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酒飲みには毒!二日酔いになるキノコ「ホテイシメジ」と「ヒトヨタケ」

2019.04.27

キノコを採って&撮って30年!マッシュ柳澤の知れば知るほど深みにハマる野生菌ワールドへようこそ!

カサが開ききったホテイシメジと幼菌。美味いキノコというのだが…。

ホテイシメジは、シコシコした歯ざわりと癖のない良い出汁がでる、キノコの中でも上位に入る、美味しいキノコだそうだ。

「そうだ」というのは、実は私、このホテイシメジの新鮮なものを食べたことがない。特別珍しいキノコで手に入らないから、というわけではない。むしろ、カラマツの森では、普通に見られるキノコで収穫量も多い。

我が家でも天日乾燥したものを、出汁取り用には利用している。

野趣に富んだ、力強い旨味がでるからだ。

それにもかかわらず採りたてのものを、調理して食べたことがない理由、それは、私が毎晩欠かさずお酒を飲む左党からだ。

一日中、山を歩いて採ったキノコを、おろし和えかなんかにして酒の肴に、キュっと一杯の晩酌。キノコ好きにとってはたまらない幸せなひと時だ。

だが、ホテイシメジなど、いくつかの種のキノコを、酒と一緒に食べると、「もう死んだほうがいい」と思うほどの苦しみに襲われることになる。

飲まずに食べれば、美味な食菌なのだが、お酒が入るといきなり暴れだす、頭痛に吐き気、嘔吐。いわゆる悪酔い、長引けば二日酔い。

東北地方では、ホテイシメジは「ヨイツブレ」というストレートすぎる地方名で呼ばれているそうだ。

酒で豹変する酒乱のようなキノコ、それがホテイシメジだ。同じように、酒癖の悪いキノコとしては、ヒトヨタケが有名で症状もほぼ同じだ。

ヒトヨタケ(※有毒※)

学名:Coprinopsis atramentaria (Bull. :Fr.) Redhead, Vilgalys & Moncalvo

毒成分はコプリン。肝臓でのアセトアルデヒドの分解を阻害する。

【カサ】

幼時、細鱗片に覆われ、細長い卵型のち唐傘様。中央部が突出し長い条線がある。古くなると、黒い液状になって溶け、柄だけが残る。

【ヒダ】

上生し密。白色のち周辺部から黒褐色化。

【柄】

中空で真ん中あたりに不完全なツバがある。ツバより下は平滑~褐色鱗片が覆う。

ヒトヨタケに似ているが、二日酔いを起こさないキノコ

●ササクレヒトヨタケ(食べられるキノコ)

学名:Coprinus comatus (O.F. Müll.) Pers.

幼菌が高級食材として栽培されている美味なヒトヨタケ(毒)に似たキノコ。食用になるのは、内部まで白い幼菌のみ。カサとヒダは古くなると、周囲から黒色液状化する。ヒトヨタケとの違いは、カサが繊維状のささくれに覆われること。柄の中頃にヒトヨタケと同じようにツバがある。特に幼菌はヒトヨタケと似ているので注意。

二日酔いや悪酔いは、どうして起こる

二日酔いや悪酔いの原因は、お酒のアルコールが肝臓で分解され、無毒化する際にできる中間物質、猛毒のアセトアルデヒドのため。

肝臓中のALDHという酵素でアセトアルデヒドは、無毒な酢酸(お酢の主成分)と水に分解されるのだが、それが間に合わないと、中毒を起こし、頭痛や吐き気などの不快な症状を起こす。これが、いわゆる二日酔いや悪酔いの状態だ。

ホテイシメジやヒトヨタケを肴にして、一杯やると、とんでもない悪酔いや二日酔いになる理由。それはアセトアルデヒド分解酵素のALDHの働きを阻害する有毒成分が含まれているためだ。

ただし、この成分はお酒を飲まなければ、まったく害がない。そういった意味では、有毒成分という言い方には当たらないかも知れない。

注意しなくてはいけないのは、酒の肴にするなど同時進行でお酒を飲みながら、ホテイシメジを食べなくても、アルコール中毒の症状が現れる点だ。

ホテイシメジを食べて、体内に取り込まれた毒成分は、数日から一週間程度、とどまり続ける。
うっかり、ホテイシメジを食べたのを忘れて、お酒を飲むと、手痛い悪酔いをする可能性がある。

同じ理由で、飲酒した翌日、ホテイシメジを食べると何時までたっても体のだるさが抜けないということにもなりかねない。とにかく、飲酒の前後には、ホテイシメジは絶対食べないこと。

ホテイシメジを食べたら、最低でも一週間程は断酒をする必要がある。

ちなみに、アルコール依存症患者に処方される、断酒薬、医薬品のジネルフィラムの体内での働きは、ホテイシメジやヒトヨタケの毒成分と、ほぼ同じだ。

二日酔いや悪酔いを起こすキノコ

●スギタケ(※毒※)

学名:Pholiota squarrosa (Weigel:Fr.) P. Kumm.

