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    2025.06.18

    ネイチャースポーツとトレイルの共存に欠かせないこととは? 三浦豪太氏が考えるマウンテンバイクの未来

    ネイチャースポーツとトレイルの共存に欠かせないこととは? 三浦豪太氏が考えるマウンテンバイクの未来
    プロスキーヤー、冒険家の三浦豪太氏の連載企画、第8回!
    [前回までのお話]
    BBFの聖地、手稲山で滝壺へ飛び込む"滝スライダー"を経験し、結束を強め……。

    三浦豪太の朝メシ前 第8回 マウンテンバイクの市民権について考える

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    プロスキーヤー、冒険家
    三浦豪太 みうらごうた

    1969年神奈川県鎌倉市生まれ。祖父に三浦敬三、父に三浦雄一郎を持つ。父とともに最年少(11歳)でキリマンジャロを登頂し、さまざまな海外遠征に同行し現在も続く。モーグルスキー選手として活躍し長野五輪13位、ワールドカップ5位入賞など日本モーグル界を牽引。医学博士の顔も持つ。

    みなが共存できるよう意見を交わし取り組みたい

    僕はマウンテンバイクが大好きである。最初にマウンテンバイクに触れたのは16歳のとき、ノルウェーでのスキー合宿中、目の前にある湖の周辺をコーチが持っていた「スコット」のマウンテンバイクを借りて一周した。湖といっても整備された道ではない。山道や道なき道を藪漕ぎしながら進んだ。一周するのに一日かかったが、このときマウンテンバイクの自由度と走破性にすっかり虜になった。
     
    そもそも自転車のトレーニングはスキー選手の脚力を鍛えるのに最適だ。そのため、以前はロードバイクといって舗装道路を長距離や速く走るのに適した自転車でトレーニングをしていた。しかし、マウンテンバイクに出合ってからは山の中を走る爽快感に魅せられ、購入する自転車はみなマウンテンバイクとなった。
     
    マウンテンバイクの魅力はなんといっても山に入ることだ。通常の道を漕ぐのとは違い、技術が必要でスリルがある。上りでも前後のバランスをとりながらしっかりと自分の脚力を繊細にタイヤに伝えながら登り、下りでは起伏のある細い山道を抜け、時にはタイヤを滑らせながらでも自転車をコントロールする。
     
    こうした立体的な動きと技術が、僕がやっているモーグルスキーにとても近しいと思い、リレハンメルや長野五輪に向けて札幌に住んでいたとき(1990年代のこと)、あらゆる登山道を開拓し、マウンテンバイクを楽しみながらトレーニングをしていた。

    雪辱を果たせずとも、心地よい走りに満足

    それから30年の月日がたった。僕が住んでいる札幌市中央区では、マウンテンバイクで入ることができる山道はほぼなくなっていた。札幌近辺は藻岩山を中心に三角山、砥石山など登山道が整備されている。しかしこうして整備された登山道には決まって自転車乗り入れ禁止のサインがある。
     
    そもそも、マウンテンバイクほか自転車は軽車両だ。登山道は明確な定義がなされていないものの、多くは徒歩で利用する。それでも自治体によっては登山道でもマウンテンバイクが可能な場所や、黙認されて使える場所もあった。しかし、その範囲はどんどん狭くなり札幌近隣で登山道をマウンテンバイクで乗れるところはほとんど絶滅したといってもいい。
     
    3年前のこと、朝メシ前クラブ(BBF)メンバーはタンナカ君の友人で長沼在住の長谷川拡介、通称カクスケさんと一緒に長沼町・マオイの丘の近くの馬追山(約273m)でマウンテンバイクに乗ろうということになった。マウンテンバイクライダーのカクスケさんは今でも現役選手で長沼を中心に活動している。
     
    彼はマウンテンバイクの北海道チャンピオンでもある。僕がモーグルの現役選手であった頃、実は一度だけ会ったことがある。小樽でマウンテンバイクの大会がありそれにエントリーしたときだ。僕の成績は後ろから数えたほうが早かったが、その大会で優勝したのがカクスケさんだった。
     
