初めてのジョンミューア・トレイル顛末記 Vol.10 ~ゴール目前の荒天~ | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2016.01.10

    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記 Vol.10 ~ゴール目前の荒天~

    グレンパスより景色を望む

    グレンパスより景色を望む

    ジョンミューア・トレイル(以下JMT)の旅もいよいよ終盤。
    グレンパスを越えると、Mtホイットニーまでは、JMTとパシフィック・クレスト・トレイル(以下PCT)ルート上で最高標高の峠、フォレスターパスを残すのみにななります。
    PCTで歩いた時には、このエリアの景色の美しさに驚きました。しかし、今回は山火事の影響で、その美しい景色の一端すらも見ることができませんでした。

    サブトレイルが山火事で閉鎖される中、運良くJMTは閉鎖になることはありませんでした。なんとか歩けているのは、それでもラッキーな状況だったのかもしれません。

    煙の中を歩いて行く

    煙の中を歩いて行く

    フォレスターパスに登る前日の夜中に降りだした雨は、朝には止んでいましたが、朝起きると相当に冷えこんでいました。あまりもの寒さに、いつもより少し遅く私が出発。その後クミさん、そしてワタナベさんといつものように続くのでした。
    普段は出発が遅い周りのハイカー達も、フォレスターパスを午前中に越えるために、私達よりも早くスタートしていたのでした。
    徐々に高度を上げていくと、先に出発したハイカー達に追いつきました。フォレスターパスの狭い尾根に着くと、私とクミさんを含め9人ほどのハイカーで埋め尽くされていました。

    フォレスターパスにて

    フォレスターパスにて

    お互いに写真を撮っていると、寒さの中、突然雨が降り出してきました。空を見上げると、いつもより黒く怪しい雲が迫ってきています。急いで雨具を羽織り、私とクミさんはパスを降りたところでワタナベさんを待つ事にし、一気に駆け降りました。

    天候が急激に悪化してくる

    天候が急激に悪化してくる

    進行方向は黒く分厚い雲に覆われていましたが、随分先の方には少しだけ晴れ間が見えていました。しだいに強さを増す雨の中、とにかく雨の降らない場所を目指して歩くしかありませんでした。
    手は凍え、次第に感覚が無くなっていきます。ただ無言のまま、晴れ間を目指して歩くしかありません。
    2時間程すると、気温は低いものの僅かな晴れ間と水場のある場所に出ることができました。
    辺りの雲行きが怪しかったのですが、昼食を作りながら、ワタナベさんの合流を待っていました。
    このエリアの景色は印象深く、3年前の記憶がどんどん蘇ってくるのでした。

    わずかな日差しで濡れたものを乾かす

    わずかな日差しで濡れたものを乾かす

    最後の宿泊地は、Mtホイットニーの山頂手前のギターレイクがベストだと考えていました。
    「ここまで来れば、今日・明日で歩く距離もアップダウンも僅かで済む。食料も間に合うし、早めにキャンプしよう!」」
    私のそんな言葉が、何かを引き寄せたのかもしれません。再度降り出した雨は更に冷たく、少しでも標高の低い場所でキャンプした方が良いと思ったのです。

    このエリアで一番標高の低いキャンプ地にたどり着いたころ、雨はさらに激しさを増していました。
    私は素早くテントを張り、寝袋に潜り込みました。随分体が冷え切ってしまい、いったん寝袋に入り込むと出られなくなってしました。
    止む気配のない雨に、テントの中で私の頭はぐるぐると考えを巡らしていました。もし、明日一日中雨だったらどうしよう。テントの中で周辺地図をくまなくチェックしても、迂回できそうなルートは標高が高く、距離が長くてとても無理そうです。もはやMtホイットニーを越えるしか方法はありませんでした。

    雪のビックホーン・プラトー

    雪のビックホーン・プラトー

    冷たい雨は、結局朝まで雨が止むことはありませんでした。朝、何度もテントの前室から空の状況を見ると、雲がやたらと早く動いていました。
    「頼む、晴れてくれ」何度も祈っていました。日差しが僅かに見え始めると、やがて雨もやんできたのです。
    出発するのは今しかない。谷間にこのままいても、日が差すまでもう少し時間がかかってしまう。
    午前9時だから、これから気温は上がってくるはずだ。私は意を決し、寒さの中、濡れたテントをたたみ出発。日の当たる斜面まで急いだのでした。
    谷底から標高を徐々に上げて登りながらふと後ろを振り返ると、昨日通過したビックホーンプラトーはすっかり雪に覆われていました。
    雨には降られましたが、私たちは寸前の所でストームをかわしていることを知ったのです。

    次回につづく

    【過去の記事はこちら】
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.1
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.2
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.3
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.4
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.5
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.6
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.7
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.8
    初めてのジョンミューア・トレイル顛末記vol.9

    プロフィール

     

     

     

     

    Profile
    斉藤正史 山形県在住
    LONG TRAIL HIKER
    NPO法人山形ロングトレイル理事
    トレイルカルチャー普及のため国内外のトレイルを歩き、山形にトレイルを作る活動を行う。

    ブログ http://longtrailhikermasa.blog.fc2.com/
    山形ロングトレイル https://www.facebook.com/yamagatalongtrail

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