カサや柄が鱗片に覆われるのが特徴。悪酔いを起こす成分を含み、さらに体質により胃腸系の中毒を起こす事もある。スナタケの名で食用にしている地域もあるが、スギタケの仲間は種類が多い上に、未記載種も多く同定が難しい。食用にしないほうが無難。

●キララタケ(注意が必要なキノコ)

学名:Coprinellus micaceus (Bull. :Fr.) Vilgalys, Hopple & Johnson

ヒトヨタケと同じ毒成分、コプリンを含む小型のキノコ。ヒダに黒ずみが無い幼菌は可食というが、やはり、悪酔いする可能性がある。食用価値は高くない。

ホテイシメジを食べて悪酔い! その症状は?

ホテイシメジの中毒は、基本的に酒酔いからもたらされる症状と同じため、保健所や行政機関に届けられることがない。したがって具体的にどのようなものなのか、確認できる方法に乏しい。

以下、たまたま見つけた登山を趣味とする方のブログに載っていた体験談から。

朝、20本ほどのホテイシメジの炊き込みご飯を、茶碗に一杯、昼に二杯。妻は昼に一杯半を食べた。

夕食。夫はビール350cc缶一本、妻は2/3缶ほど、飲んだところ、数分後に顔や手足が真っ赤に上気、心臓の鼓動が激しくなり、頭痛、二日酔い様の症状をおこしたが、症状は二時間ほどで改善した。それまで、飲酒で真っ赤になった経験は無かったという。

このケースは、ホテイシメジを食べて、数時間後に飲酒しているが、もし酒と同時に食べていたら、ホテイシメジによる症状が出る前に多量のアルコールを摂取していて、もっと悲惨な目にあったかも知れない。
お酒で顔が赤くなったことはない、ということだからお酒には強いという自負があったのだろう。

ウワバミよりさらに酒に強いひとのことを、ザルという。いくら飲んでも素通りして、キリがない、顔色も変わらないからだ。

山で採ってきた、ザルの上のホテイシメジを食べると、どうやらウワバミも下戸になるようだ。

ところで、前述したように、我が家ではホテイシメジを干しキノコにして出汁とりに使っている。

私は今まで、それで悪酔いしたことはないが、もともと酒に弱い人には症状が出る可能性がある。十分注意して利用するように。

●ホテイシメジ(注意が必要なキノコ)

学名:Ampulloclitocybe clavipes (Pers. :Fr.) Redhead, Lutzoni, Moncalvo & Vilgalys

ホテイシメジと同じく、カラマツ林に発生する「ホテイダマシ」は無毒で、柄が細く中空気味、カサ部の肉も薄く、全体に淡色で酒と一緒に摂取しても安全。

【カサ】

饅頭形から深い皿型に開く、中央部の肉が厚く、側面から見た印象ほど漏斗型ではない。表面は平滑で、淡灰色~灰褐色。

【ヒダ】

長く垂生し、やや疎。白色~乳白色。

【柄】

下方に太く、基部が肥大し中実。表面、カサと同色かやや淡色。

【肉】

白色、無味無臭。

【環境】

各種林内の地上に散生~群生。特にカラマツ林に多い。

【食毒】

アルコール分解を阻む成分、(E)-8-オキソ-9-オクタデセン酸などの共役エノン、ジエノン類を含み、二日酔いや悪酔いなどを誘発。飲酒厳禁。

ホテイシメジに似た毒キノコ

●ドクササコ(※猛毒※)

学名:Paralepistopsis acromelalga (Ichimura) Vizzini

手足の指先に焼け火箸を突き刺されたような強烈な痛みが、20 日以上続くという、拷問にも似た中毒を引き起こす、有名な猛毒菌。なぜか日本海側、多雪地帯に多い。しかし本州中部から発生の情報もあり、他地域でも油断はできない。別名ヤケドキン。

【カサ】

幼時、縁が強く内側に巻く。扁平から漏斗型に開く。帯喝黄土色~橙褐色。乾燥時に鈍い光沢がある。

【ヒダ】

長く垂生し、幅狭く密。淡黄土色~淡橙黄色。

【柄】

上部はカサと同色~やや淡色。中程から下はつや消し塗料様の質感の白色菌糸に覆われるが、手で触れたり、乾燥、老成により、カサと同色~やや淡色の地色を現す。

【肉】

淡黄褐色。無味無臭。丈夫で腐りにくい。

【環境】

竹林や笹薮、カラマツなど各種森林地上に発生。

【食毒】

猛毒、治療法は無く、痛みに対する対症療法しか施せない。

文・写真/柳澤まきよし
参考/
「日本のキノコ262」(自著 文一総合出版)
「山溪カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ」(山と渓谷社)
「Gakken 増補改訂 フィールドベスト図鑑 日本の毒きのこ」(長沢英史監修 学研教育出版)
「原色きのこ」(清水大典著 家の光協会)
「写真とサウンドで綴る『山、渓、どろんこ探険』ホームページ」

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