2018.01.17

【クック諸島滞在記】第5回 週末の過ごし方 その1

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ラロトンガ島で日々を過ごしていると、その日が何曜日で、何日であるとか、そういうことはほとんど気にならなくなる。毎日東から太陽が昇り、西に沈む。雨が降り、雲が流れ、波が砕け、風が吹く。大切なのは自然の営みを感じながら過ごすことであり、人間が決めた時間の枠組みなんていうものはそれほど重要ではなくなってくる。しかし、週末になると、一週間が過ぎたのだなと知らせてくれるイベントがいくつかある。

そのひとつに、毎週土曜日の午前中にアバルアの街の中心で開かれるプナンガヌイ・マーケットがある。

土曜日の朝8時頃、マーケットに人が集まり始める。一体この島のどこにこんなにも人がいたのかと、驚く。ラロトンガ島の人口1万人弱。マーケットには1000人以上の人がいるだろう。ラロトンガ島はニュージーランドから来る観光客に人気で、彼らもマーケットに多く見かける。

屋外にいくつかのテントが並び、地元で栽培しているラデシッシュやトマト、ハーブなどの野菜や、パパイヤ、ココナッツ、パッションフルーツなどの果物が並ぶ。ラロトンガでは、食材を買うときほぼ大手のスーパーマーケットで買うことになる。大半がニュージーランドから船で運ばれてきており、地元で育てた食材はほとんど手に入らない。このマーケットに並ぶ野菜などはすべて地元で育てられ、収穫されたもの。不揃いで形も悪いが、それでも島の味がして美味である。 

その他にもコーヒースタンドがあり、黒真珠の貝で作ったアクセサリーを売るお店もある。テイクアウトの軽食を売る店も多く、串に刺したチキンのグリルや、ホットドッグ、フィッシュアンドチップスなどが人気だが、よく見るととんかつや手巻き寿司なども売られている。日本に行ったことがあるクック諸島人は思いがけず多く、みな日本食が大好きなのだ。小さな島なので噂はすぐに広がる。しかし、クック諸島で見かける手巻き寿司などはどれも日本人が想像するより遙かに巨大で、味も大味で、クック諸島人向けである。

ちなみに、私が毎週このマーケットで好んで注文していたのがアイスコーヒーである。ちなみに、クック諸島のアイスコーヒーは、日本のものとは違う。日本では冷たいコーヒーを指すが、こちらではコーヒーとアイスクリームをミックスし、その上にさらにアイスクリームを山盛りしたものをアイスコーヒーと呼ぶ。もはやアイスクリームの味しかしないのだが、地元の人には人気である。日本人にとっては甘すぎるので、コーヒーにアイスクリームをミックスせずに、上に載せるだけにして欲しいと注文する。するといわゆる喫茶店のコーヒーフロートができあがる。強い日差しと熱さのなか、この苦みと甘みの絶妙なバランスを堪能すると、なんとなく緩やかで贅沢な週末を実感することができるのであった。

このマーケット、一番の人気は、島の子どもたちによるダンスショーである。アップテンポで重みのある太鼓のリズムと、太いマホガニーの木の中を繰り抜いて空洞にしたものをバチで叩きながら奏でるパテと呼ばれる楽器の音があたりに鳴り響く。踊り子たちはココナッツの葉で編んだ腰蓑を身につけた子どもたち。クック諸島はハワイやタヒチと同じポリネシア文化圏だが、それぞれの島の違いや特徴がある。しかし、その踊りや動き自体に意味があり、ストーリーがあり、島の存在そのものを表しているということには変わりがない。踊りを見ていると、子供といえども、まるで島という存在が人格を得て人間の形になって現れて踊っているような気がしてくる。まるで夕焼けに染まる雲の紋様や、海辺で砕ける波の形を眺めているかのような気がしてくる。

クック諸島の最大の魅力は、大地の一部として存在する人々の営みを感じることにある。この地で今を生きる人々は、この地の連綿と続いてきた時間の積み重ねの流れの中にいる。踊りは、雄弁にそのことを見るものに語りかけるのであった。

次回に続く。

写真・文 竹沢うるま

(プロフィール)1977年生まれ。写真家。
ダイビング雑誌のスタッフフォトグラファーとして水中撮影を専門とし、2004年よりフリーランスとなり写真家としての活動を本格的に開始。2010年〜2012年にかけて、1021日103カ国を巡る旅を敢行。写真集「Walkabout」(小学館)と対になる旅行記「The Songlines」(小学館)を発表。2014年第三回日経ナショナルジオグラフィック写真賞受賞し、2015年に開催されたニューヨークでの個展は多くのメディアに取り上げられ現地で評価されるなど国内外で写真集や写真展を通じて作品発表。世界各地を旅しながら撮影をし、訪れた国と地域は145を越す。近著にチベット文化圏をテーマとした写真集「Kor La」(小学館)や「旅情熱帯夜」(実業之日本社)がある。

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