歩き終えたとき、それを残念に思ってしまうというイギリスのトレイル | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2019.03.04 イギリス横断人気トレイルC2Cを歩く!

    ニューキャッスルの街中。大きなザックを背負っていると都会では浮いてしまうがこればっかりはしょうがない。人々はフレンドリーで、両替所の場所など事前に調べなくとも、親切に教えてくれた。

    「おー!やっぱりイギリス人はみんなイギリスアクセントなんだ!」

    ニューキャッスル空港から電車に乗り、人間観察をしているだけで、旅のテンションがどんどん上がる。

    C2Cのルート上の訪れる多くの村では、ATMがなかったり、カードが使えないなどといった場所も多いということで、ニューキャッスル駅に着くや否や、まずは両替を済ませる。

    次はアウトドアショップに向かい、事前に確保しておくようにお願いをしておいた bioエタノール燃料をゲット。

    スウェーデンの老舗アルコールバーナー「トランギア」と組み合わせた。バイオエタノールは、テンサイなどのバイオマスが主原料で、メタノールと違って、有毒ガスを出さないため、環境にも身体にも優しいといったメリットがある。

    「どこを歩く予定なの?」とアウトドアショップの店員がニコニコしながら尋ねてきた。

    「コースト•トゥ•コースト(C2C)だよ」と言うと、「ウォー! 僕も絶対いつか歩きたいと思っているのだけど、なかなか2週間も休暇を取るのがねー」と少し顔をしかめる。

    「ただナショナルトレイルじゃないから、トレイルのマーキングがまちまちで、特に湖水地方では霧に包まれるとナビゲーションが難しい場合もあるらしいから、くれぐれも気をつけて楽しんでね!」と爽やかな笑顔で送り出してくれた。

    そしていよいよ、電車にまた乗り、スタート地点の村St Beesを目指す。

    海を眺めながら電車の中で遊ぶ子供たちの姿が風景とよく溶け込み、まるで「世界の車窓から」のテーマBGMが聞こえてきそうだ。

    近くに座っていたアウトドアウェアを纏いザックとトランクを持った60代の女性が声をかけてきた。

    「もしかしたらあなた達もC2Cを歩くの?」

    オーストリアからやってきた定年を迎えたばかりの元教員、エリザベスも明日から約2週間かけて、一人でC2Cを歩くという。

    旅の計画はプランニング会社にお願いをし、荷物搬送はシェルパバンサービスを使い、毎晩B&Bに泊まりながら歩く予定だという。

    同じ方向に歩くから、きっとまた会うだろうね、と話しながら、St.Beesの駅で別れを告げた。

    駅の看板も味があって早速ワクワクした気分にしてくれる。

    駅から歩いて1分以内にある農家の母屋を改装したB&B Stone House Farmにチェックイン。

    St.Beesはイギリス北部のカンブリア地方にある人口1800人の小さな村。 足慣らしをかねて、しばし散策。

    家々の色味がなんともメルヘンチックだ。

    St.Bees村に7世紀頃、アイルランドからSt.Begaという美しい姫が、政略結婚から逃れようと海を渡ってきて、数々の奇跡を起こしてきたという伝説が残っている。

    900年もの歴史があるSt Bees教会。

    お腹が空き、パブへ行くと、早くも先程の知り合ったエリザベスと再会。ともに食事をし、パブのオーナー•アレンも加わり、話がはずむ。

    Coast to Coastバー。バーと言えど、一日中開店していて、お酒を飲むだけの場所というより集いの場という雰囲気で居心地が良い。

    C2Cをこれまで通算35回歩いた80歳(当時)のアレン。

    アレンは今も現役でガイドをしていて目をきらきらさせながらこのロングトレイルの魅力を語ってくれた。

    「どんなロングトレイルかと一言でいうとね、とにかく歩き終えたときに、歩ききってしまったことを残念に思ってしまう、そんなトレイルだよ」とアレンはしみじみと語る。

    宿に戻り、床につく。翌日から始まる冒険に向け、早く眠りにつかねばと思いつつも先のアレンの話が頭から離れず、ドキドキして、なかなか眠れない。

    しかし、ここのベッドはバネがへたれていて寝返りさえ打てない。 そんな流れ砂のようなマットレスに私はいつのまにか飲み込まれ、深い眠りについていた。

    写真・文/YURIKO NAKAO

    プロフィール
    中尾由里子

    東京生まれ。4歳より父親の仕事の都合で米国のニューヨーク、テキサスで計7年過ごし、高校、大学とそれぞれ1年間コネチカットとワシントンで学生生活を送る。
    学生時代、バックパッカーとして世界を旅する。中でも、故星野道夫カメラマンの写真と思想に共鳴し、単独でアラスカに行き、キャンプをしながら大自然を撮影したことがきっかけになり、カメラマンになることを志す。
    青山学院大学卒業後、新卒でロイター通信社に入社し、英文記者、テレビレポーターを経て、2002年、念願であった写真部に異動。報道カメラマンとして国内外でニュース、スポーツ、ネイチャー、エンターテイメント、ドキュメンタリーなど様々な分野の撮影に携わる。
    休みともなればシーカヤック、テレマーク、ロードバイク、登山、キャンプなどに明け暮れた。
    2013年より独立し、フリーランスのカメラマンとして現在は外国通信社、新聞社、雑誌、インターネット媒体、政府機関、大使館、大手自動車メイカーやアウトドアブランドなどから依頼される写真と動画撮影の仕事と平行し、「自然とのつながり」、「見えない大切な世界」をテーマとした撮影活動を行なっている。
    2017年5月よりオランダに在住。

    好きな言葉「Sense of Wonder
    2016 Sienna International Photography Awards (SIPA)  Nature photo 部門 ファイナリスト
    2017  ペルー大使館で個展「パチャママー母なる大地」を開催

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