南東アラスカの多島海にある港町、ケチカンは今日も雨だった | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2025.10.16

    南東アラスカの多島海にある港町、ケチカンは今日も雨だった

    南東アラスカの多島海にある港町、ケチカンは今日も雨だった
    米国アラスカ州の南東部にある街、ケチカン。著述家・写真家の山本高樹が、この街とその周辺を訪れて取材した時のフォトレポートを、全4回に分けてお届けします。第1回は、南東アラスカならではの森と海に囲まれた風景を持つ港町、ケチカンの様子を紹介します。

    森と海に囲まれた南東アラスカの町、ケチカンを行く 第1回

    アラスカ州最南端の街、ケチカンへの旅

    複雑に入り組んだフィヨルド地形を持つ南東アラスカの多島海を貫く、インサイド・パッセージ(内海航路)。ケチカンの街は、その南端近くに位置しています。人口は約8000人ほど。アラスカ州の他の地域に比べると気候は比較的温暖ですが、その一方でこの一帯は、世界でももっとも雨の多い地域の一つであると言われています。

    南東アラスカに広がる広大な温帯雨林は、地球上に残る温帯雨林の3割にあたる面積を占めているそうです。今回の滞在中も、雨が降っていない時の方が珍しいくらいで、傘とレインジャケットは常に手放せない状態でした。

    ケチカンは地形的に、周囲とは道路ではつながれておらず、この街を訪れるための交通手段は、空路と海路のみとなります。日本からケチカンを訪れる場合、米国のシアトルなどで飛行機を乗り換え、ケチカン行きの便に乗り換えるのが一般的です。

    州都ジュノーなどから、アラスカ・マリン・ハイウェイなどのフェリーに乗って訪れることもできます。また、インサイド・パッセージを行き来するクルーズ船に乗船すると、その多くがケチカンの港に寄港します。

    僕は今回、羽田からシアトルまで飛び、便を乗り換えてケチカンまで往復するという形で、現地を訪れました。便によっては、シアトルでの入国審査を経てケチカン行きの便に乗り継ぐまでの時間が非常に短い場合もあるので(今回は1時間少々)、入国審査の段取りの下調べと準備は、あらかじめしっかりしておくことをおすすめします。

    言うまでもないことかもしれませんが、観光目的での米国への入国前には、ESTA(電子渡航認証システム)の事前申請が必要です。

    ケチカンはかつて、先住民族のクリンギット族の人々がサケを獲りながら暮らす漁村だったそうです。19世紀末頃にこの地域への白人の入植が始まり、サケの缶詰工場が建設されたり、長くは続きませんでしたが金の採掘(ゴールド・ラッシュ)が盛んになるなどして、ケチカンは街として発展していきました。

    ケチカンの港に停泊していた、巨大なクルーズ船。サケを中心とする漁業が長らくケチカンの主要な産業でしたが、近年はこうしたクルーズ船の寄港地となったこともあり、観光が街の産業の中心となっているそうです。季節にもよりますが、日に数隻ものクルーズ船が、港口や沖合に停泊することも珍しくないとか。

    ケチカンの港口にある「ザ・ロック」と呼ばれる7体の銅像。実在したクリンギット族の酋長の方と、パイロットや漁師、木こり、鉱夫など、アラスカのさまざまな開拓者たちをモチーフにしたものだそうです。背後にそびえるクルーズ船が、まるで巨大なビルかマンションのように見えますね……。

    ケチカンの中心部、ダウンタウンを歩く

    ケチカンの港口の近くにある、ダウンタウンの街並をぶらぶらと歩きます。クルーズ船から一時的に上陸してきた観光客向けの、アラスカンな佇まいやネーミングの店が多いです。

    カニやサーモンを使った料理を出すレストランや、Tシャツやインテリアグッズなどを扱う土産物屋も多いですが、結構な値段の宝飾品を扱う店も目立ちます。クルーズ船に乗る人々には、リッチな客層が多いのかもしれません。

    アラスカといえば、クマ。というわけで、ダウンタウンの酒場などでも、こうしたクマをモチーフにしたデコレーションの店は多いです。

    ちなみに、アラスカ州内には各地にビール醸造所があり、こうした酒場でも、なかなかハイレベルな味のビールを飲むことができます。定かではありませんが、ゴールド・ラッシュの時代にアラスカにやってきた大勢のドイツ系移民によって、ビールの製法ももたらされたのでは? という説もあるとか。

    ダウンタウンの近くから海に流れ出るケチカン・クリークに沿って作られた、20軒ほどの古い家並が残る、クリーク・ストリート。ケチカンの街でも、もっとも観光客が多く集まるエリアで、瀟洒なカフェや土産物屋が軒を連ねています。風情のある家並をバックに、スマートフォンで記念撮影に興じる人々で常にあふれていました。

    ケチカンの街は、ダウンタウンのあたりこそ、こうしたポップな看板のお店がずらりと並んでいるのですが、中心部から1、2キロ離れると、とたんに閑散として、道路沿いにぽつぽつと民家が立ち並ぶだけになります。雨の中、そうした一帯を歩いていると、この街のもう一つの寂しげな側面が見えてくる気がしました。

    昨今の円安と、米国内での物価上昇の影響で、ケチカンに滞在中は、毎食、何を食べるのにも、うーん……と悩みに悩みながらオーダーしていました。

    でもやっぱり、見知らぬ土地を旅するなら、その土地らしい食べ物を少しは口にしたいですよね。この写真は、ダウンタウンの波止場近くにあったレストランでおひるに食べた、サーモン&チップス。やっぱりかなり値が張ったのですが、揚げたてアツアツジューシーで、味は最高でした。

    【お知らせ】

    山本高樹さんの新刊『流離人(さすらいびと)のノート』が発売されました。これまでに世界を旅した膨大な記録のなかから、今も著者の心に残る忘れがたいエピソードを選び出し、短篇のエッセイにまとめて金子書房のnoteでエッセイとして連載。

    本書ではさらに加筆修正を施し、書き下ろしのエッセイと共に一冊にまとめています。旅情あふれる写真も多数収録し、まだこの目で見たことのない場所への好奇心が湧くこと確実!

    『流離人のノート』

    2,420円(税込み)/金子書房刊(10月16日発売)

    山本 高樹さん

    著述家・編集者・写真家

    1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとその周辺地域に長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。近著に『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』(雷鳥社)、『流離人(さすらいびと)のノート』(金子書房)など。

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