平日に悠々歩く世界遺産「熊野古道」
子どもの春休みと連休をからめて「熊野古道」をキャンピングカーで旅してきました。
「熊野古道」についてざっくり説明すると、かつて皇族から庶民にいたるまで多くの人々が熱に浮かされたように紀伊半島の霊場を目指したそうです。太平洋に突きだした紀伊半島の山々は、「神が鎮まる特別な地域」として考えられていたからです。
旅がつらいほどご利益があるといわれ、人々はさらなる山の奥へと来世の幸福を祈って分け入りました。それがいつしか参詣道となり、「熊野古道」と呼ばれるようになったそうです。
そんな熊野古道は、三重・奈良・和歌山の3県にまたがる険しい自然と歴史的背景があり、「紀伊山地にある3つの霊場と、そこを結ぶ参詣道」は、2004年に世界遺産として登録されました。
かつて熊野を目指す人々が、お互いを助け合い、いたわり合いながら蟻の行列のように続き、「蟻の熊野詣」という言葉ができたそう。それはなかなか子連れにはハードルが高いので、今回のメインディッシュ=熊野古道は混雑を避けるため、あえて平日を選びました。
アクセス良い人気ルート「発心門王子~熊野本宮大社」をチョイス
「熊野古道」とひとことでいっても紀伊半島の広範囲にあります。「さて、どこ歩こう?」。わが家は4歳と9歳の男の子と10歳のボストンテリア、さらには文句の多い3つ下の夫(笑)がいます。いろんなところに気を遣ってばかりの旅人(私)は、毎回、ルート決めに大いに悩むわけです。
国井的ルート選び3か条
- 熊野古道「らしい」ところ
- そんなに「ハードではない」道
- でも「達成感」が味わえるルート
なかでも毎回頭を悩ませるのが「クルマ」をどうするかです。「行ってこい」できる場所が希望。願わくば同じ道をたどらず「周遊」できるルートだと最高。調べていくうちに、ばっちりのコースがありました。人気の「中辺路(なかへち)」という熊野古道らしいエリア。そのなかでも、発心門王子(ほっしんもんおうじ)から熊野本宮大社に繋がる道のりが人気らしい。
なんでもクルマを置いた駐車場からバスに乗り、下車した場所からふたたびクルマまで戻れるというのです。距離は6.9kmとまぁまぁありますが、キツい上りはほぼなく、ゆるやかに下るようです。ここに決まり!
本宮大社バス停からスタート
「本宮大社前」バス停から「龍神バス」に乗ります。8時20分を逃したら、次は1時間後。予定が大幅に狂います。緊張気味に目覚めた車中泊の朝、まずは本宮大社前のバス停に向かいました。そこは広い駐車場にもなっているので、キャンピングカーはココに。バスや乗客の様子を車内からうかがいつつ、朝食をサクッといただきました。
高菜の漬け物で大きなおにぎりを巻いただけのシンプルな郷土料理「めはりずし」。その大きさゆえ、「目を見張るように口を開けるから」とか、「目を見張るほどにおいしい」とか、はたまた高菜の漬け物を「おにぎりに目張りをするように包みこむから」など、そのご馳走の名前の由来にはいろんな説があるようです。
もともとは忙しい漁や山仕事の合間に簡単に食べられるメニューとして広まったそう。この日みたいな時間のない朝、腹ごなしするのにピッタリでした。味もシンプルでおいしい。
私たちが乗るバスは20分ほど遅れて到着しました。もうすでに満席です。立っている乗客まで。 乗り込むと、まるで東京のラッシュアワー時みたいでした。半分くらいは外国人で、コロナ前の賑わいが戻ってきたことを実感します。つくづく平日でよかった!
