しかし実は、東海岸の都市ダーバンから車で北へ30分ほど走ると、インド洋を望む美しいビーチタウン「バリート」があります。治安の悪さとは無縁の穏やかな町であり、12月から2月の夏季シーズンには、主に国内の人々がバカンスを楽しみに訪れる人気のリゾート地です。温暖な気候に恵まれ、1年を通してサーフィンやシュノーケリングなどを楽しめます。
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草原とビーチを駆け抜ける贅沢なひととき
私はこのビーチリゾートに住んでいるにもかかわらず、マリンスポーツが苦手でビーチに行くこともほとんどありません。ですが、そんな私でも楽しめるアクティビティが「Ballito Beach Rides(バリート・ビーチ・ライド)」という乗馬トレッキング。
サトウキビ畑や草原を抜けてビーチへ向かい、再びスタート地点へ戻る約2時間(時には2時間半)の体験が1人750ランド(約6,500円)で気軽に味わえます。馬の背に揺られながら広大な景色を眺め、海が近づくと波の音が聞こえてくる…そんな贅沢なひとときを楽しめます。
初心者でも安心。ガイド付きでのんびり乗馬体験
集合は朝8時。約束の時間に到着すると、ガイドさんが丁寧に説明をしてくれて乗る馬を連れてきてくれます。経験者は自分のヘルメットや装備を持ち込むことも可能です。

普段から週に数時間は馬に乗っている私ですが、今回の馬は種類も体格も違っていて、少し緊張しながらも新鮮なワクワクを感じました。経験者は基本的に自由に動けるのが魅力。一方で、初心者でも心配ありません。ガイドさんがロープをつけて一緒に歩いてくれるため、初めてでも安心して楽しめます。
出発時間になっても慌てる様子はなく、のんびりと準備を整えてからスタート。そのゆったりとしたペースに、アフリカらしさを感じました。
サトウキビ畑を抜け、雄大な山々の中を進む

出発地点からビーチへ向かうことになりますが「ビーチライド」という名前なので、すぐ海辺を歩くのかと思いきや、実際は山道をゆっくりと約1時間かけて下っていきます。馬の背に揺られながら見る景色は圧巻で、ほとんど人の姿もなく、どこまでも続く山々がこの国の雄大さを感じさせます。
馬たちもすっかり慣れている様子で、ガイドさんを先頭に、1列になってのんびりと進んでいきます。

私が参加したグループには、観光でバリートを訪れていた十代の女の子もいました。道中は馬の話で盛り上がり、世代を超えて自然と会話が弾みます。こうした年齢を超えた出会いがあるのも旅の魅力です。
基本的にはゆったりとした並足(歩き)で進みますが、時折、経験者には速歩(馬が軽く小走りになる動き)や駆足(速歩よりも早く、3拍子の風を切るような走り方)を試せるチャンスも。
ガイドさんが先へ進み、「私が見えなくなったら、思いっきり走ってきて~」と言ってくれます。その言葉どおり、好きなタイミングで馬を走らせるあの爽快感は忘れられません。日本では安全面からなかなか体験できない、そんな自由さこそ南アフリカらしさだと感じました。

映画のワンシーンのような自由すぎる「ビーチライド」
ビーチが近づくにつれ、波の音が少しずつ大きくなり、海が近いことを実感します。
運がよければイルカやクジラを見ることもでき、特に天気のいい日にはインスタ映え間違いなしの写真も撮れます。
そして、ここからがこのトレッキングの醍醐味。 よく映画などで見る広いビーチを馬で駆け抜けるあのシーン。まさにその瞬間を体験できるのです。人の姿もほとんどなく、思い切り駆け抜けても誰に気兼ねすることもありません。

駆足(かけあし)をする直前、一緒にいた十代の女の子が「ビーチサイドを駆けるなんて、どんな馬ガールも一度はやってみたいことじゃない?」 と、目をキラキラさせながら私に話しかけてきました。その笑顔に背中を押されるように、彼女と一緒に風を切って走り抜けました。私もこの瞬間だけは間違いなく「ガール」だったと思います 笑。
ハプニング:馬も生き物。何が起こるかわからないからこそ面白い
乗馬のもう一つの面白さは、生き物に乗っている以上、何が起こるかわからないということです(人によっては少し怖いと感じるかもしれませんが)。 馬にもそれぞれ性格や感情があり、時には驚くこともあります。
ビーチを駆け抜けている最中、私が乗っていた馬が海の中の「何か」に驚き、 急にスピードを上げて左へ方向転換。 そのまま、隣を走っていた十代の女の子の馬に体当たりしてしまったのです。
経験者として、そして女の子を守らなければという思いから、とっさに馬を落ち着かせようと必死になりました。 一瞬にして「ガール」ではなく「大人の自分」に戻った瞬間です 笑。
幸いすぐに馬は落ち着き、女の子も無事。ヒヤッとしたものの、そのスリルもまた乗馬の醍醐味だと改めて感じました。日本であれば、きっとガイドさんが青ざめて駆け寄ってきたと思いますが、こちらのガイドさんはただ笑っているだけ。そのおおらかさも、いかにも海外らしいなと感じました。

あっさりした別れ。でも忘れられない体験。
ビーチを思いきり駆け抜けたあとは、来た道をまた1時間ほどかけて戻ります。この頃にはもう10時近くになっていて、日差しも強く少し汗ばむくらいです。でも帰り道はなぜか行きよりも早く感じました。
出発からおよそ2時間半後、スタート地点に到着。馬から降りると、それぞれが「じゃあね」といった感じであっさり解散です。一緒に駆けた名前も知らない女の子ともう会うことはないですが、彼女の笑顔や、あのときの感覚はきっとずっと忘れないと思います。
いつもと少し違う時間を過ごしてみたい方は、ぜひ南アフリカで「ビーチライド」を体験してみてください。きっと、誰もが無邪気な自分に戻れる瞬間に出会えるはずです。









