

WIND from ONTARIO~森の海、水の島~
#12 水に浮かぶ街、野鳥を添えて
Tomoki Onishi
撮影・文/尾西知樹
トロント在住のフォトグラファー、マルチメディア・クリエイター、カヌーイストでサウナー。オンタリオ・ハイランド観光局、Ontario Outdoor Adventuresのクリエイティブ・ディレクターを務める。カナダの大自然の中での体験とクリエイティブを融合させたユニット magichours.caを主宰。
水が集まり、人が集まる処
毎年恒例、カヌーことはじめ。麗らかな小春日和を選んで、まずはGreat Lakes(大いなる湖、五大湖)へと、挨拶に漕ぎ出す。
凪の湖を漕ぎ進むと右手に、水に浮かんでいるような大都市が見える。カナダ最大の都市、マルチカルチャリズム(多文化主義)のトロント。多種多様の民族の言語や文化を尊重して暮らす、リベラルな街。
蜃気楼のように漂う大都市を眺めつつ、湖に献酒しての一献が格別。カナダの水神様に、今年の旅の無事を祈願する。
トロントの語源は、先住民ヒューロン族の「人が集まる場所」という言葉に由来するという説がある。まさに水が集まり、人が集まる処だと心底感じ入る。
トロントの東岸から恐竜の化石のように歪な形状にのびた半島に、夥しい数の野鳥が営巣する。この異様なエリアは、かつて都市開発の埋め立ての最中に野鳥が棲み着くようになり、工事が中止。そのまま野鳥のサンクチュアリ、野鳥保護公園として残すことになった不思議な場所だ(Tommy Thompson Park)。水や人が集まる地に、鳥たちまでも集まるホットスポット。
600万人超が住む大都市圏のほとり、野鳥のコロニーとのコントラストに、自然を愛でて共生するカナディアンの心のありようを感じて、北の湖と森の原野へ今年も想いを馳せる。




見られます!
(BE-PAL 2025年6月号より)