どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
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想像をふわっと超越する爽快さ!(雪遊び王国オーストリア旅・その2)
前回はこちら↓
今回の旅はマイヤーホーフェン観光公社のコーディネーター氏といっしょに計画したもの。で、前回紹介したスキーとかトロボガン(そり)、それからこの後紹介する各種の「雪遊び」が次々と決まっていく中、ある日彼女がくれたメールには「ところでパラグライダーはどう? 雪景色のツィラータール(ツィラー谷。地名)を上空から眺めるのもオツなものよ~」という文言が。
一瞬悩みました。今回のテーマは「雪遊びの王国で雪遊び三昧」。けど雪景色とはいえパラグライダーは「雪遊び」なのだろうかと。あと「パラグライダー」ってちょっと下草が生えたような場所から飛びたつ映像ばかりが頭に浮かんで、「雪山」と結びつかない。
相棒のフォトグラファー氏(田所優季さん)も「有紀夫さんがやりたいならやってもいいけど…だいじょうぶかな?」とフィンランドでのスノーモービルでは「安全第二」のスピードスターだったわりには及び腰。というわけで「大乗り気」とは言えないムードで、パラグライダーに乗ることになったのです。
今回もマイヤーホーフェンの街外れにあるゴンドラ駅から現場に向かいます。ゴンドラの山腹駅近くにあるパラグライダー運行会社の事務所…というか掘っ立て小屋へ。そこでインストラクターのベルナルドさんとトーマスさんに会います。その2人のインストラクターが操縦してくれるタンデムフライですが、私の担当がベルナルドさん。アルゼンチン出身。彼がリーダーっぽいです。
そこからもう一つゴンドラに乗ってスタート地点に向かうのですが…。

その荷物がかなりの大きさのリュックで…。

それだけでかいということです。

さてインストラクターのベルナルドによると飛行時間は20分ぐらいとのこと。スタート地点の標高が海抜1999mで着陸地点のマイヤーホーフェンが600mだから、1400m高度を下げることになります。
飛ぶスピードは速くても時速38kmくらいとのことです。
いよいよパラグライダー飛行開始です!
例によってフォトグラファー氏が私の姿を撮るために、私が先行です。

事前に教えてもらったところによると、丘の上では最初はジョギングでその後「ラン!」と言われたら走るとのこと。そのまま走り続けると自然と地面から足が離れて、カラダが宙に浮く。すると座席というかシートのほうが自然にお尻のほうにやってきて、そのまま飛ぶという寸法。自分からシートに腰かけようとしてはダメ。崖というかスロープが急になっているので走るのが怖く感じられるかもしれないけれども、ちゃんと浮くからとにかく走るのが肝なのだとか。

いざスタートです。ジョギングしたのは5メートル程度。「ラン!」と言われた地点から坂が急になっているところまであと15メートルくらいしかないのですが、ベルナルドの言葉を信じて走りつづけたらたぶん2秒もしないうちに足が地面から離れました。

ふわっと浮いた感じがたまりません。そしてまわりに見える白銀の山々も。その一方で眼下に広がるマイヤーホーフェンの街に近い山裾のほうではでは雪は残っておらず緑が目立ちます。そのコントラストも素晴らしいのですが、そこに青空も加わります。
ふもとの街も真っ白に染まった真冬も、緑一色の夏もいいでしょうが、両方を楽しめる春もまた格別です。
そして「乗客」である私が前に座っているのもまたいい。何も邪魔するものがなく、目の前に見える風景を空から独り占めしているのです。

なにより素敵なのは両側が山で囲まれた谷を飛んでいること。もちろん見渡す限りの大平原も良いのでしょうが、この山と谷が景色に変化を与えてくれます。そして着陸地点が明確にわかる(もちろん大平原のバラグライダーでもどこに降りるかは明白に決まっているのでしょうが)のも、「ゴールに向かっている感」があって安心です。

パラグライダーは上がったり下がったり方向転換をしたりしながら、それでもゆっくりと下っていきます。パイロットのベルナルドが「あなたの同僚も来ましたね」と左上のほうを指さしました。

すると突然フォトグラファー氏が乗ったそのパラグライダーがまるで柱時計の振り子のように大きく左右に振れ始めました。
「だっ、だいじょうぶなの、あれ」。相棒が心配になってベルナルドに聞いてみると、「ああ、あれは素敵な女性が乗客だからと張り切って、パイロットのトーマスがアクロバティック飛行をサービスしているんだよ」。なるほど。
それを聞いて私はひとこと言っておきたくなりました。「ベルナルド」「なに?」「僕は素敵な女性じゃないよね」。ん、何を言い出すんだと思ったのが言葉に詰まるベルナルド。「だからああいうアクロバティック飛行は不要だよ」。
…あんなのされたら気持ちよさが気持ち悪さに急展開しそうな気がしたのです。
ちなみに着陸後のフォトグラファー氏も開口一番「あのアクロバティック飛行のあと全然楽しめなくなった。食後じゃなくて良かった」とのこと。犠牲者には申し訳ないですけど、ベルナルドに釘を刺しておいてよかったです。笑
まさかの操縦体験も!
飛行時間も半分を過ぎたころ、ベルナルドから「ユキ」と呼ばれて振り向く私。
「パラグライダーはこんなふうに左右に体重移動して左右に曲がることもできるんだけど、こんなふうにゆっくりバーを引っ張っても方向転換できるんだよ。右のバーを引っ張ると…ほら、右に、左に引っ張ると左にね」。
なるほどこれは体重移動よりもラクそうだと感心していると、「ユキもやっみるかい?」とレバーを握らせてくれました。まっ、マジか! タンデム飛行とは聞いていましたが、実際に操縦までさせてもらえるとは。
「急じゃなくてゆっくり右のレバーを引っ張ってみて」。すると本当に機体は右を向きます。「次は左のレバー。こっちもゆっくりとね」。

