世界で最も過酷なフットレース「バッドウォーター135」の全コースを(クルマで)走破! | 海外の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2023.12.07

    世界で最も過酷なフットレース「バッドウォーター135」の全コースを(クルマで)走破!

    バッドウォーター135のスタートから約5キロ地点。

    バッドウォーター135のスタートから約5キロ地点。

    毎年7月にカリフォルニア州で開催される「バッドウォーター135」は「世界で最も過酷なフットレース」と呼ばれています。

    北米大陸で最も低い位置にあるデス・バレー国立公園内のバッドウォーター(海抜-86m)からスタートし、アメリカ合衆国本土最高峰ホイットニー山の登山道入口(海抜2,550 m)までの全長135マイル(217 km)。途中に2つの山越えがあり、最後の約30㎞はゴールまでずっと登り坂で、累積標高差は4,450mにも達します。

    コース地図(グーグルマップで作成)。

    コース地図(グーグルマップで作成)。

    箱根駅伝の往路・復路を合わせた距離とほぼ同じで、累積標高差は4倍以上。それをたったひとりで走るわけですから、それだけでも人間業ではないと思う人も多いでしょう。

    しかし、世界にはこれよりも長く険しいウルトラマラソンはいくつかあります。バッドウォーター135が最も過酷だと呼ばれる理由は、その凄まじい暑さにあります。

    デス・バレーは、世界観測史上最高気温(1913年9月10日、摂氏56.7度)を記録したことがあります。地上で最も暑い土地です。そこを、わざわざ1年で最も暑い7月に走るのです。日中の最高気温が摂氏50度を超え、夜になっても30度を下らないことも珍しくありません。

    私は100㎞レースを完走したことが2回あります。一応はウルトラランナーの端くれです。しかし、バッドウォーター135はそんな「普通の」ウルトラマラソンとはまったく別の次元にあるとしか思えません。正気の沙汰ではない、が偽らざる感想です。

    2023年のバッドウォーター135では100人のランナーが挑戦し、89人が完走しました。3位に入賞した日本の石川佳彦選手は、過去に2回(2019年と2022年)の優勝歴があります。

    このコース全行程を車で走ってみました。涼しい11月でしたので、レース中の酷暑は想像するしかありませんが、ただ走ることだけを考えても言葉を失うようなコースです。

    バッドウォーター ~ ストーブパイプ・ウェルズ

    スタートしてからの最初の約75km(!)は、このレースでは最も平坦な部分です。最も低い地点から走り始めるわけですので、全体的には登り基調ではありますが、ほとんど傾斜は感じません。砂漠の中の一本道です。

    ビジターセンター前の気温計は人気の記念撮影スポット。

    ビジターセンター前の気温計は人気の記念撮影スポット。

    このあたりはデス・バレー国立公園内のいわばメインな観光道路で、所々に見どころスポットも現れます。もっとも、ランナーたちは夜中に走り始めますので、その景色を見ることはないでしょう。

    もし、ここで折り返してスタート地点に戻る150kmのコースだったとしたら、かなりきついウルトラマラソンで済むはずです。私も自転車でなら、ほぼ同じ道のりを往復したことがあります。バッドウォーター135の狂気に満ちた(としか私には思えないのです)部分はここから始まります。

    ストーブパイプ・ウェルズを越えた地点から始まる登り坂。

    ストーブパイプ・ウェルズを越えた地点から始まる登り坂。

    ストーブパイプ・ウェルズ ~ タウンズ・パス ~ パナミント・パス

    コースは、ここから急に山岳レースの様相を帯びます。夜も明けて、凶暴な太陽が姿を現しているはずです。山岳とは言っても、ランナーたちを強烈な日差しから守る樹木はどこにもありません。ただひたすら長く、険しく、気の遠くなる登り坂がはるか彼方まで続いているのです。

    最初の峠であるタウンズ・パス(海抜1,511m)が、スタートからちょうど100㎞くらいです。そこからの30㎞くらいは下り坂ですが、その後にもうひとつの山越えが待ち構えています。2つ目の峠であるパナミント・パス(海抜1,615m)までは30㎞を超える長い登り坂です。

    タウンズ・パスの標識。

    タウンズ・パスの標識。

    パナミント・パス ~ ローン・パイン

    2つ目の山越えを終えると、長い下り坂を降りていきます。道の両側はふたたび広大な砂漠の景色に戻り、視界も広がります。そして何より、前方にはゴールのホイットニー山を含むシエラネバダ山脈が見えてきます。

    前方に見えるのがシエラネバダ山脈。

    前方に見えるのがシエラネバダ山脈。

    この時点で、走行距離はすでに150㎞を越えています。レースもいよいよ後半に入ったと言えるわけですが、極限状態にあるに違いないランナーたちは、ここからまだあと約70㎞も走らないといけないのです。

    ローン・パイン ~ ホイットニー山登山道入口

    コース中、唯一の町であるローン・パインのメインストリートを通過すると、レースは最後の、そしてもっとも険しい登り坂に入ります。

    距離にして26.42km、獲得標高は1,438m。この部分だけを取り出しても、けっして容易な道のりではありません。それを、灼熱地獄のなかを一昼夜以上かけて約200㎞を走ってきたランナーが登るわけです。その苦しさは私の想像力が及ぶところではありません。

    ゴール目前、ホイットニー山キャンプ場の看板。

    ゴール目前、ホイットニー山キャンプ場の看板。

    多くのランナーは、チームのメンバーたちと横一列に並んでゴールします。彼らがいかに超人的なランナーであっても、バッドウォーター135はひとりでは走ることはできません。スタートからゴールまでを車で伴走し、補給などのサポートや、ときには一緒に走ってきたメンバーたちとのチームワークの成果でもあるのです。

    2023年度の優勝ランナーのタイムが21時間44分、最も遅くゴールしたランナーのタイムは46時間34分でした。最年少ランナーは18歳、最高齢ランナーは71歳。40代から50代までが大半を占めます。

    この世界で最も過酷なフットレースに挑戦してみようかな、と考える勇者は下の公式ウェブサイトで参加資格などの詳細をご覧ください。2024年度レースは72224日に開催されるそうです。

    バッドウォーター135公式ウェブサイト: https://www.badwater.com/event/badwater-135/

    私が書きました!
    米国在住ライター(海外書き人クラブ)
    角谷剛
    日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

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