自然観察マイスター奥山ひさしの植物「珍」百景~カラスウリの巻~ | 自然観察 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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  • 自然観察マイスター奥山ひさしの植物「珍」百景~カラスウリの巻~

    2023.03.06

     

    学名:Trichosanthes cucumeroides ウリ科の蔓性多年草。山野に生え、巻きひげで他に絡みつく。葉は手のひら状に浅く裂ける。雌雄異株。夏の夕方、花びらの縁が糸状に裂けた白い花をつけ、実は楕円形で赤く熟す。塊根からとるでんぷんは天瓜粉の代用。

    画家・写真家・ナチュラリストの奥山ひさしさんによる、美しいイラストと写真付きの自然エッセイです。

    地中ではダリアのような塊根が

    カラスが好んで食べるから
    この名がある…と、江戸時代中期の朱子学者、
    新井白石が「東雅」に書いているが、
    残念ながらカラスが食べているのを私は
    まだ見たことがない。

    カラスウリはウリ科の蔓性多年草で、本州から九州まで広く分布する。別名をタマズサなどともいうが、それは種の形が結び文に似ているからだというのだが、私にはどうしてもカマキリの頭に見えてしまう。
     
    生け垣や、やぶなどに絡みついて伸びるカラスウリは、夏の夕にはまるでレース飾りの付いたような白く美しい花を咲かせる。だが、この花は一日花で、朝方にはしぼんでしまう。
     
    カラスウリは雌雄異株の野草で、雌花にははじめから小さな幼果が付いている。
     
    秋になる朱色の実は、多くの人が見たことがあると思うが、地中に育つダリアのような塊根は、意外に知らない人が多い。赤い実の中には黄色の果肉に包まれたたくさんの種があるが、なんだか麦チョコに似ていて子供と大笑いした。
     
    カラスウリの果肉は、肌荒れやしもやけの薬にされるが、地中の塊根を干したものを漢方では「王瓜根」(オウカコン)、種を「王瓜仁」(オウカニン)と呼び、利尿、浄血、咳止め、ぜん息、解熱、あかぎれなどの薬にされる。
     
    生け垣や庭木のまわりに塊根を埋めておけば、来年の夏にはきっと花を付けてくれる。ただし、秋の朱色の実もほしいというのなら、当然、雌の株を育てないといけない。塊根は雄雌どちらの株にも育つので、開花時に雄か雌かを確認しておこう。
     
    ぜひ、雌の株を育てて、赤く色づいた実にカラスがやってくるのかを、確かめてみてください。

    レース飾りのある美しい花。

    若い実には縦縞の模様がある。

    種はこんな形です。

    地中に育つダリアのような大きな塊根。

    イラスト・写真・文 おくやまひさし

    (BE-PAL 2023年2月号より)

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