料理旅館「出羽屋」の絶品山菜料理を写真で紹介!修験者を迎えてきた旬の味を食す - 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.05.18

    料理旅館「出羽屋」の絶品山菜料理を写真で紹介!修験者を迎えてきた旬の味を食す

    料理旅館「出羽屋」の絶品山菜料理を写真で紹介!修験者を迎えてきた旬の味を食す
    山形県にある月山、羽黒山、湯殿山は、合わせて「出羽三山」と呼ばれる修験道の行場だった。ここに参詣する信者あるいは修験者を泊めるため、山麓には宿坊や行者宿が今も残る。

    「出羽屋」は古くある宿坊で、近年は山の恵みを懐石料理のように上品に仕立てる料理旅館として知る人ぞ知る。筆者は二代目主人の著書を携えて訪ねた!
    山菜料理・出羽屋の春の献立。前菜のおひたし盛り合わせ、小鉢として、クサソテツ(こごみ)の胡麻和え、ウドの胡桃味噌和え、仙人の霞。五重として、タラの芽の切りあえ、ニリンソウのからし醤油、カジカ(Cottus pollux)の唐揚げ、ギョウジャニンニクの酢醤油、葉ワサビ。地酒の飲み比べも。山形県西川町の出羽屋にて。

    東北地方のブナ林は、山菜の宝庫である。この豊かな山菜をたくみに調理して客に提供する料理旅館が月山の山麓にある。山菜料理の出羽屋である。

    4月のカタクリ、木の芽(ミツバアケビの若芽)、ふきのとう(フキの花蕾)に始まって、5月にはウド、ワラビ、コシアブラなど、6月には月山筍(チシマザサの筍)、ジュンサイ、ウワバミソウ(みず)など、春だけでも30種類以上の山菜が少しずつ時期をずらしながら、それぞれの最盛期を迎える。

    山形県西川町にある「山菜料理の宿」出羽屋

    これらの山菜を季節に合わせてコース料理として食膳に供するのが出羽屋である。この地域の山菜料理は、もともとは月山、羽黒山、湯殿山の出羽三山に参詣する信者あるいは修験者を泊める宿坊や行者宿で、それぞれ山菜でもてなしたのが始まりとされる。

    伝統的狩猟集団であるマタギが持つマタギ文書には日光系と高野系があり、それぞれ天台宗と真言宗を代表していて密教や修験道との関わりがあると指摘されてきた。修験道もマタギも、ブナ林文化の深層に流れる自然信仰の影響を濃く体現していることは間違いない。

    さて2021年5月15日、出羽屋の献立をみてみよう。まず前菜として、ワラビ、モミジガサ(しどけ)、ウワバミソウ(みず)、ミヤマイラクサ(あいこ)、イヌドウナ(どほいな)のおひたし盛り合わせである。

    山菜のおひたし盛り合わせ。上段はワラビ、中段は左からモミジガサ(しどけ)、ウワバミソウ(みず)、ミヤマイラクサ(あいこ)、下段はイヌドウナ(どほいな)。山形県西川町の出羽屋にて。

    くせが強い山菜の調理法は切りあえがいちばん!

    調理のコツは、採りたてを片っ端からゆでること、たっぷりのお湯を使い、ゆで上がったらさっと水にあげてしっかり絞ること、そしてゆですぎないこと。山菜のシャキッとした歯ざわりとそれぞれの香気の違いを楽しむことができる料理である。

    タラの芽の切りあえ。山形県西川町の出羽屋にて。
    カジカ(Cottus pollux)の唐揚げ。山形県西川町の出羽屋にて。

    五重として、タラの芽の切りあえ、ニリンソウのからし醤油、カジカ(Cottus pollux)の唐揚げ、ギョウジャニンニクの酢醤油、葉ワサビ。切りあえとは、ゆがいてしっかりと絞った山菜に焼き味噌を加えて細かく刻んだものである。

    切りあえには早春のくせが強い山菜が合うとのこと。からし醤油あえにしたニリンソウは、しばしば毒草のトリカブトと間違うことでも有名で、慣れない人は採集に注意が必要だ。

    キンシコウも好む「仙人の霞」の正体とは?

