界一周は楽あり苦もあり! 双胴船(カタマラン)修理の様子をレポート
    みなさんこんにちは。セーリングヨットSANTANAで世界一周、前田家の麻裕です。

    今回は旅する相棒・ヨットの修理について。のんびり気ままなイメージのヨット生活ですが、実際には『エキゾチックな場所でボートのメンテナンスをすることがヨット旅』、と言うジョークが囁かれるほど、整備、点検、修理の3点セットに割かれる時間がかなり多かったりします。

    船齢20年以上の双胴船は修理環境を見つけるのも大変

    ヨットに限らず車もバイクも自転車も、定期的な整備・点検が欠かせませんよね。

    これは私たちのヨットが船齢20年以上という古さのためでもあるのですが、屋外で常に強い日差しや風雨に晒され、さらに揺れる海の上という過酷な環境のため、陸上よりも様々なものの消耗劣化が早いと感じます。

    これは人も然り。

    日々受ける紫外線によるダメージが激烈過ぎて、人齢39の自分自身のメンテナンスもまったく追いついていない状態です。このままではシミか顔か分からない状態になりそうな気がして恐ろしい!

    さて、ヨットの本格的なメンテナンスを行うためには陸に上げる必要があり、この作業はホールアウト(上架)と呼ばれています。これにはクレーンを使用したり、スロープを利用して車や重機で引っ張り上げたりする方法があります。

    沖縄与那原マリーナの大型クレーン(写真は別のヨットです)。

    旅のルートを決める際に、あらかじめヨットの修理ができそうなマリーナや船工場に目星をつけておくのですが、世界的に見るとそんな恵まれた場所はほんの一部で、多くの場合は他の方法を考える必要があります。

    これは私たちのヨット選びにも問題があったのですが、カタマラン(双胴船)と呼ばれる幅が広いタイプの船を上架できる施設は本当に限られてしまう上に、費用もかなり高額になりがちです。

    どうしたものかと思っていたところ、他のセーラーから耳寄りの情報が。

    『カタマランならビーチで作業すればいいのよ! 無料だし、簡単よ!』ということらしい(注:カタマランは筏のような形状で、水面下に突き出している部分が少ないため)。

    『ビーチに船? 本当に大丈夫?』その時は半信半疑だったのですが、よくよく調べてみると何だかいけそうな気がしてきました。

    清潔な水は貴重品。小舟に大量の水を乗せて運んでくれるダニー親分。

    こんな時、初心者セーラーのメンタルは最強で、経験値がない上に最適解を知らないので、『とりあえず試してみる』ということへのハードルが限りなく低いのです。

    私たちの理解では、どうやら作業時間を最大限に確保するために干満差の大きい場所、大潮の日を選ぶ、という2点に気をつければ良いらしい。そして、ここエルサルバドルのバヒア・デル・ソルにはこの一つ目の条件に最適なビーチがあるということで、早速試してみることになりました。

    さらに心強いことに、作業を手伝ってくれる心強い地元のメンバーがいるらしいのです。その名もダニー親分と仲間たち。

    ダニー親分は、この他にもヨット周りの御用聞をしてくれる頼もしい存在で、私達も造水機故障のため水が作れなかったため、陸から水を運んでもらったりとお世話になりました。

    いよいよ旅する我が家をビーチへ

    そして迎えた作業当日。普段は夜行性の私たちですが、日の出と共に支度を始め、前日に決めておいた所定の位置に向かいました。

    長い1日が待っている。

    しかし、そこから約1時間、待てど暮らせどお仕事をお願いしたダニー親分と仲間たちの姿が見えません。親分に連絡してみると「おお、いい感じになってきた頃だな。今みんなを集めて向かうぞ〜。」とのこと。

    「いやいや、もうだいぶ遅刻してますよ〜!」

    とツッコミたくなる気持ちを抑えて、さらに待つこと1時間。ようやく登場したダニー親分とその仲間たち。長いのは待ち時間でした。

    堂々としていたけど、おそらく寝坊したと思われる。ただでさえ限られた作業時間がスタートからマイナス2時間!

    これはかなりの痛手ですが、来てくれただけでありがたいという心持ちになれるのは、この時点で旅を始めて一年近く経ち、想定外の出来事にすっかり慣れてしまったからかもしれません。ちなみにエルサルバドルは、「中米の日本」と呼ばれるほど勤勉な国民性で知られているので、今回は稀なケースだと信じています。

    最強の助っ人達が登場してくれたところで、さっそく作業スタート。

    今回はプロペラ部分の整備が必要なため、船体の後方が持ち上がるように、水の上に浮いているうちに船底に土嚢を置いていきます。

    土嚢運びで大活躍してくれた、屈強そうな村の若者たち。

    水が引いてくると積まれた土嚢の上に船体が乗っかるという具合です。

    さすがにそのままではグラグラと不安定なため、四方からロープを張り、いよいよ完成です。

    これは文章にすると何やら分かりづらいと思うのですが、百聞は一見に如かず、ビーチに上がった前田家の動く家がこちらです。

    船内はゆるい滑り台状態。

    作業はなかなか進まず、やがて干潮も終わり……

    想像以上の傾斜に見た目からは不安しか感じませんが、とにかくやるしかない。ということで、早速潮の満ち引きとのタイムトライアル開始です!

    ビーチの上でプロペラの整備。

    普段はナマコのような省エネ生活(ナマコはヒトの100分の1しかエネルギーを使わないらしい)を送っている全さん(夫のことです)も、この時ばかりはナマコスイッチをオフにして猛スピードで作業を進めていました。よくみるとこの日の全さんは俊敏さで知られる豹ではありませんか!(Tシャツに注目)

    しかし、途中ちょっとしたトラブルもあり作業が終了しないまま、干潮の時間はすっかり過ぎていき、足元には迫り来る水が押し寄せてきました。

    まさかのシュノーケルマスク登場。

    しばらくするとさらに水位が上がり、ついに作業中の全さんの体は完全に水の下へ……。

    嗚呼、沈。

    作業中の全さんの体が流されないように、必須に沈める私。間違いなく人生で初めての経験。しばらくの間、エルサルバドルの片隅でシュール過ぎる光景が繰り広げられました。

    そして、船体がそろそろ浮き上がりそうなほど水位が上がったところで、ようやく予定の作業を終えることができました。もはや終盤はビーチに船を上げた意味が完全になくなっている気もしますが、ひとまず今回のミッション完了です!

    停泊地に戻る頃には日暮れ間近に。ありがとう、ダニー親分とその仲間たち。

    こうしてまた一つ、何の役に立つかは分からない経験値を上げた前田家。

    定期的な整備・点検の他にも、壊れては直し、直しては壊れ、と常に修理リストを抱えている状態ですが、これも旅の一部として楽しめるようになったら一人前のセーラーに近づけるような気がしています。

    それでは、また次回。    

    前田家さん

    旅する一家

    4歳の娘と6歳の息子を連れて、セーリングヨットSANTANAで放浪中の4人家族。2022年3月、カリフォルニアを出航。寄り道をしながらゆっくりと世界一周を目指します。海の上でサステナブルな暮らしを模索中。

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