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焚き火で飲むならこのお酒!焚き火談義でインフレが進むハンガリーの意外な経済事情を知る

2022.05.19

ラーツケベー・ドナウのキャンプ場にて

ラーツケベー・ドナウのキャンプ場にて。

ラーツケベー・ドナウ?どこそれ??

「ラーツケベー・ドナウ」って、どこだかわかりますか?私も、行ってみるまで聞いたこともなかった地名でした。

それは、ヨーロッパのドナウ川の源流地域ドイツから、トルコを目指してカヤックを漕ぐ長い旅の途中、ハンガリーの地元の方に行くように強く勧められた場所。ハンガリーの首都ブダペストの少し下流で、ドナウ川の本流から枝分かれするように流れている小川のこと。貨物船も通らず、とても静かで、かわいらしい田舎町がたくさん並んでいるから、絶対にハズせない隠れた名スポットなのだと。

ラーツケベーの町の代表的な建物、青い教会

ラーツケベーの町の代表的な建物、青い教会。

この青い教会の中身は、じつは青くないのです。真相は、実際に行ってみてのお楽しみ…。だけどそれより、ラーツケベー・ドナウで印象的だったのは、川の浅瀬を埋め尽くさんと生えていた、高い葦のような植物。それが、春のそよ風に吹かれて、サラサラと軽やかな音を鳴らすのです。

ラーツケベー・ドナウは、始まりと終わりを水門で挟まれた、いわば細長い湖のような場所。川の流れがゆっくりなら、時間の流れもゆっくり進んでいるような、そんな穏やかなこの場所で私が出会ったもの。それは、新たな焚き火の相棒「ウニクム」と、ハンガリーについてずっと疑問に思っていた、「あること」に関する地元住民の見解でした。

ハンガリー生まれの強いお酒「ウニクム」とは?

ラーツケベー・ドナウでの焚き火風景

ラーツケベー・ドナウでの焚き火風景。

川遊びといえば、焚き火。焚き火といえば、お酒。定番はやっぱり、ビールやウイスキーでしょうか。だけどやっぱり、好きなものを自由に飲めば良いと思うのです。テキーラが好きなら、テキーラ。ラム酒が好きなら、ラム酒を飲んだって良いのです。

「私はお酒なんか飲まなくても、いつも十分ハッピーだから、飲まないのさ」という人もいます。私も普段は、あまり飲まないのです。だけど、お酒と焚き火で外と中から温まるのは、また別の心地よさがある気がします。

私が今回の旅で出会った焚き火の相棒にしたお酒が、ハンガリー生まれの「ウニクム」。1日の終わりに、デザートみたいに味わいたいお酒です。

ハンガリー名物、ウニクムを現地スーパーで発見!

ハンガリー名物「ウニクム」を現地スーパーで発見!

日本では聞き馴染みがないお酒かもしれません。私もハンガリーに来て初めて知って、スーパーで見かけて購入しました。でもじつは、日本でも取り扱いがあるのだそう。ウニクムは、ハンガリーの首都ブダペストで生まれた歴史あるお酒で、名前の由来は、ウニクムの綴りのとおり「ユニーク」な味がするから。これが、ものすごーく、美味しいのです。

焚き火を背景に、ウニクム。

焚き火を背景に、ウニクム。

ウニクムは、かなり甘くて、つよーいお酒です。ただユニークなのが、ラム酒やシナモン味の甘いウイスキーとして定番のウイスキー・ファイヤーボールと違って、甘さが残らないのです。口に含んだときはハッキリ甘かったのが、喉を通り過ぎる頃には、どこかオレンジの皮みたいな心地よい苦味とフルーティーな爽やかさだけが残るのです。そう、口に含んだときと、喉を通り過ぎたあとで、味が変化するみたい。まさに、ユニーク。

何十種類もの秘密のスパイスを調合して作られているというウニクム。気になったら、ぜひ、探してみてください。めちゃくちゃ、美味しいから。

味わいがユニークすぎて、おつまみには何も合わないかもしれません。そう、まさに、ぼーっと焚き火を眺めながら、焚き火をおつまみにチビチビとと飲むのにちょうど良いお酒。

私のつたない表現力では魅力を伝えきれずに残念ですが、できることなら私はウニクム親善大使になりたい!

ハンガリーの地元カヤッカーと焚き火

ラーツケベードナウの無料キャンプ場いたカヤック二人組

ラーツケベー・ドナウの無料キャンプ場いたカヤック二人組。

ラーツケベー・ドナウには無料でキャンプできるキャンプ場があって。テントを張っていると、「ハロハロ」と後ろから呼ぶ声が。そこにいたのは、カヤックに乗った二人組の男性。彼らの自宅は10km下流にあって、今夜はここで泊まるのだそう。「焚き火をするから、よかったら一緒にどうぞ」と誘ってくれました。

地元カヤッカー二人組と焚き火

ペアルックでカヤックを漕ぐ地元カヤッカー二人組。

彼らが焚き火を前に食べるもの。それは、いわゆる「黒パン」と呼ばれる、焦げ茶色で中身がぎっしり詰まった重たいパン。それを薄くスライスして、瓶に入ったパスタソースをのせて食べます。手間いらずだけど、意外と美味しい。

