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ドキュメンタリー映画で、イランとアフガンの社会に触れる
フィクションからドキュメンタリーまで、そして日本はもちろん、中国、ウクライナ、アメリカ、イラン、リトアニアと世界各国の作品が集結。映画館の跡地や老舗ライブハウス、市民会館を舞台に、映画を通して世界に触れ、考え、対話する「第1回島んちゅぬ映画祭」が開催されます。上映後には国内外の監督やゲストが来島し、Q&Aやトーク、学生との交流プログラムが繰り広げられます。
それに先駆け、石垣島の中高生に向けた教育プログラム「Impact from the Ishigaki Island ― 離島から世界を考える ―」が実施されました。会場は沖縄県立八重山高等学校のLL教室。同校の学生以外に近隣の中高生、八重山の教育支援を行う東京大学Diligentの学生も参加しています。

取り上げるのはドキュメンタリー映画『少女は月夜に夢をみる』。主人公は、イランで暮らすアフガニスタン難民の少女ソラヤです。児童婚させられ、夫による家庭内暴力にさらされながら、ヨーロッパにいる母に会うため、命の危険を冒して越境を試みます。ソラヤは「メイクをしたい!」「カラフルなお洋服を着たい!」と願うごく普通のティーンエイジャー。一方で根っからのアーティストでもあって、絶望的な現実から逃避するように絵を描いたり、粘土で立体作品をつくったりして自分自身と向き合います。
そんな過酷な5年間を自らの携帯電話で記録、幻想的で哀しいアニメーションと融合させた作品です。参加者は予め映画を鑑賞し、この特別オンライン講義に備えました。

なぜイランの少女は、命がけで越境を試みるの?
ゲスト講師は、室蘭工業大学大学院教授の清末愛砂(きよすえ・あいさ)さん。アフガニスタンにおける女性の人権を研究する専門家で、憲法学、ジェンダー法学の研究者でもあります。アフガニスタンの女性解放を目指すRAWA(アフガニスタン女性革命協会と連帯する会)の共同代表も務めています。それぞれの挨拶もそこそこに、さっそく講義に入りました。
「みなさんどうですか? 映画を観て、ちょっと背景がわからないなと思ったところがあったと思います。まず主人公の少女ソラヤは、『アフガニスタンで生まれていないし、アフガニスタンに行ったこともない。でも自分はアフガン人だ』という認識を持ちながら、なぜアフガニスタンの外にいるのか?という話をします」。そこからアフガンの、大国からの侵攻、内戦に振り回された歴史を説明します。リモートで参加して講義を聴いていると、遠い学生時代を思い出すよう。生徒たちも真剣に聞き入ります。

イラン社会でアフガン人は虐げられた存在であること、しかもソラヤは幼いころに結婚させられ、家父長的社会規範のなか、夫によるDVに苦しめられていること。複数の要素が「バームクーヘンのように」積み重なり、ソラヤを追いつめる背景を説明します。
その後の質疑応答では、最初は遠慮がちながら、ぞくぞくと学生から質問が上がります。「世界が移民、難民を受け入れなくなったらどうなるんですか?」などと日本社会の現状と絡めたり、みんなとっても真面目。映画にはアニメーションで描かれたキツネがソラヤに寄り添ったり、ソラヤの描く絵画のモチーフになったり、たびたびキツネが印象的に登場します。そこで「キツネがなんどか出てきましたが、宗教的な意味があるんですか?」なんて質問も。ひとりで何度も質問する生徒もいます。勉強会はさらに続き、映画祭当日、来場者へ配布する映画解説資料を作成します。
日本で暮らしていると、ニュースで観るアフガニスタンは内戦などで荒廃した風景と、そこでぎりぎりの生活を強いられる人びと。学生は映画と講義を通し、物理的にも心情としてもあまりに遠いイラン、アフガニスタンに思いを馳せました。映画って、人を動かす入り口になる力がある! と改めて実感。3月20日から始まる映画祭で、それを実感してみては?

「第1回 島んちゅぬ映画祭」
2026年3月20日(金・祝)〜22日(日)
https://www.siff-ishigaki.org
上映予定作品
『ルオムに黄昏て』(中国) 監督: チャン・リュル

『猫を放つ』(日本) 監督: 志萱大輔

『ミリタントロポス』(ウクライナ) 監督: アリーナ・ゴルロヴァ、他共同監督作

『パウワウ・ピープル』(アメリカ) 監督: スカイ・ホピンカ

『祖父』(リトアニア) 監督: ヴィータウタス・オスキニス

写真提供:島んちゅぬ映画祭2026







