折りたたみ式カヌーを担いで長良川へ!優雅な大人の2泊3日リバーツーリング | 海・川・カヌー・釣り 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

折りたたみ式カヌーを担いで長良川へ!優雅な大人の2泊3日リバーツーリング

2022.07.07

愛艇フェザークラフトで川下り

長良川をカヌーで旅した。

BE-PAL8月号の『シェルパ斉藤の旅の自由型』に『野田知佑スタイルで長良川を旅する』というタイトルの紀行文を掲載したので、そちらを読めば長良川を旅することになった経緯を理解できるはずだが(タイトルで察しがつくと思うけど)、連載ではふれていない箇所の説明を最初にしておきたい。

冒頭で「カヌーで旅した」と書いたが、正確に表現すればカヌーを使ったわけではない。前向きに漕いでいく艇の総称を一般的にカヌーと呼んでいるが、カヌーとはブレードが片側だけにあるシングルパドルで漕ぐオープンデッキの艇をさす。一方、ブレードが両側にあるダブルパドルで漕ぐクローズドデッキの艇はカヤックと呼ばれる。僕が長良川のツーリングで使用した艇はパッキングできるタイプのカヤックであり、フォールディングカヤック、あるいはファルトボートともいう。

でも野田さんならそんな細かい話はどうでもよろしい、というだろうから愛艇フェザークラフトで下った今回の旅を「長良川をカヌーで旅した」と表現しておく。

手に入れて25年近くになるカナダ製のフェザークラフト。船体布の中にフレームを入れて組み上げるツーリングカヌーだ。

手間がかかるぶん達成感は大きい

室内に収納できる折りたたみ式カヌーは、クルマに積んでいかなくてもどこへでも旅に出かけられる。列車やバス、飛行機などの公共交通機関を使って川や海に出かけ、ツーリングを終えたあとも公共交通機関で帰宅できる。クルマで出かけた場合はクルマを置いてあるスタート地点まで戻らねばならないが、公共交通機関で持ち運べる折りたたみ式カヌーの場合はその手間がいらない。行きっぱなしの旅が楽しめるのだ。

そのかわり、すべての荷物を自分で担いでいかねばならない。長期のカヌーツーリングの場合はカヌー本体やパドル、ライジャケなどに加えてテントや寝袋、マットなどのキャンプ道具も必要だし、ウエア類や食料も欠かせない。通常のバックパッキングの旅の倍近くの装備を担いでいくことになる。

それなりの手間がかかるんだけど、そこがいいのだ。努力が必要だから達成感は大きいし、そのスタイルこそが自由な旅なのだ。

僕が憧れた野田さんの川旅にこだわろうと、今回はすべての荷物を自分ひとりで担いで、最寄り駅の長坂駅から中央線の列車に乗り込んだ。帰省していた長男の一歩が大阪まで帰るため、名古屋まで同行してもらえることになったが、一歩も父のこだわりを理解していて「手伝わないからね」と、写真を撮るだけで荷物運びの手伝いは一切しなかった。

背中にカヌー、胸にキャンプ道具が入った45リットルのバックパックを抱えて長坂駅から列車に乗った。バックパックのショルダーハーネスを両肩にかけて抱えるスタイルは80年代に香港の旅人がよくやっていた。

中央線は乗客が少なかったため、他人に迷惑をかけることなく、座席に腰掛けて移動できた。

名古屋駅構内の移動もスムーズに行なえたが、サイドポケットに入れた分割パドルの高さがあるから建物にあたらないように注意して歩いた。

鉄道とバスを乗り継いで長良川へ

塩尻駅で名古屋行きの特急列車『しなの』に乗り換えて、名古屋駅では東海道線を乗り継いで岐阜駅へ。そして岐阜駅から路線バスに乗って、事前のリサーチでスタート地点に決めた藍川橋のバス停に到着。さらにバス停から歩いてようやく長良川にたどり着いた。川を旅する以前の移動で疲れてしまったが、これこそが『日本の川を旅する』だと思う。

水際でフェザークラフトを組み立てて、荷物をすべて内部に積み込んで出航。流れに乗ると、カヌーは滑らかに進み、岸辺の景色が動き出した。

時速6km程度だろうか。ジョギングの速度に近い。エンジンやモーターに頼らなくても、パドルを漕がなくても、カヌーは川の流れに乗って静かに進む。優雅な大人の旅だと思う。

30分ほどかけてフェザークラフトを組み立てた。船体布がピンと張った美しいカヌー。組み立てのプロセスも旅立ちのモチベーションを上げてくれる。

藍川橋から先は急流もないし、ポーテージ(船底があたる浅瀬などで、カヌーを引いて歩いて移動すること)する箇所もない。流れに身をまかす川旅だ。

出発が午後3時半を過ぎていたこともあって、カヌーを1時間半ほど漕いだ長良橋の先で初日の旅を切り上げた。テントを張りやすい平坦な草地があったので、カヌーを引き上げてテントを設営することにした。

