【小豆島お遍路】天空の絶景霊場、千枚田…日本の美しい原風景を歩く(モデルコース 7日目・最終日) | 日本の旅 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2021.12.13

    【小豆島お遍路】天空の絶景霊場、千枚田…日本の美しい原風景を歩く(モデルコース 7日目・最終日)

    さて、小豆島お遍路歩きも7日目、いよいよ最終日となりました。

    6日目に長勝寺をお参りした後、宿泊は池田港周辺からバスでふるさと村や土庄などに移動し泊まったとして、7日目はまた同じバス停に戻ってきてからのスタートになります。

    7日目:40番保安寺〜56番行者堂〜小豆島霊場総本院 約140kmの行程がついにゴール

    小豆島88か所お遍路地図

    まず池田港周辺から小豆島中央高校方面へ向かって歩きます。小豆島で唯一の高等学校です。

    高校の前にあるバス停の少し手前に、次の目的地40番保安寺(ほうあんじ)へ向かうお遍路道があります。しかし、この短い区間で意外にも迷わされること多し。

    もしわからなくなってしまったら、バス停を越えて少し進んだところにある、車用の「保安寺」の看板を目印に入るのもいいかと思います。

    保安寺という看板が出ている道の曲がり角

    車用の看板。夫がストレッチ中で顔が真反対を向いていますが、赤矢印の方向へ。

    40番札所、保安寺

    40番保安寺。「鐘の緒の戒め」という大正時代の話が残る、城造り形式の立派なお寺です。

    そのお話も強烈ながら、現在参拝者の記憶に残るのは境内のあちこちで見かける、かわいらしいこちらかもしれません。

    保安寺の縁側にいるブルドッグ

    保安寺の名物ワンちゃんたち(一匹は黒犬で右手の影に同化)。全3匹。まるでこの子達から納経をいただいているかの如くな存在感。

    さて保安寺から41番佛谷山(ぶっこくさん)へ行くには、保安寺の山門を出てすぐ右手にある民家の間を抜けていきます。

    保安寺の山門を出て右手にある41番札所佛谷山への曲がり角

    赤矢印のところを入ります。あまりにも人の敷地感があるので最初は思わず引き返してしまいました。この後すぐ上りの山道になります。

    道沿いのお地蔵さん

    山道を登りきると、車道と一旦合流します。お地蔵様、行ってきます。

    佛谷山の山門

    佛谷山の山門。秋は紅葉が見事です。

    犬2匹の地蔵と「ようおまえり」と彫られた石碑

    あら。こちらでもお出迎え。笑(佛谷山は保安寺に管理されています)。

    41番佛谷山

    41番佛谷山。こちらも山岳霊場で本堂はこの洞窟の中にあります。納経は保安寺にて。

    佛谷山の山門の右手にある細い道。42番西ノ瀧に向かう道

    では次の42番西ノ瀧(にしのたき)へレッツゴー。

    と、勢いよくさっきの山門を出ると、そのまままっすぐ長い坂を下りてしまう確率大です。山門を出たらすぐさま左へ、鋭角に曲がります。お忘れなく。

    この後ところどころ岩場の道を進みます。雨の後は要注意。

    こちらから西ノ瀧へ向かうと、西ノ瀧の裏側から入ることになります。お手洗いの横を通り、本堂へ。

    42番西ノ瀧

    42番西ノ瀧。こちらも岩窟にへばりつくように建てられており、奥には「龍水(りゅうすい)」と呼ばれる霊泉があります。持ち帰ることもできます。

    西ノ瀧は33番長勝寺の奥の院にあたるので、納経は長勝寺にていただきます。

    納経がその場でいただけないのはだいたい小さな堂庵などで常駐されている方がいないからなのですが、こちら西ノ瀧ではとても気さくでホスピタリティに溢れた住職さんがいらして色々詳しく説明してくださいます。

    後ろを振り返ると海を背後に絶景が広がっていますが、特に格別なのは護摩堂からの眺め。

    護摩堂

    この朱色の建物が護摩堂。

    護摩堂からの絶景。右手にエンジェルロード、中央奥に屋島が見えます。

    護摩堂からの絶景

    あまりの気持ちよさに下界へ降りたくなくなりますが、まだまだこの後札所もお楽しみも続きますのでそこそこに下山しましょう。

    下りはひたすらくねくね曲がる車道を歩き、最後に一部木陰の中を歩く遍路道へ。その遍路道から出るとさっきまでとはまるで別世界。オリーブの木が広がる世界へと出てきます。

