走るポタ電に試乗!ホンダ「N-VAN e:」で叶える電動アウトドアライフ
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    2024.11.19

    走るポタ電に試乗!ホンダ「N-VAN e:」で叶える電動アウトドアライフ

    走るポタ電に試乗!ホンダ「N-VAN e:」で叶える電動アウトドアライフ
    2018年に登場以来、抜群の積載性と使い勝手の良さから、ビジネスやアウトドアで支持されている軽商用バンの「ホンダN-VAN」。その人気モデルをベースに、一充電あたりの航続距離245kmを実現したバッテリーEV(BEV。以下、EV)としてラインアップされたのが「N-VAN e:(エヌバンイー)」です。

    ガソリン仕様で高い評価を得ていた積載性や使い勝手の良さ、そして基本フォルムを損なうことなく、EVならではの魅力をトッピングしています。

    ※記事中の写真はすべて、施設の使用許可を受けて撮影しています。

    積めて寝られる人気軽バンが電気自動車になって登場!

    「N-VAN e:」ってどんなクルマ?

    愛らしい丸型LEDヘッドライトを採用した「e:FUN」は快適装備も充実。フロントグリルなどに廃棄バンパーを再生したサステナブル素材を採用して、より環境にやさしいEVイメージを際立たている。

    2040年までにEVFCEV(燃料電池車)の販売比率をグローバルで100%にする」という目標を掲げるホンダにとって「N-VAN e:」は、EV戦略の先頭を走る重要な1台です。

    開発のベースは、ホンダ特有の「センタータンクレイアウト」を採用し、低くフラットな床と広い荷室と、抜群の使い勝手を実現してアウトドア派にも指示される軽商用バンの「N-VAN」。EV化にあたり、これまでガソリンタンクがあったスペースに薄型駆動用バッテリーやIPU(インテリジェントパワーユニット)などを移植。実用性にはほとんど影響していません。

    荷室の奥行き、左右幅、荷室高などはほぼ変わらず、最大積載量は300kg(エンジン仕様の4WDモデルと同じ)を実現。クロスカブ110も積載できるほどの広さは健在です。

    全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,960mm、ホイールベース2,520mmで、最小回転半径4.6m、車両重量は1,140kg。エンジン仕様(FUNターボ/FF)との比較で全高が15mm高く、重量はバッテリーなどによって170kg増加。

    グレードは4種類。ビジネスでの積載性を最優先に考えたシングルシーター仕様の「eG」と、運転席の後ろに補助用のリアシートを備えた2人乗りタンデムシート仕様の「eL2」、パーソナルユースには4名乗車可能なグレード「eL4」と「eFUN」があります。

    eL4」はヘッドライトの形状が四角いハロゲンヘッドライト仕様(¥2,699,400)」で、「eFUN」は丸型のLEDライトを備え、アウトドアシーンでより存在感を示せる仕様です(2,919,400円)。

    四角いハロゲンヘッドライトの「e:L4」。

    EV化されても積み込むことにこだわった

    4名乗車時の荷室の床の奥行き82cm、もっとも狭い床の幅が91cm、荷室高137cm、開口部の高さ130cmを実現。これだけでも十分な積載容量。

    EV化を果たしても、「センタータンクレイアウト」の効果は絶大です。大きな駆動用バッテリーやIPUなどを無理なく移植でき、荷室床面地上高(地面から床までの高さ)は15ミリほど高くなっていますが、実用的にはまったく気にならないレベルです。

    リアシートを前方に折りたたみ2名乗車にすると、床の奥行きは150cmに。メーカーの測定値では、長さ380mm×幅310mm×高さ280mmの段ボールを71個積載できる。