    仙人の霞。木生海苔(きぶのり)と呼ばれているが、地衣の一種であるバンダイキノリ(Sulcaria sulccata)。山形県西川町の出羽屋にて。

    小鉢には、クサソテツ(こごみ)の胡麻和え、ウドの胡桃味噌和え、仙人の霞。仙人の霞は、この地では木生海苔(きぶのり)と呼ばれているが、地衣の一種であるバンダイキノリ(Sulcaria sulccata)である。山地の樹木上に生える地衣類で、とくにブナの古木に好んで着生する。

    よく亜高山帯にみられるサルオガセの一種である。高さ5~8cmで、直立して密に分岐して叢生になる。仙人の霞は、バンダイキノリを保存のために乾燥させたものを、いったん酢で戻して胡桃味噌で和えた料理である。サルオガセの仲間は、中国雲南省の孫悟空のモデルとも言われるウンナンキンシコウが好んで食べるのを思い出した。

    山菜が満載された「月山山菜鍋」は贅沢の極み!

    山菜豆腐。コシアブラとモミジガサ(しどけ)入りの胡麻豆腐。胡麻味噌といりごまの天盛り。山形県西川町の出羽屋にて。
    採れたての月山筍を卓上で焼いていただく。山形県西川町の出羽屋にて。

    それらに続いて、以下のものを提供してくださった。山菜豆腐。胡麻味噌といりごまの天盛りで、コシアブラとモミジガサ(しどけ)が入った胡麻豆腐である。月山焼き筍。採れたての月山筍を卓上で焼いていただく。

    山うどやぜんまい、うるい、月山筍、みず、あいこなどの山菜が満載された月山山菜鍋。山形県西川町の出羽屋にて。
    タラの芽とこしあぶら、山うどの天ぷら。山形県西川町の出羽屋にて。

    お椀として、月山山菜鍋。山うどやぜんまい、うるい、月山筍、みず、あいこなどの山菜が満載された汁物である。その季節に出盛りの山菜をすべて放り込んだ贅沢な鍋料理だ。油物として、タラの芽とこしあぶら、山うどの天ぷら。最後は、ウコギ飯と月山筍の味噌汁、それにくろもじ羊羹とフルーツの甘味。

    ウコギ飯。山形県西川町の出羽屋にて。

    出羽屋の二代目主人が書き残した山菜の価値とは?

     『出羽屋の山菜料理』(求龍堂1984)のあとがきにあたる部分に当時の主人であり、著者でもある佐藤邦治氏は次のように述べている。

    現代は、確かに文明が発達し、食品も豊富に手に入るようになりました。しかし、中身は人工食品であり、促成・抑制栽培品が氾濫しています。その中で山菜は失われつつある野や山の香りを匂わせてくれる貴重な食べ物として、好んで食べられるようになっています。私は山菜料理屋の主人として、こんな時代に皆様に山菜料理を食べていただくことは、大きな喜びを感じると同時に、重大な責任を感じざるを得ません。今後もますますの精進を重ね、皆様のご期待を裏切ることのないようにつとめてまいりたいと思います」。

    2021年に出羽屋に持参したこの本に、三代目女将の佐藤明美氏は「旬に味に歓びを感じ、時代を重ねる事にありがたさを感じる」とサインを下さった。その志は、四代目の佐藤治樹氏にも立派に受け継がれ、地のものを使った新しい料理への挑戦を続けておられる。

    取材協力/出羽屋 https://www.dewaya.com

    湯本貴和さん

    1959年徳島県生まれ。日本モンキーセンター所長。京都大学名誉教授。理学博士。植物生態学を基礎に植物と動物の関係性を綿密に調査。アフリカ、東南アジア、南米の熱帯雨林を中心に探検調査は数知れず。総合地球環境学研究所教授、京都大学霊長類研究所教授・所長を務める。京大退官後も旅を続け、調査を続け、食への飽くなき追求を続けている。著書に『熱帯雨林』(岩波新書)、編著に『食卓から地球環境がみえる〜食と農の持続可能性』(昭和堂)などがある。日本初の“食と環境”を考える教育機関「日本フードスタディーズカレッジ 」の学長も務める。

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