    小豆島中央病院や小豆島町池田庁舎

    オリーブ畑の奥に見えるのは小豆島中央病院や小豆島町池田庁舎、地域の人に愛されるスーパーなどが集まる中枢区。

    オリーブ畑

    この後に向かう35番林庵39番松風庵は、太陽の光をたっぷり受けてのびのびと育つオリーブやみかんたちに囲まれるように建っています。

    35番林庵

    35番林庵。のどかな雰囲気に包まれています。納経は33番長勝寺にて。

    39番松風庵

    39番松風庵。目の前には墓地が広がっています。納経は光明寺にて。

    38番光明寺(こうみょうじ)はこの後少し下ったところ、池田地域の中心地近くにあります。

    38番光明寺

    38番光明寺(こうみょうじ)。手入れの行き届いた広い庭園が気持ちいい。

    「誰かの家の敷地?」のような道を通って36番釈迦堂と37番明王寺へ

    またまた「誰かの家の敷地?」のような道を通って36番釈迦堂37番明王寺(みょうおうじ)へ。この2つの札所は同じ場所にあります。

    36番釈迦堂

    36番釈迦堂。なんとも立派な建物だと思いきや、国宝に指定されており小豆島霊場発祥の場だとあります。

    37番明王寺

    37番明王寺。古くから祈禱寺として知られているそう。

    この後は棚田風景で有名な中山・肥土山エリアに向かって車道を歩いていきます。3kmほど単調なアスファルトの上り道が続きます。

    中山地区に入ったらまず43番浄土寺45番地蔵寺堂へ。こちらの2札所も同じ境内にあります。

    43番浄土寺の石段と山門

    43番浄土寺

    43番浄土寺。

    45番地蔵寺堂

    45番地蔵寺堂。

    ここを出たら、次は中山千枚田の命ともいえる「湯船の水」がある、44番湯舟山(ゆふねさん)へと向かいます。

    山道を上へ上へと上がり、千枚田の眺望とともに湯舟山に到着です。

    湯舟山の千枚田

    この写真を撮ったのはちょうど稲刈りの後だったので田んぼの緑もまばらですが、田植えの後などは緑が映えていて本当にきれい。

    44番湯舟山

    44番湯舟山(ゆふねさん)。

    こちらにある湧水「湯船の水」は日本の名水百選にも選ばれており、どんな日照り時も涸れることなく地域の共同洗い場や下に広がる千枚田の灌漑用水として昔から大切に利用されいるそう。

    島でありながらこの内陸で稲作が盛んなのは、これらの湧き水(湯船の水以外にも数か所あり)の恵みがあるからということに納得。この千枚田を眺めるたびに、なんて豊かな島なんだろう、とつくづく思います。

    棚田に咲く彼岸花

    9月には「これぞ日本の秋」な風景、棚田に咲く彼岸花も。

    こんな風景の中にいると、お米を食べたくなってくる人も多いのでは。この日の行程では、ちょうどこの辺りでお昼ご飯時となりそうです。お遍路道から少しそれて千枚田を下りていかないといけませんが、「こまめ食堂」という人気の飲食店が近くにありますのでお時間に余裕がある方はぜひそちらへ。棚田風景を眺めながら、ここで取れたお米を使った定食などを頂くことができます。

    また、この地区には集落ごとに農村歌舞伎舞台が残されていて、今も地域の人たちによって歌舞伎が演じられています。時期は、肥土山は5月、中山は10月。この月以外は自由に見学することができるので、お弁当を持参して観客席で歌舞伎の様子を想像しながら食べるのも楽しいです。

    さて、湯船山の後は千枚田を下に眺めつつ山奥へと歩いていきます。

    木陰の中の気持ちいいお遍路道を抜けると、突如現れるのは47番栂尾山(とがのおさん)

    47番栂尾山

    ここまで小豆島の山岳霊場を訪れるたびに驚かされ、もうびっくりすることはないだろうと思っていましたが、まだまだこんなところが残っていたのか、と度肝を抜かれます。秘境感満載の入り口。

    猿除けのために設けられた頑丈な戸を開けて中へ入ります。納経は46番多聞寺にて。

    次の48番毘沙門堂へ行く間も楽しい山道をくだっていきます。滑らないよう注意。

    48番毘沙門堂へ下る山道

    48番毘沙門堂

    48番毘沙門堂。財運、勝運の仏として知られるそう。こちらの納経も多聞寺にて。

    肥土山の集落に下りてくると目に入る、ひときわ目立つ大きなお寺。46番多聞寺です。

    46番多聞寺

    入り口の鐘楼門はじめ境内には見どころも多いので、休憩も兼ねて少しゆっくりしたい所。

    この後は肥土山集落の中心地を抜けつつ田畑の中を歩いていきます。

    74番円満寺

    74番円満寺。巨大なシンパクの木がお出迎えしてくれる大きな庭園の中にあります。

    円満寺を出ると、すぐ交通量の多い車道に出てきます。いよいよ、遍路を歩き始めた土庄中心地に近づいてきました。

    しかし小豆島で一番の町中でありつつも、まだまだ楽しませてくれるのが小豆島遍路。最後まで気を抜かずに参りましょう。

    49番東林庵

    49番東林庵(とうりんあん)。車道から少しだけ中に入ったところにあります。納経は宝生院にて。

    この後一度車道へ出ますが、「恋歌屋」(れんがや)という美容院のすぐ横の道に入れば忙しい車道を避けて50番遊苦庵(ゆうくあん)まで歩けます。

    50番遊苦庵

    50番遊苦庵。目の前には蓮の花が咲く池が。納経は宝生院にて。

    池の前の道を歩いて54番宝生院(ほうしょういん)へ。樹齢1600年以上と言われるシンパクの大木があることで有名なお寺で、観光客も年中訪れます。

    広い境内には51番宝幢坊(ほうどうぼう)52番旧八幡宮もあります。
    正門を入ってすぐ目の前にある立派な建物は社務所・客殿。各堂はその裏手や右手に回ったところにあります。