    助手席を折りたたみ足元に収納すると、床の奥行きは251cmに。助手席の足元の奥まで測定した荷室長は263cmあり、手足を伸ばして車中泊ができる。

    さらに助手席側ドアと左側のスライドドアを開ければ、センターピラー(開口部の中央にある柱)のない大きな開口部が現れます。

    大型のテールゲートの実用性の高さと、左側のこの大きな開口部、そして自由度の高い動線があれば、大きめのキャンプギアなどの積み下ろしに苦労することはありません。

    センターピラーのない左サイドの開口部。自由度の高い動線が確保され、荷物の積み込みなどでもストレスはかなり軽減される。

    助手席の足元と後方に2個ずつ、さらに荷室フロアに4個、合計8個のフックを装備。タイダウンベルトや紐などをかけて自転車や大きな荷物などをしっかりと固定して運べる。

    助手席の背もたれを前方に倒すと作業スペースやテーブルとして使える。

    そして運転席以外のシートには、背もたれを前に倒してシートを座面ごと床に収納できるダイブダウン機構が付いています。すべて収納すれば車中泊には最適といえるほどのフラットな床面の空間へと変身。

    オートバイや自転車だけでなく、タープやテントのポール類や脚立といった長尺物も、スムーズに積載可能。“積む”に徹底した使い勝手は、やはりアウトドアには強力な武器になります。

    運転席の背もたれの後ろにはリアシートのヘッドレストを2個収納できるポケットを装備。容量があるため便利な収納ポケットとしても使える。

     簡素にしてツール感溢れる内装デザインがアウトドア気分を盛り上げる

    水平基調という基本デザインはそのままに、シフトがレバー式からボタン式へ、ステアリングは3本から2本スポークに変更されている。アイポイントは高く、広い視界が確保されている点は変わらず。

    基本的なフォルムも大きく変わったところはありません。外観でEVらしいといえばリサイクル素材の樹脂製フロントグリルに「普通」と「急速」の充電ポートを備えている点。なお、このグリルはホンダ車の廃棄バンパーをリサイクルして作られた素材です。

    外観に対し、EV化によってインテリアは少し雰囲気が変わりました。操作パネルからシフトセレクトレバーがなくなり、シビックなどに採用されている「エレクトリックギアセレクター」に変更。全体としてすっきりした印象です。

    ホンダの軽としては初採用となったエレクトリックギアセレクター。上からP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)/B(減速)といったボタンが独立して並ぶ。

    特徴的なのはコンテナから発想を得たという「縦型のビードデザイン」の樹脂パネルが、強烈に自己主張している点です。簡素で実用に徹したワイルドな内張りのデザインと素材感は荷室の壁へと連続し、車内全体がまさにコンテナの中にいるような独特な雰囲気に包まれます。

    運転席の快適性を重視した設計。背もたれは上部で体を支え、シートクッションは骨盤の動きを抑える形状。姿勢が安定して疲れにくい。

    ヘッドレストを備えたシンプルな作りのリアシート。短時間なら日常での移動でもリラックスして過ごせるが、エマージェンシー用と考えた方がいいかも。

    同時に縦溝デザインと素材は、荷物の積み下ろしによるキズを防いだり、目立たなくする効果もあります。まさに「徹底して使い倒してくれ」と主張するかのような作り込みによって独特のツール感を醸し出し、アウトドア気分を盛り上げてくれます。

    コンテナをイメージしたという縦溝デザインを採用。ドアポケットやパワーウインドウスイッチを無くしたことでドア自体が薄くなり、居住性も向上。

    専用のカーナビアプリで電欠の不安を解消

    先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を4人乗りグレードに標準装備。1~2人乗りグレードには、機能を限定した運転支援機能が付く。

    運転席はアイポイントも高く、スクエアなボディのお陰もあり、見晴らし良好。シフトセレクターのDボタンを押し、足踏み式のサイドブレーキを解除してスタートすると、最高出力47kW64PS)のモーターは低速からの力強い加速感で、スムーズに加速します。

    ただし、モーター自体は静かでも商用バンならでは走行音や風切り音はそれなりに感じます。このあたりは乗用車として仕上げられたEVの静粛性には適いません。それでも早朝のキャンプ場や住宅街などでエンジン音を気にせず走れるのはうれしいポイントです。

    また、重い駆動用バッテリーを積むことで車両重量は170kgほど増加していますが、むしろそれが低重心となり、コーナリングでの安定感が向上。左右の揺れ、加・減速時の前後の揺れ、回生ブレーキングでの前のめり感、そして飛び跳ね感などは少なくなって乗り心地は、しっとりとしています。

