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    2018.10.16

    ギリシャの穴場は山間部にあり! 断崖と石の家が点在する美しきザゴリ地方へ

    小学2年生の息子と今夏、ギリシャを旅した。
    ギリシャといえば、遺跡やエーゲ海の島というイメージが強い。
    しかし、穴場スポットはないかといろいろ調べているとき、おっ!と思う場所を見つけた。それは、「ザゴリ」という山間部のエリア。断崖絶壁の岩山に石造りのアーチ橋があり、壁も屋根もすべて石でできた家が並んでいるようだ。

    ギリシャ北西部、アルバニアとの国境にほど近いザゴリは、国内有数のミネラルウォーターの産地で、ザゴロホリアとも呼ばれている(“ホリア”は ギリシャ語で“村”を意味する)。緑豊かな場所と荒涼とした谷がミックスした風景の中に佇む、伝統的な石造りの建造物が印象的なところだ。この地域には46の村がある。そのうちのひとつ、メガロパピンゴに宿を取って、あちこち見て回るプランを立てた。

    ザゴリへは、車で行くのが一般的だ。
    一応、バスがあるにはあるのだが、週にたった1本のみ。しかも、地域住民が優先のため、旅行者が確実に乗れるかどうかは定かではないらしい。
    私たちは首都アテネからレンタカーで向かうことにした。

    高速道路を最高速度130キロで駆け抜ける。迫力ある山が前方にドーンと広がっているのを見ながら運転するのは、実に爽快だった。

    最寄りのインターチェンジを降りて山道に差し掛かると、道路の幅がどんどん狭くなっていく。連続するヘアピンカーブを走り抜けた先に、目指すメガロパピンゴが待っている。

    8時間かけてようやく到着。
    5つの峰を持つアストラカ山の麓に広がる小さな村は、石畳の道の両脇に石造りの家々が並んでいる。ブロック状の石を積み上げた壁と、薄くて平べったい石を重ねた屋根。塀はもちろん石垣だ。

    宿から歩いて約30分のところには、奇岩に囲まれた天然のプールがある。この「ロックプール」を目当てに、たくさんの観光客がやってきていた。秘境らしい雰囲気のザゴリに、こんなにも人がいたのか。

    岩場から飛び込む子あり、足を水に浸けた状態でおしゃべりするグループあり。遊びたくてうずうずしている息子は、Tシャツを脱ぎ捨ててさっそくダイブ。何度か飛び込みを繰り返していたが、よく見ると体が小刻みに震えている。あまりの水の冷たさに、大人は膝までしか入ることができなかった。気温30度の中をずっと歩き続けて、ようやく涼める!と喜び勇んでいたのに。

    翌日は車でちょっぴり遠出。
    ザゴリには18~19世紀にかけて熟練の石工が建設した石造りの橋が約80基残されているので、それをいくつか見学しにいく。
    最初に訪れたコントディモス橋(別名ラザリディス橋)は1764年に完成。雨の少ない夏場は川が干上がってしまうのだろうか。そのおかげで、本来なら川が流れているはずのところに立って、橋の下までしっかり見ることができた。現役の頃と比べるとほとんど往来はないが、劣化した様子は感じられない。

    ふたたび車に乗り、1814年に建てられたプラキダス橋へ。こちらは三連のアーチ橋。さっきのコントディモス橋もそうだが、少し離れたところから見ると、階段状の段差が設けられているのがわかる。滑り止めの役割を果たしているのかもしれない。石畳の路面のところどころには雑草が生えていた。

    3つ目の橋は、アスファルトの車道のすぐそばにあるココリス橋。欄干と呼ぶにはいささか低いけれど、橋のふちが石で覆われているので安心して歩くことができる。実は、先に訪れたふたつの橋を渡るとき、落っこちないかと結構ヒヤヒヤしていたのだ。

    橋巡りはこのへんで終わりにして、世界一深い渓谷として1997年にギネス認定されたヴィコス渓谷を目指す。渓谷の斜面には、かつて修道士が断崖を削って作った歩道があるのだが、幅はたったの1.5mほど。もちろん手すりはなく、足を滑らせたら深さ900mの谷底に落ちてしまう。
    高所が苦手な息子はこの道を進むのを断固拒否。展望台からの眺めだけで十分満足した、と言い張る。

    メガロパピンゴへ戻る道の途中で、ヤギの大群に囲まれて徐行を余儀なくされる。カランコロンとベルが辺りに響く中、対向車ものろのろ進んでいくしかない。
    「日本でこんなの見たことない!」と息子はこの光景に大興奮。
    ヤギが通り過ぎるのをただひたすら待っていたのだが、そこに人間の姿はない。代わりに犬が4匹、ヤギのあとを追いかけているのを見かけた。それでちゃんと統制がとれているからすごい。

    帰りに、ヴォイドマティス川に寄ってちょっとだけ水遊び。午前中、この川に架かる橋を渡ったときには、これからラフティングに出かけるであろうグループがわんさかいたが、夕方ともなると辺りは静まり返っている。
    川底がくっきり見えるほど澄んでいる水を少し高い位置から眺めると、水深の深いところから川辺に近づくにつれて、深い青からエメラルドグリーンへと色合いが変わっていくのがわかる。
    さっそく裸足になって川の中へ。先ほどのロックプールの比ではない冷たさだ。即座に川岸に戻ったが、なんだか悔しくて、ふたたび水に浸かりにいく。しばらく耐えてみたものの、頭が痛くなってきて約20秒でギブアップ。そういえば、宿の主人が水温は5度だと言っていたっけ……。

    その後にやってきた家族連れがおもむろに服を脱いで川に入っていき、そのまま泳ぎだしたときには、目が点になってしまった。

    ザゴリは美しい自然の宝庫で、今回のギリシャの旅でもっとも印象に残るエリアだった。アクセスは決してよくない。ただ、そのおかげで観光客が詰めかけることもなく、静かな環境が守られているのは確かだ。
    「ここでラフティングやってみたかったな」と、息子がぼそりとつぶやいた。そのときにはトレッキングもいっしょに楽しみたいと思うのだが、さて、いつになったら実現できるだろうか。


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    10月20日(土)、子連れ旅のトークイベントを横浜の本郷台にある「あーすぷらざ(神奈川県立地球市民かながわプラザ)」で開催します。お子さま連れ歓迎、参加無料、定員120名!という好条件で、申込受付中です。
    今回のイベントでは、小学2年生の息子によるギリシャの夏旅レポートも予定しています。イベントの詳細についてはこちらをご覧ください。
    たくさんの方のご来場を心からお待ちしております!

    ◎文=旅音(たびおと)
    カメラマン(林澄里)、ライター(林加奈子)のふたりによる、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット。単行本や雑誌の撮影・執筆、トークイベント出演など、活動は多岐にわたる。近年は息子といっしょに海外へ出かけるのが恒例行事に。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。
    http://tabioto.com

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