街中の小自然を堪能!静岡・三島「源兵衛川」そぞろ歩きのすすめ
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    2024.03.14

    街中の小自然を堪能!静岡・三島「源兵衛川」そぞろ歩きのすすめ

    街中の小自然を堪能!静岡・三島「源兵衛川」そぞろ歩きのすすめ
    どかーんと開けた「大展望」、どこまでも続く「大地」。そんな大自然ももちろん素敵ですが、街中にあるなにげない「小自然」にも魅力を感じます。

    今回は東海道新幹線の停車駅でもある三島で見つけたそんな「小自然」を紹介します。

    市民や行政の力できれいな川に復活

    こんにちは。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。普段どでかい景色に見慣れているせいか、日本に一時帰国した際に出会う細やかな風景に情緒を感じます。

    さて今回訪れたのは静岡県三島市。人口10万人強ですが、新幹線停車駅もあることから、なかなか立派な繁華街もあります。

    「源兵衛川(げんべえがわ)」はその中心部付近を流れる1.5キロの農業用水。と言っても今は住宅街の真ん中を流れています。

    水源はなんと「富士山からの湧水」。そう聞くと、ミネラルウォーターのテレビCMなどに出てくるような清らかなせせらぎをイメージするかもしれませんが、1960年代以降、雑排水が流れこんだり、ゴミが投棄されたりして、環境が悪化したようです。1955年から1973年の高度経済成長の時代は環境よりも経済が優先されることが多かったですからね。

    源兵衛川の波乱万丈の歴史を伝える看板。

    そういえば東京の東急池上線も、かつて五反田駅と大崎広小路(ひろこうじ)駅の間で目黒川の上を渡るとき強烈な悪臭がしたなあ。今ではずいぶん改善されたと感じるのですが、ネット上では「まだまだ」という声も多いようです。

    そんな感じで一時期はドブ川状態だったという源兵衛川、1983年には蓋をして暗渠化する話まで出たそうです。

    流れが変わったのは1992年。市民団体や行政が協力して、川の再生に向けて動き始めました。そして2016年には「世界かんがい施設遺産」というものにも登録されるまでに復活。そして今では市民の散策路で、憩いの場になっています。

    その「源兵衛川」沿い……というか、ときには川の中の飛び石を渡る散策コースを紹介しましょう。

    変化に富んだ水辺の遊歩道

    スタートは三島駅から伊豆箱根鉄道駿豆線(すんずせん)で一駅の、三島広小路駅から東に50メートルほど進んだ地点。「うなぎ桜家」の脇から遊歩道に入ります。なんだか知らないけど、さっきの大崎広小路駅と「広小路」つながりですね。

    最初の100メートルくらいは川を下に眺める普通の遊歩道。でも右にわかれる分岐点で階段を降りると「水辺の散歩道」になります。水面との距離がググッと近くなり、ここからが俄然おもしろくなります。

    水面に近い石畳風の道を歩いたり。

    こんな木道を進んだり。

    飛び石で川を横切ったり。

    はい、遊歩道の路面にあれこれ変化をつけて、楽しませてくれます。さすがです。さらに……。

    民家の軒先を通ったりします。

    生活しているみなさんの邪魔にならないように、このあたり静かに歩きたいですね。

    水もめちゃくちゃきれいです。

    橋も情緒があって楽しいです。

    そして再び木道。

    コンクリートよりも維持費がかかるというか、しばらくしたら架け替えとかをしなければいけないと思うのですが、それでも歩く人たちをあれこれ楽しませようとする努力。頭が下がります。

    そしてここはただの遊歩道ではないんです。場所によっては夏場には足を浸したり、水遊びをしたりもできるようになっているそうです。

    「借景」と「鉄道」の楽しみ

    さてこの源兵衛川沿いの遊歩道、途中でいくつか橋を渡るのですが、その「欄干」の部分に小さな穴が空いているところがあります。

    で、それを利用して鎌倉・明月院の「丸窓の借景」的な写真を撮ってみました。

    撮っているときは気づかなかったのですが、左に釣り鐘が見えて風情があります。

    そしてもう一つの楽しみが「伊豆箱根鉄道駿豆線」の線路沿いを歩く部分もある点。この駿豆線、その名の通り、駿河の三島と伊豆の修善寺を35分ほどで結びます……と書いたところでふと調べ直してみたら、三島は駿河ではなく伊豆に属するとのこと。

    ではなんで駿豆線なのかというと、かつては駿河の沼津と伊豆の三島を結んでいた路線だからといった理由らしいです。

    三両編成。これまた冒頭で書いた東急池上線と共通。笑

    そしてこんな黄色い車両も。

    この黄色の車両はむか~しの西武線のものじゃないかなあ、譲り受けたのかなあと思っていたら、伊豆箱根鉄道は西武鉄道の子会社とのこと。東京に長いこと住んでいた人間からすると、西武鉄道は「池袋と西武新宿を拠点にして、東京の西側に路線を張りめぐらせている」というイメージがあるので、なんだか不思議な感じがします。

    さて、ここで少し寄り道。遊歩道から東に折れて「三島メディカルセンター」の横を通り過ぎ、道を渡った右側から始まる小道を50メートルほど進むと「雷井戸」という湧水の井戸があります。

    この場所自体も風情がありますし、手押し井戸ポンプのハンドルを上下にキコキコさせる昔ながらの体験もできます。

    この下で水が湧いています。

    正月に見つけた「ちいさい秋」

    私がこの源兵衛川の遊歩道を訪れたのは13日。冬だったのですが、こんな風景も見ることができました。

    一本だけの紅葉です。

    そしてこちらは黄葉。

    もしかしたら一年中こういう色の品種なのかもしれませんが、なんだか真冬に秋を見つけた気分になりました。

    「ちいさい秋みつけた」という童謡がありますよね。なんでもない小さなものに季節の移り変わりを見つけて喜びを感じる。あれこそが「日本の風情」というか「日本人の心」だと思うんですよ。「侘び寂び」の世界と申しますか、「もののあはれ」と言いますか。

    山を覆いつくすほどの錦繡にも圧倒されますが、こんな隣に佇む彩りも風流です。だからこんな「ちいさな秋」を見つけるととてもうれしい気分になれます。

    そして紅葉や黄葉は秋への「プチタイムスリップ」ですが、この源兵衛川遊歩道全体は高度経済成長前の古き良き日本にタイムスリップした気分になれます。

    SNS映えはしないけど、すごくいとおしい風景がありました。

    自然はなくすのは簡単だけど、取り戻すのはむずかしい。そんなことを改めて感じました。だからこそ源兵衛川をここまで再生させ、今も保っている人たちに拍手を送りたいです。

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター
    (海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係

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