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    2023.09.13

    オーストラリアの砂漠で「乗馬」ならぬ「乗ラクダ」に挑戦したら意外な学びがあった

    キャメルポーズでキャメる私。…ダジャレスタートですみません。

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。先日こんなところに行ってきました。

    ラクダくん、ドヤ顔です。

    TBSドラマ『VIVANT』かっ!というツッコミも聞こえてきそうですが、モンゴルのゴビ砂漠ではありません。アラビア砂漠でも、サハラ砂漠でもありません。ちなみに鳥取砂丘でもありません。

    私がいるのはズバリ、オーストラリアの中央部にある人口約2万6000人の小都市アリススプリングスです!ここは、世界遺産であるウルル(エアーズロック)への拠点としても知られた街です。

    オーストラリアの中央部は乾燥地帯で、このアリススプリングス周辺にも本州の4分の3くらいの面積がある「シンプソン砂漠」があります。

    そんな地で、今回は「乗馬」ならぬ「乗ラクダ」体験をしてきたのでリポートします!

    ヘルメットは必須。なんたって座面の高さは2メートルくらいですから。

    シンプソン砂漠で乗ラクダに挑戦!

    私が訪れたのは「ピンダンキャメルトラックス」という場所。

    「キャメル」というのは英語で「ラクダ」のことです。ここでは乗ラクダ用に14頭のラクダを飼っていて(うち4頭は調教中)、1日2~3回、所要時間約1時間のツアーを開催しています。

    ちなみに私、ラクダに乗るのはこれが2回目。

    以前は座ったラクダの上に乗り、そのあと立ち上がってもらう際に揺れて結構怖かったのですが…。ここでは高さ1メートル以上の「乗ラクダ台」に上がってから乗り込むのでラクだな。…すみません、お約束のオヤジギャグです。

    上から見るとそれなりに高いですね。ちゃんと握るバーもついています。

    ちなみに今回は7頭立てくらいのツアーだったのですが、私が先頭。「僕、一番!」「僕が最初!」が口癖だったガキンチョ時代の本領発揮…というわけではなく、隊列を歩いて先導するガイドさんの指示です。

    今回、私が乗った相棒の名前はピクシー(25歳)。ガイドさんによると「ラクダの寿命は45年くらいで、乗ラクダに使うのは中年のラクダが多い」とのことです。

    先頭はいいのですが、急せかされて乗ったので相棒の写真は撮れず。というわけで一つ後ろのラクダの顔写真です。

    ガイドさんの説明によると「ここにいる14頭のラクダのほとんどは野生のものをつかまえたのですが、中にはラクダレースで活躍し、引退後ここに来たものも2頭います」とのこと。そう、オーストラリアの内陸部では「競馬」の代わりに「ラクダレース」が行われるところもあるのです。

    そういう「競走馬」ならぬ「競走ラクダ」は走る習性が身についているので、野生のものよりも調教には時間がかかるとのこと。とはいえ本来的には走るよりも歩くことが好きな動物なので、次第に慣れていくそうです。調教期間は個体にもよりますが、12~15ヵ月だそう。

    砂漠に映えるラクダのシルエットをパシャリ!

    こんな感じで進みます。隊列の全体像が取れたのは先頭の役得ですね。

    今回私が参加したのは夕方からのツアー(17~18時に出発。季節によって変わります)。

    この時間帯、すごくおすすめです。

    まずは真っ昼間よりも気温が下がります(このあたり、冬場でも最高気温が30度を超えることが普通です)。そして、斜めや横から当たる光ならではのラクダのシルエットがものすごく映えます。

    シルエットだけの写真もなかなかですよね。

    ゆらゆらと揺られながら、頭の中では童謡『月の砂漠』がリピート状態になっていた私。

    ふとガイドさんに「夜のツアーはないんですか?星空もきれいでしょうに」と聞いてみたのですが、「安全性の問題でむずかしいですね」と一刀両断。いいアイディアだと思ったのですが。