「俺たちは、夏はカヤック、冬はスノボで遊んでいるんだ。もう4月で春だけど、最近オーストリアのスキー場で雪が降ったみたいだから、今回のカヤックツーリングはここで一旦切り上げて、今度はスノボ旅行に行くんだ」

そんな彼らは普段、カフェとお花屋さんをそれぞれ経営しているそう。お店を営みながら、どうやって趣味の時間を確保するかというのが、悩みの種。また、自営業だからこそ、国の経済や将来は身に迫る心配ごとらしく、こんな小難しい質問をされてしまいました。

カヤッカー:「ハンガリーをどう思う?」

私:「古いヨーロッパ建築はきれいだし、お酒も食べ物も美味しい。アメリカ人と比べると控えめで、それでいて勤勉な国民性は日本人に近いものも感じる。私、住めると思うな」

カヤッカー:「いやいや、そういうことじゃなくて、政治や歴史的な観点から、この国の姿をどう思う?本当に、好きかい?」

じつはこうして彼らと焚き火をすることになった数日前、ハンガリーでは大統領選が行なわれていたのです。選挙結果としては、ハンガリーは依然として保守の姿勢を継続することに。だけど彼らが保守派かそうでないかは、わかりません。思い返せば、ブダペストの街では、赤いフードに身を包んで、お揃いのピエロみたいな仮面を被った集団が街のいたる所に出現していました。あれは保守派というか、かなり勢いのある新勢力で、しかし噂によると某大人向け海外サイトの運営もとがバックについているというカオスな状態。そんな時期に振られる政治の話題は、非常にデリケートに感じます。

苦し紛れの私は、「ハンガリーがソビエトの支配下でなくなった1989年は、二人とも生まれていたでしょう?今日にいたるまでのたった30年ちょっとで、ハンガリーは大きく変わったはず。きっとハンガリーは、今も変化の途中にいるんだから、将来が楽しみだと思うよ。だけど、それにしても、なんでハンガリーはEUにいるのにユーロじゃなくて自国通過のフォリントを採用し続けているの?国民はフォリントを継続することで、何か得をしているの?」と。私が選んだのは、質問に質問に返す戦法でした。

ハンガリーの「なぜ」を聞いてみた

国旗と一緒に記念撮影

「こんなとこで日本人を見たのは初めてさ!ちょっと一緒に写真撮ってよ!」と言われて。

私は観光客としては、正直、フォリントを不便に思っていました。だって、数字が大きいんだもん。1円が大体3フォリント前後なので、値札に並ぶ数字がなんでも大きいのです。

日本だったら、「1円だって立派なお金」として扱うところ、ハンガリーのスーパーなどでは、お釣りの末端の1〜4フォリントは四捨五入で切り捨てられることもあります。昔はそんなことはなかったのでしょう。いつしか物の値段が上がっていくうちに、どんどん数字が大きくなってしまったのです。

100円ショップならぬ、100フォリントショップの店内

100円ショップならぬ、100フォリントショップの店内。

例えば、日本の100円ショップみたく、100フォリントショップがラーツケベー・ドナウ沿いの町にあります。だけど、店内に100フォリントの物なんて見当たりません。昔は100フォリントの物があった時代もあるのかもしれません。でもいくら物価が安いハンガリーとはいえ、今や30円ぽっちで買えるものなどほとんどないのです。

ハンガリーで働くハンガリー国民の視点から、「ユーロじゃなくてフォリントで良かったな」と思うことは何か?

彼らの答えは、意外なものでした。

ハンガリーの労働者は、何やら、ユーロとフォリントとの為替で得をしているというのです。例えば、製造業の分野などでハンガリーに進出しているドイツ企業が、固定で1,000ユーロの給料を支払うとします。それに対して、フォリントの為替は年々少しずつ上がっているため、フォリント換算では実質少しずつ昇給していくというのです。つまり、ユーロ通貨の企業は安い賃金を固定したままでも、フォリントで生活するハンガリー国民は損をしない、ウィンウィンの関係なんだと。

どこまで本当かわかりませんが、為替で得をするというのは、私にはまったくなかった視点です。というか、川下りの途中にまさかこんな小難しい話に遭遇するだなんて。耳から抜けないうちに、iPadに打ち込んでおきました。私の書斎、もといラーツケベー・ドナウの川岸で。

この記事は、ここで書きました

川岸で執筆しています!

川岸で執筆しています!

2022年4月某日、この日の私の書斎はこんな場所。今回の記事は、ラーツケベー・ドナウとドナウ川本流が合流する、すぐ手間の川岸で書きました。

次なる旅の発見は一体何なのか。そして、新たなる書斎は一体どこなのか。ドナウ川の旅は、まだまだ続きます。

私が書きました!
剥製師
佐藤ジョアナ玲子
フォールディングカヤックで世界を旅する剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)。じつは山登りも好きで、アメリカのロッキー山脈にあるフォーティナーズ全58座(標高4,367m以上)をいつか制覇したいと思っている。

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