
CINEMA 01
巨大な波と内なる怪物に立ち向かう、あるサーファーの戦い
『フェイシング・モンスターズ』
(配給:レイドバック・コーポレーション)
●監督・脚本/ベントレー・ディーン
●7/25~ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田、アップリンク京都ほか全国順次公開
©2021 BEYOND WEST PTY LTD AND SCREENWEST (AUSTRALIA) LTD

オーストラリア、ピンク色の湖に大の字で浮かぶ男、カービー・ブラウン。海底からほとんどの水が隆起し、爆発するようにブレイクする波、南極海のスラブ・ウェーブに挑む姿を追う。
まずは、彼が追う波の巨大さと暴力的な威力に口あんぐり。しかも海底の岩が透けて見え、波に乗り損ねたら? と想像して身震い。そうして波の内側の景色、海に落ちて耳がキーンとなる静寂と、サーファーのスリルと興奮を追体験する。
一方命がけの恐怖で心のバランスを保つ彼の危うさにも触れる。家族を得て幸福を味わうも、心を突き動かす挑戦から逃れられない。
なぜ命がけで挑むのか? 登山と無縁の人間が登山家に抱くのと同じ疑問が浮かぶ。理解はできない。でもじーんとする自分がいる。
CINEMA 02
巨大地震と豪雨災害。それでも人は生きる。能登復興支援映画
『生きがい IKIGAI』
(配給:スールキートス、配給協力:フリック)
●企画・脚本・監督/宮本亞門
●出演/鹿賀丈史、常盤貴子、小林虎之介、津田寛治、根岸季衣
同時上映:ドキュメンタリー『能登の声 The Voice of NOTO』
●監督・編集/手塚旬子
●石川先行公開中、7/11~シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
©「生きがい/能登の声」フィルムパートナーズ

2024年元日、能登半島地震発生。避難所で〝黒鬼〟と呼ばれて人を遠ざける老人。半壊した自宅に暮らし始めるも、奥能登豪雨を経て生きる気力をなくしていた。そこに、ボランティアの青年がくる──。
宮本亞門による短編映画。地元の協力、被害の生々しい街並み。つくりものでない力が映像に刻まれる。
同時上映は、能登のいまを伝えるドキュメンタリー。復興は遠い。でも人は、確かに前を向いて生きている。
※構成/浅見祥子
(BE-PAL 2025年8月号より)