    この写真もお気に入りです。ちなみに動画も雰囲気があっていいですよ~。

    この日は見事なくらいの青空。それはそれで素晴らしかったですが、少し雲があればまた違った光景が楽しめたかもしれません。空がピンクやオレンジへと変わる様子を眺めることができたでしょう。

    オーストラリアにラクダがやってきた歴史的背景

    ところで、みなさんの頭の中にはゴビ砂漠やアラビア砂漠並みの大きな疑問がわいていると思います。「なんで野生のラクダがオーストラリアにいるんだ?」と。

    実は、正確にいうとオーストラリアにはもともと「野生のラクダ」はいません。みんな「野生化したラクダ」なのです。

    出発地点の小屋にあったビミョーなオブジェ。

    1850年頃からオーストラリアの内陸部でゴールドラッシュが起きました。金だけでなく、オパールなどの宝石もとれたので、当時の本国であった英国から多くの人たちが入植してきました。

    で、問題となったのはそのときの移動手段、および内陸部に住む人たちへの物資の輸送方法。

    アメリカのゴールドラッシュの場合、西部劇映画などで見る通り、馬、そして馬車が用いられました。ところがオーストラリアのこのあたりではそれができなかったのです。理由は足もとが砂漠などの砂地で、馬には適していなかったため。

    では、「砂漠に強い輸送手段は何か」ということで白羽の矢が立ったのが、そう、ラクダたち。彼らは同じ英連邦のアフガニスタンなどから連れてこられました。ラクダ使いたちとともにです。

    当時もこんなふうに隊列を組んでいたのかな?

    ところが、です。その後に起きたモータリゼーションで自動車が普及すると、ラクダたちはお役御免となります。不要となった彼らをどうするのか。

    ここからの話はアリススプリングスに住む別のガイドさんから聞いた話です。

    英国からの入植者たちは、ラクダ使いたちに「殺処分」を依頼しました。

    ところが、ラクダ使いたちはそれをしませんでした。異国で苦楽を共にしてきた仲間であるラクダへの情にほだされたのか、はたまた単に面倒くさかっただけなのか。真相は不明ですが、そのまま放置してアフガニスタンに帰っていったのです。

    そのときに野に放たれたラクダの数はわずか30~40頭ほど。ところがラクダというのは繁殖力の強い動物です。しかも過酷な条件でも生き延びられる動物。なんと20キロメートル先の水源も嗅ぎつけることができるそうですから。

    のんきそうな顔をして意外と能力値の高いラクダです。

    そして、オーストラリアの中央部には彼らを捕食するような肉食動物はほとんどいません。大昔に野生化した犬「ディンゴ」くらいで、それも狙うのは弱った子ラクダくらい。

    そこでラクダたちは200年近くの間にどんどんと数を増やしていき、今では全オーストラリアでなんと150~200万頭もいるのだとか!

    ここまでが、このガイドさんが教えてくれた話です。

    そんなラクダたちは、今やオーストラリアの「害獣」となっています。というのは水を求めて集落に押し寄せることがあるからです。

    とはいえ勝手に連れてきたのも人間。不要になったからと放置したのも人間。ラクダたちもまた犠牲者なのかもしれません。

    学びも多い貴重な乗ラクダ体験

    さてさて。そんなこんなで1時間の乗ラクダツアーは終了。ちょうど日も暮れてきました。

    乗ラクダ後は、ラクダたちに触れ合う時間もあります。

    ちょっと変わった体験ですし、SNSにアップすれば「え~っ、どこに行ってるの?」と驚かれること間違いなし!乗馬ならぬ乗ラクダ、ぜひぜひチャレンジしてください!

    ピンダンキャメルトラックス(Pyndan Camel Trucks)

    21259 Jane Rd, Mparntwe / Alice Springs, NT 0870
    アクセス:アリススプリングスの中心部から車で20~30分程度
    URL:https://www.cameltracks.com/
    価格:夕方のツアーは大人95豪ドル(約8900円)/昼のツアーは大人85豪ドル(約8000円)

    私が書きました!

    オーストラリア在住ライター(海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫

    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブのお世話係https://www.kaigaikakibito.com/

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