来日したアリスの目線で日本の食を知る映画『食べることは生きること ~アリス・ウォータースのおいしい革命~』
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    2024.09.14

    来日したアリスの目線で日本の食を知る映画『食べることは生きること ~アリス・ウォータースのおいしい革命~』

    来日したアリスの目線で日本の食を知る映画『食べることは生きること ~アリス・ウォータースのおいしい革命~』
    1971年、カリフォルニア州バークレーにオープンした、地域の農家と食べ手を直接結ぶフランス料理店「シェ・パニース」。そのオーナーシェフが、アリス・ウォータースです。

    この店の営業姿勢はのちに‟地産地消”‟ファーマーズ・マーケット”というコンセプトに発展、アリスは‟オーガニックの母”と呼ばれるようになり、エディブル・スクールヤード(食育菜園)の創始者としても知られます。

    そんな彼女が23年秋、『スローフード宣言― 食べることは生きること―』(海士の風)の出版1周年を記念して来日しました。人びとの健康、そして社会や地球を‟健康”するには?--。日本でカリフォルニアで、“Delicious Solution” (おいしい解決策)を探求する姿を記録したドキュメンタリー映画『食べることは生きること ~アリス・ウォータースのおいしい革命~』をご紹介します。

    写真はアリス・ウォータース。

     

    海士町の小学校で、学校給食についての授業に参加するアリス。

    日本の小学生と一緒に給食を食べ、農家の人々と対話をして

    島根県隠岐諸島にある海士町、京都府亀岡市、徳島県神山町。アリスは小学生と一緒に給食を食べたり、教育関係者や農家の人びとと対話したり、全国からエディブル教育の実践者を集めた「スクールフードフォーラム」に参加します。

    まずはアリスの佇まいに心惹かれます。彼女はいつでも静かにほほ笑むようにして人びとの話に耳を傾け、威圧感なしに相手の目をまっすぐ捉え、確信を持って語ります。

    その言葉は難しかったり押しつけがましかったりすることはなく、いつでもシンプル。なのに強いエネルギーを感じさせます。通訳を介しても心に直接響いてくるのがわかりますし、彼女を前にすると、こちらの想いも意図しないものに歪められることなく届くはずだと思えます。簡単に言えば、一瞬で人の心を捉えられるのです。

    徳島県神山町で開かれた「ファーマーズミーティング」

    映画にこんなシーンがあります。全国から農家が集まり、困りごとや大事な価値観を共有するイベント「ファーマーズミーティング」でのこと。多品種の野菜を育てる農業を営む若い夫婦が「ビジネス的に難しくて…」と語ると、アリスは「必ず誰かが見ていて、支えてくれるようになる。あなたの仕事は本物だから。もう少し頑張って」と励まします。誰かの言葉がストンと落ちて心をつかむ、まさにそんな瞬間で、若い夫婦と一緒に涙ぐみそうになります。

    そんな彼女が「私は長い間、日本の文化を尊敬してきました。なぜって、日本の方々は自然と繋がっている。そう感じるからです」というとき、まるで自分が褒められているようで誇らしい気持ちになります。そうして映画を通して、アリスと一緒に日本の各地でいま起きている‟おいしい革命”を目の当たりに。食を通して「世の中をちょっといい方に変えていきたい」と考える人びとの取り組みが紹介されます。

    「暮らす宿 他郷阿部家」の松場登美さんと。「改めて、食は人を繋げる力がありますね」と松場さん。

    京都市左京区にある日本料理店「草喰なかひがし」、島根県の石見銀山で、築235年の武家屋敷を暮らしながら改修した「暮らす宿 他郷阿部家」。日本でもそれぞれに己の哲学を確立し、それぞれのやり方で静かな‟革命”を起こす人びととの交流を図るアリス。まるで逆輸入のように、アリスを通して、日本文化の先進性やら奥深さに気づかされることになるのです。

    作品データ

    映画『食べることは生きること ~アリス・ウォータースのおいしい革命~』(配給:ユナイテッドピープル)

    ●監督・撮影・編集/田中順也 ●上映情報/https://unitedpeople.jp/alice/
    ©2024 アリス映像プロジェクト/Ama No Kaze

    ※12月10日はスローフードに関わる生産者、食のコミュニティ、料理人などが世界中で祝賀する「テッラ・マードレ・デー」。この日に合わせ、この映画の上映会開催を呼びかけているそう。
    詳細はこちら

    文/浅見祥子

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