
※価格などの情報は取材時のものです。最新情報は各施設へご確認ください。
秋田県|象潟モンゴルヴィレッジ バイガル
「高質な田舎」を掲げる秋田県に、ゲルに宿泊できるユニークなグランピング施設がある。内陸国モンゴルの文化を味わいながら、目の前に広がるのは日本海という不思議な1泊2日をレポートしよう。
モンゴルの移動式住居「ゲル」
訪れたのは秋田県にかほ市。鳥海山がそびえ、松尾芭蕉も訪れた風光明媚な地方都市だ。なかでも夕日の沈む雄大な日本海の風景が美しく、天然の岩牡蠣は夏の名産品だそう。
そんな絶景の海岸線に位置するのがグランピング施設「象潟(きさかた)モンゴルヴィレッジ バイガル」。ロシアのバイカル湖のことかと思ったが、バイガルとは「大自然」を意味する言葉だそう。
到着したら、ゲストハウスでチェックインを行なう。このゲストハウスが、レストラン・トイレ・シャワー・洗面所などの機能が集約するパブリックスペースとなる。
鍵を受け取ったら、おのおののゲルへ。車の乗り入れはできないが、駐車場・ゲストハウス・ゲルがそれぞれ至近距離にあるので困ることはない。
敷地内には、適度な間隔をあけてゲルが点在。ここだけ見ると日本の風景とは思えない!時空を飛び越えてきたような不思議な世界。
クレヨンの先端のような、円筒形の白いテント。テレビなどで見るイメージそのままだ。ちなみに私は、本物のゲルを見るのは初めて。もちろん宿泊したこともない。
茶室の「にじり口」のような小さな出入口から、身をかがめて入ると……
広々とした大空間!大人でも手の届かない天井高。直径6m、高さ約2.8mだそう。
移動式住居のゲルは、重機などのないモンゴルの大平原で、簡単に組立や解体ができることが特徴。少人数でも扱えて、軽量かつ頑丈でなければいけない。キャンプギアの考え方と同じだ。
2本の柱で骨組みを支え、放射状に梁(はり)を渡す構造が忠実に再現されている。現地では、調理と暖房を兼ねたストーブが部屋の中央に置かれるのだとか。屋根から煙突が出ている写真もよく目にする。
ウッドフェンスのような壁は、蛇腹(じゃばら)状に折りたためる仕組み。携帯性がよく考えられている。正式には羊毛フェルトで全体を覆うようだが、ここでは機能的なテント生地が張り巡らされている。
色鮮やかなモンゴル家具!伝統的デザイン「ウルジーヘー」が美しい!よく見ると一筆書きになっていて、終わらない幸福を示しているのだそう。
驚いたのが、想像以上に気密性が高いこと。先述のとおり身をかがめるほどの小さなドアがあるきりで、窓はなく、外の光をいっさい通さない。ドアを閉めてしまえば、昼か夜かもわからないほど。
考えてみれば世界の伝統住居でも、気候が厳しいほど開口部が小さく、閉鎖的な家になっている。
はじめは息が詰まるような感じがしたが、慣れてくると「おこもり感」がじわじわと魅力に。冬はマイナス30度Cにもなるというモンゴルの厳しい自然。家族が助け合って暮らしている姿が浮かぶ。
一方、40度C近くまで気温が上がる夏には天窓を開けたり、壁の周囲の裾を上げたりして通風や採光を確保するそう。ここバイガルでは、代わりにエアコンなどの空調機器で室温を管理。
ほかにも宿泊者向けのアレンジが多数ほどこされている。床には靴を脱いで過ごせるよう柔らかいカーペットが。
テレビと冷蔵庫完備で、Wi-Fiも使える。ただしトイレや洗面台などの水道設備はないため、共用設備を使うことになる。
充実の共用スペース
共用設備を見に行ってみよう。ゲルの周囲には、フカフカの芝生が広がっている。ただし火の使用は不可なので、野外調理や焚き火はできない。花火をしたい場合は、すぐ目の前の海岸へ。
敷地内には沿岸部らしい松林が残され、自由に使えるハンモックやイス&テーブルが。
間近に見えるのは日本海!乾いた平原を思わせるゲルが立ち並びながらも、松林のハンモックには湿気を含んだ潮風が吹いてくるという不思議なシチュエーション。
ゲル群の近くにも仮設トイレや水道があるが、ゲストハウスまで行けば清潔な洋式トイレや、温水の出る洗面所が整っているのでおすすめだ。
無料のランドリーがあるほか、男女別シャワーも利用可能。ボディソープなどが備え付けられている。
けれど、せっかく温泉大国・秋田に来たのなら、温泉に入りたい。宿泊者は姉妹施設の「たつみ寛洋ホテル」または「金浦温泉 学校の栖(すみか)」の温泉を無料で利用できる。チェックインのときに受け取ったタオルを持参。
おすすめは後者の「学校の栖(すみか)」!
一風変わったネーミングだが、明治7年から昭和55年まで小学校があった跡地なのだそう。現在はモダンな温泉宿に生まれ変わっている。
特筆すべきはその泉質。建物の外にいても感じられる硫黄臭と、濃く白濁したお湯にびっくり。思わず「くさい……!」と声に出してしまいそうな独特の匂いは、最後まで慣れることがないほどだった。どれだけ温泉成分が強いのか想像もつかない。
もうひとつある浴槽は北投石のラジウム泉で、これも貴重なもの。秋田県には玉川温泉という有名なラジウム泉があり、温泉療法のために全国から人が集まる。
バイガルからは「たつみ寛洋ホテル」(約1km)が近く、「学校の栖」(約6.5km)はやや離れているが、車ならぜひとも後者へ!大地のエネルギーを感じられるだろう。
グランピングの魅力は豪華な夕食
多くのグランピング施設では夕食が用意され、「手ぶらキャンプ」が可能となっている。自炊派からすると「キャンプの楽しみの半分を失っている!」と思われそうだが、自分では用意できないような豪華な食事がグランピングの大きな魅力と言っていいだろう。ここバイガルでも複数の夕食コースがあった。
食事時間は18時または18時半を選べ、宿泊客が三々五々ゲストハウスに集まってくる。私は海の幸と山の幸を両方味わえる「海鮮と焼肉セット」を予約していた。