    一方で気になるのは245kmWLTCモード)という一充電あたりの走行距離です。実走行距離をカタログ値の80%とすれば、196km。搭載した29.6kWhのバッテリーは50kWの急速充電施設で、充電残量警告灯が点灯してから充電量80%まで約30分かかります(気温など諸条件により差があります)。

    ホンダではそうした不安に応えるため2024年の冬からEV専用のカーナビアプリ『EVカーナビ by NAVITIME』との機能連携を実施予定です。これはEVの車種ごとの航続距離予測を算出し、バッテリー残量の少なくなるポイント付近にある充電スタンドを自動で経由地に追加して、ルート検索を行う優れもの。これなら電欠などの不安も少し解消され、遠方のキャンプ施設を目指せそうです。

     貯めた電気を取り出すだけでなく、外部電源を車内に引き込むこともできる

    向かって右が急速充電用ポート、左が普通充電ポート。出力6kWの普通充電なら、満充電まで約4.5時間。

    効率的な充電をおこなうことでN-VAN e:は“走るポタ電”として能力を存分に発揮できます。ホンダアクセスの純正アクセサリー、AC外部給電用の「パワーサプライコネクター(29,700円)」で車両の普通充電コンセントから最大出力1,500Wの電気を取り出し、車外で家電などが使えます。

    助手席側の前面パネルと荷室の壁の2か所にDC12Vのアクセサリーソケットを装備。

    車内で家電などを使う場合は「外部電源入力キット(37,400円)」が便利。キャンプ施設などの外部電源から車両に電力を取り込むことで、車内に装備されたAC100Vのコンセントから最大出力1,500Wの電気を取り出せます。夜間の車中泊などでホットプレートや電気ケトルなどの家電も使えます。

    別売りの「AC外部給電器(29,700円)」を使えば、屋外でAC100V、最大出力1,500Wの電気が取り出せる。

    「AC外部給電器」を差し込んだ状態。

    夜間などにクルマの窓やドア、テールゲートを閉めたまま、車内で家電を使いたい場合は、別売りの「外部電源入力キット(37,400円)」が便利。オートキャンプ場やRVパークなどの外部電源設備から、キットに付属のケーブルを使ってリアバンパー左側にある差し込み口へ電気を引き込こめば、車内でAC100V、最大出力1,500Wの電気を利用できる。

    「外部電源入力キット」を装備することで、これまでのDC12V、最大180Wのアクセサリーソケット(上)に加え、AC100Vのコンセントが装備できるように。

    「オール電化アウトドア」も夢じゃない

    別売りで用意されている用品を満載して、車中泊可能なアウトドア仕様に仕上げた一例。ビジネスだけでなく、アウトドア派も満足できるオプショナルグッズが揃う。

    このように、積載性に優れ、広いラゲッジを自在にアレンジできるN-VAN e:は、用途や目的に合わせてアウトドアギアを柔軟に積載できます。こうした自由度の高い実用性に対応するため、荷物をかけるフックや棚などの専用パーツも揃っています。

    そして「走るポタ電」としての使い勝手を、より向上させる電化用アクセサリーも豊富。外遊びやキャンプでアクセサリーを活用して、ピュアEVならではの静かでクリーンな「オール電化アウトドア」を楽しんでみては?

    【ホンダN-VAN e:(eFUNFF)】

    •  全長×全幅×全高=3,395×1,475×1,960mm
    • ホイールベース:2,520mm
    • 最小回転半径:4.6m
    • 最低地上高:165mm
    • 車両重量:1,140kg
    • 駆動方式:前輪駆動
    • モーター:交流同期電動機
    • 最高出力:47kW64PS
    • 最大トルク:162Nm
    • 一充電走行距離:245kmWLTCモード)
    • 車両本体価格:¥2,919,400~(税込み)

     問い合わせ先
    ホンダ
    TEL:0120-112010

    佐藤 篤司さん

    自動車ライター

    男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行なう自動車ライター。著書『クルマ界歴史の証人』(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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