「着陸はあそこ。ロープウェイの駅の横にちょっと高い建物があって、その向こうに緑地が見えるだろ?」。ちょっと待て。あんな小さなところに着陸するの? たぶん地上ではそれなりの空き地なのでしょうが、大空から見たら猫の額です。

それもまた、ダーウィンで滝の上に「愛の不時着」をした時と同じくらいのすごい迫力でした。本当に素晴らしいフライトでした。
それと「期待してなかったのに無茶苦茶楽しかった」という点では、西オーストラリア州のパースで乗ったちょっと変わった人力車「ペドル」と同じレベルでした!
「トランジット系」の雄「フィンエアー」
さて「フライト」と言えば、フィンランドとオーストリアという「雪遊びの王国」を2ヵ所一気に回る今回の旅のもう1つの相棒のフィンエアーについても触れておきましょう。私が個人的に「トランジット系エアラインの雄」と呼んでいる航空会社です。
「トランジット系エアライン」というのは聞きなれない言葉かもしれませんが…はい、私が作った造語です。意味するところは「日本からヨーロッパに向かうとき、その航空会社がいちばんの拠点とするハブ空港を目的地とする人よりも、むしろそこでトランジットしてその先のどこかに行く人のほうが多そうな航空会社」という意味です。
そう言われるとヨーロッパ方面への旅が好きなみなさんは、中東系の航空会社がいくつか頭に浮かぶかもしれません。その中でなぜフィンエアーが「雄」かというと…じつは彼らの拠点であるヘルシンキ、東京から一番近いヨーロッパの国際空港なのです。ウソだろ~と思う人は「メルカトル図法の罠」に捕らわれているのです。ぜひ国土地理院が提供する「地理院地図Globe(地球儀のように見られる地図サイト)」で確認してみてください。
しかもヘルシンキ空港は北欧やバルト三国をはじめとするヨーロッパ70都市以上に乗り継げる「ハブ空港」。それなのに2022年にはそれまで2つあったターミナルを1つにまとめました。そのおかげで日本からヘルシンキ空港に到着後の欧州各地への「最短乗り継ぎ時間」がわずか45分。つまり前の便の到着予定時間から次の便の出発予定時間まで45分あれば発券するという無茶苦茶トランジットに便利な空港および航空会社なのです。
この旅からの帰り、ヘルシンキから東京までのフライトでは、分不相応にもビジネスクラスに乗せてもらうことができました。



そしてパラグライダーのベルナルと同様に操縦桿を…というわけにはさすがに行きませんでしたが。笑
ちなみに撮影時、「もっとスマイルがほしい~」と幼児のように駄々をこねてみたら、「いやいや、これはシリアスな仕事ですから」とジョークを返しながら笑顔をつくってくれました。なんかそういう小さなエピソードも旅の楽しい想い出です。
さてせっかくのビジネスクラスでちゃんと仕事をしようと広いテーブルで原稿書きして、その後夕食。その後、「せっかくのフルフラットのベッドになる座席なのだから贅沢に寝よう」と、そのまま8時間爆睡しました。普段から夜中に目が覚めてしまうことが多い私には珍しいことです。
それほど快適だったのですが…ヨーロッパ時間の夜にしっかり寝ちゃったので、日本に帰ってから時差が。笑
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
取材協力:MOUNTOPOLIS (THE MAYRHOFNER BERGBAHNEN WORLD OF ADVENTURE)
https://www.mayrhofen.at/en/pages/mountopolis-starting-page-winter
マイヤーホーフェンエリアの「冬のアクティビティ」に特化したサイト。
Mayrhofen-Hippach holiday region
https://www.mayrhofen.at/en/
「夏のアクティビティ」も含むマイヤーホーフェンエリアの総合サイト。
オーストリア観光公式(冬のオーストリア旅行について)
https://www.austria.info/ja/inspiration/skiing-and-winter/
フィンエアー/Finnair
https://www.finnair.com/jp-ja
「日本から一番近いヨーロッパ」であるヘルシンキ経由で、欧州約70都市へ。羽田・成田・中部・関空の4空港就航。
写真/田所優季
旅行写真家、トラベル・ライフスタイルライター、ファッションデザイナー。