水上ではスイスイ動き回れるカヌーだけど、陸上では厄介なお荷物に過ぎない。キャンプ設営地は、上陸地点から近い限られた範囲内で見つけなくてはならないが、こういう状況でこそ、キャンプ場以外の場所にテントを張るスタイルを40年以上続けてきたわが経験とカンが働く(と願いたい)。今回はそれがうまく当たって、市街地に近くて利便性が良いのに、陸から目立ちにくい静かな環境のキャンプ地を確保することができた。

長良川の河原は石がゴロゴロしている場所ばかりなのに、ここだけは草地で平坦。広々として眺めも良くて、最高のキャンプ地だった。

上陸地点から500mほど歩いたら、格子戸の古い町家が並ぶ風情ある通りに出た。長良川の港町として栄えた川原町だ。織田信長の時代から注目された歴史ある町で、訪れたことはあるけど、川からアプローチすると新鮮に映る。

自分だけの自由な世界が待っている

中流域以降の川旅では美しい自然の景観は望めないけど、町中を流れる川ならではのおもしろみもある。長良川の両岸には道路があって、信号のある交差点ではクルマの列が並ぶ。忙しく日常の生活が動いている陸地と違って、僕の周囲には誰もいない。町中なのに僕だけの世界がぽっかりと空いている。

ここには誰も近づけない。僕だけの自由な世界だ。朝から酒を飲んでもかまわない。ノーパンでカヌーに乗っても、誰からも見られないし、咎められることもない。この格別な解放感は市街地の川を単独で下る旅の特権だと思う。

橋は川旅の道標になる。地図と照らし合わせれば自分がどこにいるのか一目瞭然。普段は見ることができない橋の裏側を真下から眺められるのもカヌーの川旅の特権だ。

2日目のキャンプ地は、名神高速道路の橋を過ぎた平田リバーサイドプラザという公園。管理人が帰って駐車場のゲートが閉ざされる午後6時以降にテントを張った。昨日に続いて極上のキャンプ地だった。

野田さんとはじめて会った場所をめざす

旅の後半は流れがなくなり、しかも向かい風が吹きはじめた。パドリングを休むとカヌーが上流に戻される状況になったが、長良川の河口堰まではどうしてもたどり着きたかった。そこは33年前に野田さんと初めて会った場所だからだ。さらにその2年後、長良川河口堰で僕はちょっとした冒険もしているし、運命的な出会いも経験している(詳しくは本誌の連載で)。

前方に見える道路の橋や鉄橋をくぐり抜けることを目標にパドリングを続けて、最後の橋となる国道1号を通過。33年前の長良川河口堰反対のカヌーイストミーテイングでは、日本全国からやってきたカヌーイストで川面が埋め尽くされ、多くの見物人が国道1号の橋の上からカヌーイストに声援を送った。

その国道1号の橋の先に長良川の両岸を結ぶ河口堰がある。くやしいことに河口堰の上流200mから立ち入り禁止になっていて、長良川を下ってきたカヌーイストは海まで漕ぐことができない。

立ち入り禁止を示すブイまでアプローチした僕は、上流に戻って(追い風になるのでパドリングが楽だった)JR関西本線の鉄橋近くに上陸した。

カヌーの旅はこれで終わったわけではない。濡れたカヌーをパッキングして、水を含んで来たときよりも重くなった装備をすべて担いで駅まで歩かねばならない。

でも装備の重さよりも達成感と充実感が上回り、晴れ晴れとした気持ちで家路につくことができた。

今回の川旅で最後の通過となった国道1号の橋。3日間で23本の橋を通過した。

奥に浮かぶ無粋な建築物が、僕らカヌーイストも塞き止める河口堰だ。これ以上近寄ることはできない。

組み立てるよりも分解するほうが楽だけど、濡れてしまったカヌーやウエア類をパッキングして担ぐ帰り道のほうがしんどい。でもまたどこかの川を旅しようと決め、家路についた。

シェルパ斉藤
私が書きました!
紀行作家・バックパッカー
シェルパ斉藤
1961年生まれ。揚子江の川旅を掲載してもらおうと編集長へ送った手紙がきっかけで『BE-PAL』誌上でデビュー。その後、1990年に東海自然歩道を踏破する紀行文を連載して人気作家に。1995年に八ヶ岳の麓に移住 し、自らの手で家を作り、火を中心とした自己完結型の田舎暮らしを楽しむ。『BE-PAL』で「シェルパ斉藤の旅の自由型」を連載中。『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』ほか著書多数。歩く旅を1冊にまとめた『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)には、山、島、村、東海自然歩道などの旅や、犬と歩いたロングトレイルの旅を収録。
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