乗車賃の支払いに「PayPay」が使えました! ただ、このあたりはスマホの電波がビミョウで、私の前の女性は現金払いしていました。
発心門王子
ところで熊野古道を歩いていると「王子」と名の付く場所がいくつも出ています。「王子様?プリンセスはいないの!? 」と、4歳次男。ちょっとそれとは違うと思う(笑)。「王子」とは(歴史に疎い私がザックリ説明させていただきますと)熊野の神々を祀る「神社」のこと。熊野の参詣路には100以上の王子社があるといわれているそうです。ここ発心門王子は、「熊野九十九王子」のなかで、もっとも格式が高い「五体王子」のひとつといわれているとか。
一緒にバスを降りたほとんどの旅行者は、ガイドを付けて説明を聞きながら回っていました。私たちも一瞬お願いしようかとも考えましたが、子どもたちが幼すぎて飽きてしまったりするかなーと今回はあきらめたのです。
だけど、なんの予備知識なしに子どもを歩かせても、楽しめる道だと思いました。息子たちは、「風が気持ちいいね」とか「緑がきれいだね」とか、「イノシシの罠発見!」とか、熊野の美しい自然を満喫していました。
水呑王子(1.7km、30分で到着)
水呑王子は廃校になった小学校の隣にありました。水場やトイレもあります。
水呑王子を出ると、いよいよ「熊野古道」らしい道になります。
先ほど乗ってきたバスは満員でしたが、発心門王子のバス停近辺には駐車場がなく、つまりさっきバスに同乗していた人しかこの道を歩いていないということ。皆さんガイドの説明を聞きながらゆっくり移動しているので、先を進む私たちの貸し切りでした。
伏拝王子(1.9km、35分で到着)
無料休憩所や設備が整ったトイレもありました。飲み物やちょっとした食べ物も売っていましたよ。
今回は見なかったのですが、この場所から大鳥居の「大斎原(おおゆのはら)」が望めるそうです。
こちらは1889年の大洪水まで熊野本宮大社があった「旧社地」。遠くに鎮座する大鳥居を、伏して拝んだことから「伏拝王子」という名が付いたと伝えられているとか。
2005年、熊野古道が世界遺産に認定された翌年のこと。ある雑誌のロケで熊野古道を訪れました。そのとき担当した若いガイドさんが、こんなことをいっていました。世界遺産になる前、熊野古道は地元民の「散歩道」だったそうです。
なかでも子どもたちの「最高の遊び場」だったとか。岩に上ったり、川を泳いだり、秘密基地を作ったり。「古道からいろんなことを学びましたよ」とガイドさん。そんな「当たり前にある」馴染みの場所だからこそ、世界遺産に選ばれたときは逆に首を傾げたそうです。
「でも、ボクらの大切な場所だから、よそから来る人にもイッパイ楽しんでもらいたい」と、ガイドになったとか。Mさん、元気でやっているかなーと、古道を歩きながらふと彼のことを思い出したのでした。
三軒茶屋跡(1.2km、20分で到着)
「三軒茶屋跡」、「祓殿(はらいど)王子」など過ぎて、いよいよゴールの「本宮大社」が近づいてきました。
熊野本宮大社(2.1km、45分で到着)
熊野本宮大社のシンボル「八咫烏(やたがらす)」は日本サッカー協会のマークでもありますね。「ボールをゴールに導くように」との願いが込められているそうです。
ファミリートレッキングにおすすめ!
2時間半(小休憩3回)で約7kmを歩ききった私たち。「ミスター体力」な4歳の次男は、まだまだ元気いっぱい。一方で「スーパー・インドアマン」な9歳長男は最後の方、少し疲れていたかな。でもみんなでいろんなおしゃべりをしながら、気持ちよくゴール。なんだこのすがすがしい達成感(笑)。この道、トレッキング初心者の家族連れには、とくにおすすめしたいと思います。
何より私が一番うれしかったのは、シニアという年齢に突入した10歳の愛犬「豊」と熊野古道を歩いた、ということ。いつまでも元気で旅しようね。
そうそう「愛犬は家族の一員ですので一緒にお参りしてください」と立て札にも書いてくださっていた、熊野本宮大社です。那智勝浦の「熊野那智大社」もそうでしたが、熊野古道はペットにやさしい印象を受けました。愛犬連れの方もぜひステキな思い出を作ってくださいね。
熊野本宮大社
- 所在地:和歌山県田辺市本宮町本宮
- 電話:0735-42-0009
- 参拝時間:8時~17時
- ホームページ:http://www.hongutaisha.jp/
歩いたあとは「日本最古の湯」で一息
巡礼者も旅の疲れを癒したとされる由緒ある秘湯は開湯約1,800年、「日本最古の温泉」といわれています。しかも世界遺産に湧く温泉です。天然岩のお風呂を板で囲っただけの「つぼ湯」が有名ですが、今回は「公衆浴場」の方にお邪魔しました。
大人400円、子ども200円とリーズナブルで、シャワーあり(前の日入った那智勝浦の公衆浴場ではなかったので余計に感動しました)、シャンプーやボディソープもあり。しかも施設が新しくてきれい。最高にお得で快適な公衆温泉でした。
「湯治場」にもなっているほど温泉成分が濃く、うっかり着けっぱなしで入ってしまったシルバーのネックレスが真っ黒になるというおまけ付き(笑)。ジュエリーは絶対にオフしましょう~。本当に、ぬるぬるすべすべの、いいお湯でしたよ。
湯の峰温泉公衆浴場
- 所在地:和歌山県田辺市本宮町湯峯108
- 電話:0735-42-0074
- 営業時間:6時~21時
- 料金:大人400円、12歳未満200円
- ホームページ:https://www.hongu.jp/onsen/yunomine/tuboyu/