連載【漕いで、釣って、食べて】カヤックフィッシング奮闘記Vol.41
昨年秋に、『何も知らない状態』からカヤックフィッシングをはじめ、これまで様々な釣りに挑戦してきたが、季節の移り変わりと共に、海のようすもかなり違ってくることを実感した。具体的には、春頃から、それまであまり見かけなかった小魚(主にイワシ)の群れが、水温上昇にともなって数多く見られるようになってくる。
そうなると、その小魚を捕食する魚も姿を見せるようになる。それがサバだったり、ワカシだったりする。そうなると「嫌というほど釣れる」と沼野さんから聞いていた。その言葉を信じて待つこと約半年。遂にそのシーズンがやって来た。
そんなわけで、梅雨入り前の6月中旬、早朝に逗子から出船。沼野さんと並んで沖を目指す。1キロほど沖合に到着すると、早速魚探にイワシの黒い影がちらほらと映りはじめ、鳥山もあちこちに見えた。すかさずルアーをキャストして巻いてくると、後ろから何かの影が追いかけて来た。おぉ、ワカシだ。イワシの群れの周囲にワカシがいるらしい。
次の一投にも、数匹ルアーを追尾してくるのが見える。文章では伝わりにくいが、肉眼で見ると、これはかなり燃える。近づいてくるルアーを、何匹ものワカシがすごいスピードですぐ目の前まで追いかけてくるのだが、目前でくるっと方向転換してしまう(見切られる)。「あとちょっとなのに!」と歯がゆくなる。
そんなことを何度か繰り返していると、ようやくヒット! サイズがサイズなのでたいして引かないが、それでも充分楽しい。あがってきたのは、20センチちょいのワカシ。脂も乗っていないので、即リリース。次に投げても、またヒット! 次から次へと釣れる。これは楽しい。
ただ、あるポイントから外れると、ピタッと釣れなくなる。どうも、ワカシのいるポイントをピンポイントで狙わなければならないらしい。が、場所とタイミングさえ合えば、恐らく誰でも釣れる。
ルアーをキャストする動作さえ出来れば、それこそ釣り初心者の女性にも釣れると思う。自分が投げたルアーをワカシが果敢に追いかけてくるようすや、実際にヒットしてからの目の前までのやりとりは、カヤックフィッシングでしか味わえない醍醐味かもしれない。
そんな調子で「お腹いっぱい」になるほど釣れたので充分楽しかったが、欲を言えばちょっと物足りない。ワカシがイナダになって、それがワラサになって、できればブリくらいになったのを、いつか釣ってみたいなぁ。(※80センチ以上を一般的にブリと呼ぶ)
連載【漕いで、釣って、食べて】カヤックフィッシング奮闘記
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穴澤 賢(あなざわまさる)
1971年大阪生まれ。2005年7月から愛犬との暮らしを綴ったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイ、コラムなどを執筆するようになる。著書に「またね、富士丸。(集英社文庫)」、「明日もいっしょにおきようね(草思社)」、「また、犬と暮らして(世界文化社)」、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック「Another Side Of Music」(ワーナーミュージック・ジャパン)などがある。株式会社デロリアンズ代表。Blog:Another Days
取材協力:MARINE BOX100
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