北海とバルト海に面するドイツ北部といえば、夏の人気ビーチリゾート。ドイツ国内のみならず、近隣ヨーロッパからも多くの観光客が押し寄せます。子どもたちの歓声が聞こえ、にぎやかな雰囲気の夏の海は活気があります。
一方、観光客の姿がほとんど見えなくなるオフシーズンの時期ですが、静かなビーチを気ままに歩くのも、夏とはまた違った魅力があります。
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日々多彩な表情を見せる、冬のバルト海へ
曇天と強風の中で散策を強行してみたものの……
冬のドイツ北部はどんよりした灰色の空のまま一日が終わることも多く、太陽の姿をほぼ見かけない日もざら。それでも美しく、毎日違う顔をのぞかせるこの季節のバルト海が気に入っています。
さて、今回出かけた先はティメンドルファー・シュトラント(Timmendorfer Strand)という地区。バルト海沿いにある人気バカンス先の一つですが、ここに来たかった理由が私にはありました。

その前にとりあえずシーフードレストランでランチを済ませることに。学生さんなのか、気さくな男性スタッフが「うちのレストランの魚介類は全部オストゼー(die Ostsee/ドイツ語で「バルト海」の意味)で獲れたものを使っているんですよ!」と胸を張っていただけあり、とても新鮮で美味でした。
ランチの後、さっそくビーチを散策するぞ!と意気揚々と浜辺へ来たのですが、まあ寒いこと。この日は気温が1~2℃ほどだったので厚着をしてきたはずですが、海から強く冷たい風が吹いてきます。

ところでここに来た目的は、2024年9月に新しくできた桟橋を歩くことでした。430mほどのループ型になった桟橋で、様々な角度から海を眺めることができる散策道になっています。
季節が良い時期なら、いや、せめて晴れていたら壮大なパノラマビューが見られたのになあ、と天気を恨みつつ、それでも桟橋の入り口まで来てみました。地元の人たちは悪天候には慣れっこなのか、よちよち歩きの男の子や愛犬と散歩する女性、さらには車椅子で桟橋を行く人もいて脱帽。
歩けないことはないですが、“修行”ではなく景色を楽しみつつ散策したい気持ちが強かったのでこの日は諦め、尻尾を巻いて帰宅したのでした。

太陽の光浴びるチャンス到来、再びビーチへ!
翌日は奇跡的に晴れ。今日こそは海も穏やかに違いない!ということで再び海へ行くことにした私たち夫婦。
前日に無念な思いをしたティメンドルファー・シュトラントをリベンジ再訪することも考えましたが、結局一番なじみがあるボルテンハーゲン(Boltenhagen)のビーチへ。ボルテンハーゲンはティメンドルファー・シュトラントから東に40kmほどの場所にあります。

4.5kmの長さの砂浜があるボルテンハーゲンも、ドイツ北部に多数存在する海辺リゾート地の一つですが、オフシーズンの時期は穏やかで静かです。

最初は木製の散策道をずっと進み、さらさらの白砂ビーチとロイヤルブルー色の海を遠くから見て楽しんだ後、砂浜の方へ歩いて行きました。
この日の温度は5℃もありましたが、冷たい海風に直撃されるのは前日と変わらず。それでも柔らかい冬の日差しを浴びていると、くつろいだ気分になります。
欧州の冬は長く、日光に当たる時間も短いので冬季うつになりやすいのだとか。そのためこちらの人たちは少しでも太陽が顔を出すやいなや、一斉に外へ飛び出していきます。

北欧に近いドイツ北部の海辺に暮らす人たちも、そんな太陽の恩恵を得るためにビーチウォーキングをエンジョイしているようでした。

私たちも潮騒をBGMにビーチを歩いて行きます。目指すのは遠くに見える桟橋。

遠くから見るとかなり長そうな桟橋ですが、実際は普通に歩くスピードで3~4分ほど行けば桟橋の先端へたどり着くことができます。

バルト海の潮風に歓迎されつつ、砂浜を歩く人たちを橋の上から観察してみたり、途中のベンチで休んでいた老夫婦に「モイン!」と声をかけながら歩いて行きました。ところで「モイン(Moin)!」とはドイツ北部でよく耳にする挨拶で、「ハロー!」の意味があります。

桟橋でユリカモメが羽を休めている姿も。ビーチにも白鳥やユリカモメなどの水鳥たちがたくさんいました。

そして桟橋の先端に到着。
すでに数人がいて、海を静かに眺めては様々に想いを馳せているようでした。私は水平線を見ながら、海の向こうにあるはずのデンマークを頭の中で思い描いていました。

ビーチウォーク帰りの美味しい「お楽しみ」
ところで、砂浜散策をしてリフレッシュした後の「お楽しみ」があります。それは毎年年末~年始に出ているスタンドで美味しいものを食べること!

ジューシーなソーセージにクレープ、ハンバーガーやホットドリンク、そしてバルト海で獲れたシーフードなどを販売するテント型の白いスタンドが、ビーチ前の広場にオープンするのです。スタンドは全部で10ほどのささやかなものですが、毎年これを楽しみに地元の人たちが集います。
ちなみに私が毎回買い求めるのは、熱々で新鮮なエビとタラのフライ。サツマイモフライと一緒に食べるのが至福のひとときです。歩いて消費したカロリーより摂取カロリーが上回っている気もしますが、年の瀬の特別な機会なので良しとします(笑)。

そしてこの時必ず飲むのが「Sanddorn」のホットドリンク。ドイツ語発音にできるだけ近い表記をすれば「ザンドーン」でしょうか。日本では、英語の「シーベリー」「シーバックソーン」や中国語の「サジー」として知られています。
ドイツ北部ではこのザンドーンが自生しており、また大規模に栽培されている地域もあります。鮮やかなオレンジ色をした果実が特徴で、味はアンズっぽいそうですが酸味が強すぎるためそのまま食べることはありません。ジャムや蜂蜜、菓子類、さらにはリキュールやジュースなどに加工されることがほとんどです。
ビタミンC豊富で、その他のビタミン類やミネラルなども多く含むことからスーパーフードとして重宝され、スーパーなどの小売店でも色んなザンドーン商品が販売されています。

さっそくスタンドで売られていたザンドーンプンシュをゲット。プンシュはラム酒にジュースやお茶などの飲料をミックスしたホットドリンクですが、今回アルコールなしのものをいただきました。ザンドーンの濃厚で甘酸っぱい風味がクセになりそう。ビタミンCもたっぷり摂れた気がします。

しかしここ10年ほど前から、この地域のザンドーンが大量に枯死していく現象が問題になっています。専門家が何年もかけてその原因を究明すべく調査していましたが、気候変動や菌類が影響しているのでは?という結論に終わっています。
長年親しんできた太陽色の果実は、もしかしたら今後消えていってしまうのかもしれない…とザンドーンの将来を案じつつ、バルト海を後にしました。
Baltic Sea Germany:
https://www.ostsee.de/baltic-sea-germany/








