よく観察しないと見つけられない擬態の名手!カイコの祖先・クワコを育ててみました | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

自然観察・昆虫

2022.12.17

よく観察しないと見つけられない擬態の名手!カイコの祖先・クワコを育ててみました

横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行なっている“ご近所生きもの観察案内人”の相川健志さん。今回は、カイコの原種とされる昆虫の生態について案内します。

枯れ葉や枝に擬態するクワコ

寒い季節に、葉の落ちた桑の木をよ~く観察してみると…落葉しない枯れ葉がひらひらと風で揺れています。これは、葉にくるまれているクワコの羽化後の繭。クワコは、絹糸をつくるために品種改良されたカイコの原種といわれています。

ただの落葉した桑の木のようですが…

ただの落葉した桑の木のようですが…。

クワコの羽化後の繭を発見

クワコの羽化後の繭を発見。

クワコは羽化前に葉が落ちないように命綱を枝につけます。そのため、他の葉が落ちても、クワコがくるまっている枯れ葉だけは枝に残っているのです。この日は、1本の木で5つのクワコの繭をみつけることができました。

一方、住宅街の桑の木でも、クワコの幼虫を発見。クワコの幼虫を探すときは、新しい食痕と糞が目印になります。枝に擬態してじっとしている個体もいるので、目を凝らして探してみましょう。

住宅街で見つけたクワコの幼虫

住宅街で見つけたクワコの幼虫。

枝の先端に擬態しているクワコの幼虫

枝の先端に擬態しているクワコの幼虫(突き出た枝の一番上)。

クワコの幼虫を育ててみると

見つけたクワコの幼虫を飼育してみることにしました。飼育方法は、基本的にカイコと同じです。クワコはとても食欲旺盛なので、毎日、新鮮なクワの葉を与えます。それと、糞をマメに掃除することも忘れずに。

食べ盛りのクワコの幼虫

食べ盛りのクワコの幼虫。

大きな頭に見えますが、本物の頭は先端部分

大きな頭に見えますが、実際の頭部は先端部分です。

クワコは、蛹になる直前に体内の余分な水分を体外に排出します。とろっとした排泄物が確認できたら、幼虫は間もなく蛹になります。

ゆるい排泄物を確認した翌日、繭になっていました

ゆるい排泄物を確認した翌日、繭になっていました。

クワの葉があれば、葉にくるまって繭を作ります。葉がなくても、飼育ケースの隅で繭になります。季節によりますが、蛹になってから約2~3週間で羽化。今回観察していたクワコは、9月の末に蛹になり、10月中旬に羽化しました。

桑の葉につくられた繭

桑の葉につくられた繭。

繭となった子たちは、みんな無事に羽化してくれました。クワコはカイコより小型です。また、改良品種されたカイコは飛べませんが、クワコは飛翔します。下の画像を撮影後、部屋の中を飛び回って捕獲するのが大変でした…。

無事に羽化したクワコ

無事に羽化したクワコ。

一方、羽化後の繭糸の太さはカイコの1/3くらいです。エサであるクワの葉の色の影響なのか、糸も薄い黄緑色をしていました。

薄い黄緑色をした羽化後の繭糸

薄い黄緑色をした羽化後の繭糸。

卵で越冬し、次の世代へ

11月中旬、自宅で飼育していクワコとは別に、近所でも発見がありました。以前、幼虫を採集したクワの木へ再び足を運ぶと、成虫がいました。すぐ近くには、卵もありました。

クワコは年2~3回、多いと4回も羽化することがあります。そして、越冬卵で冬越しをします。

一般的に、6〜7月に卵を生む際は葉に産み付けるのに対し、秋には枝に産み付けます。落葉とともに卵が落ちるのを避けるためです。でも、なぜか葉に産み付けられている卵もありました。このまま落葉してしまうことを考えると、心配です。

もちろん、枝に産み付けられた越冬卵もありました。これらは翌年、若葉が芽吹き出すころに孵化し、次の世代へと命をつないでいきます。

葉に産み付けられたクワコの卵

葉に産み付けられたクワコの卵(葉に並んでいる丸い点が卵です)。

枝に産み付けられた越冬卵

枝に産み付けられた越冬卵。

季節によって、さまざまに姿を変えるクワコ。冬場には、羽化後の繭や越冬卵を見つけることができます。ぜひ、近所の桑の木をじっくり探してみてください。

私が書きました!
ご近所自然観察案内人
相川健志
NPO法人Dream eggs ゆめたま代表。環境コンサルタント、ビオトープ管理士。横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行っている他、調査や駆除などで死んでしまった生きものの透明骨格標本づくりも行なっている(https://twitter.com/NatureCreators_)。

 

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