写真は2人前。
季節により内容は異なるが、海鮮はエビ、イカ、ホタテ、牡蠣のホイル蒸しなど。

写真は2人前。
そして黒毛和牛、八幡平ポーク、ジャンボソーセージなどの焼肉。さらに前菜プレートと野菜スティックがある。
焼く、食べる、また焼く、というシンプルなコースだが、これだけの食材を個人で取りそろえるのは大変。頬がゆるむ至福の時間!

写真は2人前。
熱々で提供された「モンゴル肉まん」は、羊肉だろうか、独特の風味がした。

写真は2人前。
トレイにのった状態だとそれほど多く見えないが、焼いてみたらすごいボリューム!
加えて白米とスープはセルフサービスなので、どんな大食漢でもお腹いっぱい食べられると思う。デザートのアイスクリームも好きなだけ。大満足だ!
食事に夢中でレポートしていなかったが、レストランは海に面したガラス張りで、テラス席もある。ふと窓外に目をやると素晴らしい景色が広がっていた。
薄雲にインクを流したのかと思わせるマジックアワー!「空が染まる」とは、まさにこのこと。刻々と色を変える鮮やかな夕焼けは、絵画のようにきれいだった。
ゲルの寝心地は?
食事を終えたら、車で入浴に出かけてもいいし、ゲストハウスでシャワーを浴びたり、浜辺で花火もいい。ゲルではテレビやネットサーフィンで現代的に過ごすこともできる。毎週土曜日には馬頭琴の演奏があるそう。モンゴル衣装の貸し出し(有料)もある。
備品のひとつにプラネタリウム装置があった。たしかにドーム型の天井は投影にぴったり。天幕にゆらゆらと幻想的な光が揺れ、夢の世界のよう。
これだけ設備が整っていると、普通の住宅にいるような気持ちになるが、そこはテント。屋外の音が意外に近く、虫の声がすぐ耳元で聞こえる。明け方、枕元をガサガサッと動物が走るような音に飛び起きたら、テントの屋根を鳥が歩いた音だったという笑い話も。
素朴なモンゴルの住居と、便利で快適な近代設備とが融合した、不思議な時間が流れていく。
モンゴル風の朝食
朝は無料で軽食が提供される。パンとジュースの「ちょっとした軽朝食」と聞いていたが、モンゴルらしい「仔羊の煮込み」「モンゴル風ミルクティー」など、個性的なメニューがバイキング形式で並んでいた。
「仔羊の煮込み」は牛のテールスープにも似ているが、それよりもずっと滋味あふれるワイルドな味。クセのある羊肉は人を選ぶかもしれないが、私は異文化体験ができておもしろかった。
午前10時にチェックアウト。すぐ近くの金浦インターチェンジまたは象潟インターチェンジから高速道路で帰路についてもいいし、そのまま海沿いを山形方面に抜けてもいいだろう。
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宮城県|休暇村気仙沼大島
三陸復興国立公園に位置する休暇村気仙沼大島は、太平洋の大海原を望むキャンプ場にグランピングサイトが誕生。
テントはくつろぎのスペースもありゆったりとした空間となっている。エアベッドの用意もあるので、最大4名まで利用が可能。ファミリーにぴったりだ。