    タンナカ君、S氏、カクスケさんで、マオイの丘近くの駐車場に集まった。この登山トレイルは主峰・馬追山を中心に南北に広がる山林で、その尾根を中心にトレイルが広がっている。駐車場を出てすぐにいきなり急登が続く。
     
    僕はランニングが苦手だが脚力は強く自転車は強い、かつ仕入れたばかりの「スペシャライズド」のチゼル(マウンテンバイクの機種名)は登りに断然強い。「カクスケさんに30年前の雪辱を!」と意気込んだものの、あまりの急登に途中下車してしまった。
     
    なのに、カクスケさんは涼しい顔で尾根まで漕いで行き、僕は一矢報いることなく敗北。さすが現役ライダー! 負けたとはいえ、その後の馬追山のトレイルはとても楽しかった。
     
    シングルトレイルといって幅が3m弱の山道は適度にテクニカルで途中、伐採林を飛ばして抜けられたのはとても気持ちよかった。最後は木立と牧草地が広がる未舗装の道で、景色をゆったりと見ながら2時間のマウンテンバイクを楽しんだ。

    マウンテンバイクははたして悪者か

    「新天地ができた」と意気揚々と帰ったBBFメンバーだが、数か月後に残念なニュースをカクスケさんから聞いた。それは馬追山周辺のトレイルがマウンテンバイク禁止となったというのだ。なんでもトレイルを利用する人が増えたことと地元の山岳会の反対にあってのことだという。これを聞いて僕は心底がっかりした。
     
    マウンテンバイクは爽快なスポーツだ。反面、これほどスピードが出るスポーツは、やらない人にとっては脅威に感じるだろう。はたまた、雨に濡れた後では地面が泥濘み、タイヤが轍をつくってトレイルを傷めてしまう。ゆえにマウンテンバイカーはかような問題点を意識するべきである。
     
    とはいえ、僕が以前暮らしていた神奈川の逗子は、三浦半島に広がるトレイル利用に関してハイカー、トレイルランナー、マウンテンバイカーたちが集まり、共存できるよう話し合いを定期的に設けていた。協議会を結成し、協力し合ってトレイルのメンテナンス作業をし、案内板をつくっている。
     
    マウンテンバイクはスピードが出るため、ハイカーやランナーに脅威を与えないように、すれ違うときや追い抜くときは必ず自転車から降りて声がけをする。雨の日やトレイルが濡れている日はマウンテンバイクに乗らない。

    音の鳴らないマウンテンバイクはハイカーを驚かせないよう、必ず鈴をつけて存在位置を知らせるなど、「マナーや安全に対する配慮をすべし」とマウンテンバイカーに呼びかけている。その結果、これら一部のトレイルではハイカー、ランナー、バイカーが共存しそれが持続している。
     
    日本では日和見的なマウンテンバイクも世界では大きな流れになっている。特に電動式マウンテンバイク=Ebikeの出現により2032年までマウンテンバイクのマーケット年平均成長率8.9%(Global Mountain Bike Overview,Market Research Futureより)という見通しだ。

    電動自転車の楽さは日本での普及を見てもわかるだろう。実際、電動式のマウンテンバイクに乗ったが、感覚的に半分の力で坂道を登れる。こうした進化も相まって世界では山の中に気軽に楽しみを見出している人が増えているのである。
     
    ネイチャースポーツであるマウンテンバイク、トレイル共存の道は日本では広がるのだろうか?

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    トドマツなど針葉樹が植えられているが、ここは伐採されていた。馬追山の名は、アイヌ語で「マウオイ」(ハマナスのある地)にちなむ。
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    馬追山の標高約273mにある瀞台で。左からタンナカ君、S氏、そしてプロのMTBライダーのカクスケさん。
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    ひと一人が通れる程度の細い道を、精緻なテクニックを駆使しつつ走るのは爽快だ。

    (BE-PAL 2025年6月号より)

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