道端の野草にもそれぞれ個性がある。食べたり、薬にしたり、有用なものも多い。公園や河原で気軽にできる野草遊び。まずは、親子でご近所散策。気になる野草を探すことからはじめよう。
野草研究家。登山家の父のもと幼少より大自然と植物に親しむ。野草に関する広範な知識と独創的な活動で知られ、国内外で観察会・ワークショップを多数開催。
ますは半径1mから野草を探してみる
「普段、何げなく歩いている道でも、野草は必ず生えています。まずは、半径1mの範囲を探してみてください。10種類くらいは見つかると思いますよ」
山下智道さんにそういわれて道端を見やると、タンポポ、ドクダミ……、名前がわからないものを含め、10種類以上、簡単に見つかった。親子で野草あそびを体験してくれた多久和愛佳さん、佑星くんも、つぎつぎに見つけている。
「この葉っぱを見てみて。ふちがギザギザで、細かい毛が生えているでしょ? においはどうかな? 似ているようでも、葉っぱの形や数、花の色、それぞれ違ってるよね」と山下さん。佑星くんもうなずきながら、虫眼鏡を使い夢中で観察している。
ある程度、種類が見分けられるようになったら、食べられる野草で、簡単な料理を作るのもオススメとのことで、より多くの野草がありそうな水辺エリアに向かう。と、山下さんの歓声が聞こえてきた。「野草のサラダバー、見つけた~(笑)」
野草の味や効能を知り尽くしている山下さんにとって、草ボーボーの場所がこういうふうに見えるんだと、ちょっと感動。
雑草という名の草はない。牧野富太郎博士のいうとおり。子供といっしょに、まっさらな気分で野草を観察をすると、新しい発見がありそうだ。
近所で野草を楽しむための4つのステップ
【STEP1】半径1m以内をじっくり観察
まずは半径1m以内をじっくりと観察しよう。時間を決めて、何種類探せるか、親子で対決してみるのも楽しい。「10種類以上はみつかるはず」、と山下さん。
【STEP2】よく見る野草を入り口に!
よく見かける気になる野草を突破口にするとよい。ドクダミやスギナなどは邪魔モノ扱いされがちだが、有用植物。食生活などにからめて話をしてあげれば、子供も興味を持ってくれるはず。
ドクダミ
ドクダミの葉を乾燥させてお茶に。ゼリーにするのもいい。蜂蜜に同量の花を漬け込んだシロップもオススメだ。
スギナ
天日で乾かしたものをミキサーで粉末状にすると、抹茶の代わりに利用できる。かき氷にかけると超美味とか。
【STEP3】野草のピザを作ってみよう!
ピザにはバジルなどのハーブがつきものだが、野草もハーブの一種。当然、ピザにも使える。野草が焦げないよう、生地に葉をのせたら、上にチーズをかけるのがコツ。花は仕上げに飾ろう。食用ならなんでもOKだが、イチオシはカキドオシ。ミントに似た香りで、口の中がさっぱりする。
本日のピザのお品書き
ユキノシタ(葉)
ユキノシタ科。半日陰に多い。葉はハート型で厚め。食感が良い。
カキドオシ
シソ科。日当たりの良い場所に群生。葉は円形。もむと芳香がする。
タンポポ
キク科。葉はほろ苦くアクセントになる。花は仕上げにトッピング。
ムラサキカタバミ
カタバミ科。葉はハート型で酸味がある。淡赤色の花は仕上げに!
ユキノシタ(花)
花弁は5枚で、うち下側の2枚が長い。繊細なので優しく扱おう。
セリ
セリ科。全国に自生。水田や小川、湿地でよく見られる。香りがよい。
ミツバ
セリ科。葉柄の先に三枚の葉がつく。自生する天然物は風味がよい。
ピザ生地にトマトソースを塗ったら、生の野草とチーズをのせる。
400度Cくらいに熱したピザ窯へ入れて焼く。すぐに焼けるので要注意。
完成
最後にユキノシタ、ムラサキカタバミ、タンポポの花を飾って完成。簡単で見た目も味も完璧!
【STEP4】気になる野草の図鑑を作ってみよう!
野草を紙に貼りつけてオリジナルの植物図鑑を作ろう。空いたスペースには葉の数、形、花の色、においなど、観察した事柄を記入。葉や花を真似して描いてみるのもいい。特徴を覚えるのにも役立つ。新聞紙などに挟んで重しをして乾燥させれば、保存もOK。
用意するもの
A4サイズ以上のスケッチブック、ペン、マスキングテープ。スケッチブックは白以外の色でもよい。
気になっている野草があったら、根が切れないよう優しく引き抜いて採集。
作り方はカンタン!
野草をマスキングテープで貼りつけるだけ。植物が紙からはみ出しても問題ない。
ドクダミをチョイスして図鑑を作った佑星くん。「忘れられないにおい」と書いていた(笑)。
完成
「葉の形がおもしろい」「根が太い」など、観察したことを自分の言葉で記録。名称はあとから図鑑で調べて記載しておく。
【POINT】根っこごと採集しよう!
市販の図鑑には根っこまで紹介されてないことが多いので、根っこごと図鑑に。においや種の形なども記録しておくとよりGOOD。
野草採集のポイント
- 珍しいものよりも、身近な野草を入り口に!
- 食べたり描いたり……、遊びと関連付ける
- 野草あそびの思い出は図鑑にして記録しよう
※構成/松村由美子 撮影/江藤大作
取材協力/沐森舎 https://www.instagram.com/foresthall_2021/
(BE-PAL 2022年8月号より)