    51番宝幢坊の境内案内図

    ところでこの地図にある「幸せをよぶ宝の石」。ぜひ鳴らしてみてください。お遍路道中で聞く数々の音の中でも、きっと心に残る音の一つになると思います。

    51番宝幢坊

    51番宝幢坊(ほうどうぼう)。

    52番旧八幡宮

    52番旧八幡宮。

    54番宝生院本堂

    54番宝生院本堂。

    広い境内を出たら、すぐ横にある墓地の中を通り抜けます。これも小豆島遍路ではすっかりお馴染みとなった光景。

    そのまま町中に入っていくのかと思いきや、あれ?今ここでまたこの柵が登場……?

    小豆島お遍路道の柵

    小豆島では民家と猪の世界はまさに隣り合わせ。

    山道を登る人

    そして山道へ。全然大したことのない上りとはいえ、あとはもう町だけで山道はないと油断していたら精神的にちょっと堪えそう。住宅地はすぐそこにあるのにこの別世界感。大好きです。

    55番観音堂

    小高い丘の上にある55番観音堂。ご本尊は小豆島で唯一の馬頭観世音。納経は宝生院にて。

    さらに山の中へ進むと、いよいよ最後の札所、56番行者堂(ぎょうじゃどう)に着きます。

    最後の札所、56番行者堂

    最後の札所にしてご本尊は初めて出会う神変大菩薩、納経は宝生院にて。

    これにて結願(けちがん:札所全てをお参りし終えること)です!

    すぐ目の前には町や海の風景が広がっているのに、自分は山の中。俗世間に戻る前に、今までの時間を思い起こしつつしばし浸りたくなる場所です。

    土庄地区の中枢区。奥に広がる瀬戸内海

    浸りたいだけ浸ったら、山道をまっすぐに下ります。下りきったところは「オリーブタウン」と呼ばれるホームセンターなどが集まるショッピングセンターや役場など、土庄地区の中枢区。

    1日目にも通った土渕海峡を再び渡り、小豆島霊場総本院に帰ります。

    行者堂で終了してもいいのですが、歩き始めた場所に戻ることによって歩いた軌跡が円となって繋がります。四国八十八か所とともに、これが海外の巡礼と違う大きな特徴。輪廻転生の理念から来ているのでしょうか。

    歩き始めたときは何も分からなかったのに、歩き終えて帰ってくると視点も考え方も変わっている自分に気づきます。そして「次は○○しながら歩いてみよう」などと、また何度でも歩きたくなる。それが、歩いた人にしか得られないお遍路のおもしろい魅力。

    総本院に戻ると、結願日を記入してくださいます。

    納経帳に結願日を記入

    これにて本当に結願した気分になりました。

    88ヶ所の寺庵と奥の院4か所、総本院と番外が各一か所、合計94ヶ所、約140kmの行程を7日間で歩き終えました。お疲れ様でした!!

    書いていて改めて感じましたが、小豆島遍路はコンパクトながら一日のうちに何度もハイライトがあり飽きることがありません。遍路道を歩くだけで、十分観光としても楽しめます。

    今回のモデルコースの行程はあくまで健脚の方向けで、「小豆島遍路地図」に掲載のモデルコースに添って朝から夕方までみっちり歩くことを想定したものです。ですのでこれはあくまで参考例として、もっとゆっくり歩きたい方や観光もしたい方はぜひ時間をかけて小豆島を周ってみてください。

    一気に歩き終えてもよし、何回かに分けてもよし。いつかこの小豆島で、お遍路される皆様にお会いできますことを楽しみにしております!

    アイエアナロン範子
    私が書きました!
    ゲストハウスオーナー
    アイエアナロン範子
    ゲストハウス「Sen Guesthouse」を夫婦で経営。香川県出身。ニュージーランドのホステルで働いてから、世界中の旅人が「自分の家」のように帰ってきてくれるゲストハウスを将来作りたいなぁと大阪のゲストハウスで修行した後まずは松山で6年半ゲストハウスを開き、Senの第二幕として小豆島へ移ってきました。四国から、関西・本州・世界に近い立場として、もっともっとディープな四国ファンを増やしていこうと思います。https://www.senguesthouse.com/about-us-jp

     

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