エアベッドで4人でも楽々寝られる。
テントはスタイリッシュな景観と、広々とした空間が特長の「ロータスベルテント」。グランピングに欠かせないグリルは、分厚い肉でもフタをしてじっくりと焼き上げることができる、蓋つきの「Weber Q3200」が用意されている。ほか同メーカーのピザストーンも利用可能。ストーブはシンプルなデザインで扱いやすい「SOLO STOVE」で、ソーセージやマシュマロの串焼きも楽しめる。

分厚いお肉もじっくり焼ける「Weber Q3200」

ネイチャーストーブ「SOLO STOVE」
食事は旅のスタイルに合わせ、食材なし・ありを自由に選ぶことができる。道の駅や地元スーパーで好みの食材を調達してその土地ならではのメニューを試してみるのもいいし、グリルやピザストーンでキャンプ料理を自作してもよし。食器類も全てそろっているので、最低限の荷物で楽しめるのもうれしい。
▼参考記事
福島県|マウナヴィレッジ
あのハワイをテーマにした温泉テーマパーク「スパリゾートハワイアンズ」に、グランピング施設「マウナヴィレッジ」があることをご存じだろうか?
オープンは2021年7月。ハワイの山々の大自然をイメージしており、静かにのんびりと過ごす上質のアウトドアリゾート地となっている。家族でワイワイと過ごすスパリゾートハワイアンズとは違った雰囲気だ。
そしてマウナヴィレッジは2022年7月より、エリアを拡張してリニューアルオープン。客室のテントや子どもが楽しめるアクティビティエリアが増設された。
福島県産の食材をたっぷり使ったBBQと朝食も楽しみ!
客室となるテントは新たに13張増設。うち3棟はパオのゆったりとしたデザインを取り入れた床面積28平米の大型テント「ロータスベルテント」で、ベッドが4台並べる広さを誇る。ウッドデッキも従来の2倍の104平米に広がり、テラスカウンターも設置された。
ほか丘の斜面を利用し束建したウッドデッキには、こども用ボルタリングウォールと滑り台などアスレチック設備を併設した新タイプの「ASOBIテント」も2棟増設。施設内にも天然芝を利用した全長約25mのグラススライダーやブランコが新たにオープンしている。

赤線内が拡張されたエリア。かなり広くなっている。
設備面では男女別のシャワー錬が各3ブース、さらに女性用のパウダールームを完備したトイレも新設。さらに焚き火が楽しめるファイヤープレイスも誕生し、より快適にアウトドアが楽しめるようになっている。

夕食のBBQではお肉以外にもボイルエビやムール貝、スモークサーモンが楽しめる。

朝食には福島県酪王牛乳の飲むヨーグルトやミネストローネなどもある。
夕食は福島県産の食材をふんだんに使った、こだわりのバーベキュー。各棟に設置しているバーベキューコンロで、福島牛や川俣軍鶏などを味わうことができる。朝食はパニーニやカスクートをメインに、新鮮な野菜やフルーツ、生ハム、チーズなどを用意。眺めのよいプライベートなウッドデッキで、自分好みにアレンジしながら楽しもう。
▼参考記事
福島県|sah,
都心から車で2時間半、日本三古泉にも選ばれ1600年以上の歴史を持つ「いわき湯本温泉」の温泉街から車で5分ほどの「美風の宿」の裏山に「sah,」はある。
駐車場に車を停めて裏山に向かって少し歩くと、目の前に木々に囲まれたグランピングエリアが現われる。

ふかふかのベッド。テントの中は、まるでお家のようにくつろげる。
ウッドデッキの上には、大型コットンテントにテーブルと椅子、焚き火台などキャンプに必要なアウトドアアイテムが全て揃い、テントの中には、ふかふかのベッドにこたつ、さらに、エアコンと冷蔵庫が完備。試しにこたつに入ってみると、あまりの居心地の良さに抜け出せなくなった…。

近くにはスーパーがあるので、食材の買い出しもOK!お洒落に演出して楽しむのもいい。
食事は、受付時にBBQセットを渡してもらえるので、あとは自分で焼くのみ。キャンプ初心者にとって不安な火起こしは不要。自宅のキッチンと同じように使える大型グリルがあるので、女性だけでも簡単に調理ができる。

源泉掛け流しの湯本温泉。体の芯までポカポカに温まる。
お風呂は、「美風の宿」の温泉を無料で利用可能。源泉掛け流しの100%天然温泉で、「美人の湯」とも言われる滑らかな感触の泉質。
夜には満点の星空を眺めながら、大切な人たちとの時間をゆったりと過ごそう。
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