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現地に足を運んで情報をアップデート!登山のマストアイテム”山と高原地図”のこだわりとは?

2022.01.14

登山の友といえば"山と高原地図"は手放せないアイテムだろう。目指す目的地までの時間や休憩ポイント以外にも、私たちの道標となる多くのヒントが隠されている。

これらはどの様につくられているのか山地図のプロフェッショナルをゲストに、歴史や制作の裏話について聞いてみた。

『日本百名山』と第一次登山ブームがきっかけ

戦後すぐに日本の登山隊がマナスルを世界初登頂し、山岳雑誌に深田久弥の『日本百名山』が連載されると、第一次登山ブームが起きた。愛好家が増えると共に"わかりやすい登山専用の地図”が求められるようになり、昭文社から出版されると、このブームにさらなる拍車をかけることとなった。

今回は創刊から56年の歴史を持つ昭文社の「山と高原地図」編集長の宇田川友道さんと編集部の高西美優さんのおふたりにお話を伺った。

編集部のおふたり(左:高西さん、右:宇田川さん)

出版社のあった西を代表するエリアの3点から始まった

──「山と高原地図」が最初に発刊されたのはいつごろですか?

宇田川友道さん(以下、宇田川):1960年に昭文社は大阪市で創業しました。初めて山と高原地図が作られたのは1965年なので、今年で創刊56年を迎えました。最初に作られたのは会社のあった関西圏でとても人気のあった「六甲山」と「金剛山」、そして「大山」の3つからスタートしました。

──創刊56年なんですか、それは凄いですね。現在はいくつのエリアが発売されているのですか。

高西美優さん(以下、高西):現在は、北は利尻山(北海道)から、南は宮之浦岳(鹿児島県)まで日本百名山の全てを含む61点が出版されています。これら全てのエリアで調査結果を反映するなど毎年アップデートを重ね続けています。

地元で活躍する山岳ガイドさんを中心に山岳写真家、地域のベテラン登山家や山岳会などにも協力いただき、実際に登山道へ足を運ぶことで見直しを図っているので内容には自信があります。

創刊当時(1965年)の山と高原地図。当時は「山岳地図シリーズ」という名称だった。
画像の2点に「大山(だいせん)」を加えた3商品で山と高原地図は産声を上げた。

地図に書かれた情報はどうやって確認している?

──毎年アップデートしているんですね。実際にどんな取り組みがなされているんですか?それらを何年にも渡り継続していくという点でご苦労などありますか?

宇田川現在、76の個人や団体に”実踏調査”を依頼しています。登山コースはもちろん、山小屋や水場の位置、危険箇所や目印となるものなどを実際に歩いて確認してもらっています。実踏調査の際にGPS(衛星測位システム)を携行していただき、それらの計測結果もルートの修正などに活用しています。

執筆や調査の依頼については、編集部から声を掛けさせていただくことが多いのですが、50年以上続く長い歴史の中では世襲制のような形で「こいつになら俺の代わりを任せられる」と、新しい方を推薦していただく場合もあるんです。もちろん実踏調査については何度も山に入っていただくことになるので、その山域の近くにお住まいのベテランの方が多いですね。

実際に登山コースを歩いて“実踏調査”を行なうからこそ、有益な最新情報が反映されている。

誰がどうやって決めている?コースタイム設定の秘密

──登山コースにプランニングの目安となる“コースタイム”が記載されていますが、距離などを基に何か計算式などから導かれているものなのですか?

宇田川コースタイムについては“実踏調査”から、実際に歩いた際のデータを基に記載させていただいています。それだけでは著者の方によって歩くペースが違うので、実際に歩かれた方のデータに加味している4つの条件があります。地図を広げた際に”凡例”と呼ばれる囲みがあるので注目して下さい。そこにはコースタイムについて以下が示されています。

(1)40〜60歳の登山経験者(初心者のペースではないこと)

(2)2〜5名のパーティー(単独ではなくグループでの行動ペース)

(3)山小屋利用を前提とした装備(テントなどを持参していない、重量負担の少ない装備)

(4)夏山の晴天時(天候に左右されない条件)

実際に歩いていただくことで分かることもあります。本来は正規ルートだったところが使われなくなり新しいルートに付け換わっていることも。「正規のルートは危なくなっているので、新しいルートに書き換えた方がいいね」と著者の方が実際に歩いているからこその適切なアドバイスをいただけます。

地図を見ていて記号や読み方がわからないと思ったら、凡例を確認してみよう。

1番人気のあるエリアは?やはり憧れのあのエリア

──国内で人気のある山といえば、富士山や高尾山の名前があがります。気になるのは61点もある中で、1番人気のあるエリアはどこか、と言うことですがいかがですか?

高西人気の度合いは地域によっても異なるのですが、北アルプスの”槍ヶ岳”などは、やっぱりハズせない存在ですね。憧れの山がいくつもあるエリアです。地図を広げたときに、全体を見渡せていろんな見方ができるのが紙の地図の面白さだと私は思っています。地図アプリと比較しても紙の地図は全体像を捉えやすいですから、縦走など沢山ある山の中でどこに登るんだっていうことを把握したい場合などに、特に槍ヶ岳を含む人気の北アルプスエリアは紙の地図を必要とする方が多いのではと推察しています。

──地図上に書かれている注意事項などは度々書き変わっているようですが、地図を買い換えるタイミングは

高西大雨や台風などの災害やコロナ禍のように社会情勢が大きく変わった時などには、登山道の状況をはじめ小屋やバスの運行などの変更情報を反映しているので、安全安心な登山の為にも新しいものできちんとチェックしていただきたいです。

先ほど申し上げたように全てのエリアで改訂作業を毎年行なっています。その内容は新しい調査情報に基づいて更新しています。なので本音を申しますと、毎年新版に買い替えていただくのが嬉しいです(笑)。

2021年度版からは、スマホ用のアプリ“山と高原地図ホーダイ”にも対応した「購入していただいたエリアがアプリでも1年間無料で利用できるようになるキャンペーン」を行なっています。登山計画は紙地図で行ない、現地では紙と併用して電子地図をアプリでチェックするなどの活用の幅が広がりました。これだけでも買い替えていただく価値は十分あると思います。

紙地図とアプリの電子地図を併用することで地図活用の幅がさらに広がる。

安全登山を願う編集部の地図づくりへのこだわりとは

──最後に編集部の地図作りへのこだわりを教えてください

宇田川地図を手に取ったら、是非見てもらいたいポイントがあります。

地図には色が付いていますよね、これは「段彩表現」と言い、高いところは山らしく茶色に、沢や谷など標高の低いところは緑色になるように色を設定し編集部のオリジナルで綿密に作っています。実は61点全てでその設定を変えているのです。これは地図を広げて見てもらった時に、どのような色合いにしたらそれぞれのエリアの地形が綺麗かつ立体的に見えるのかを追求してきたからなのです。これが私たちの地図作りの中でのこだわりの一つです。

なので手に取って広げた時、高低差や山容がパッと一目で捉えやすいと感じていただけたらとても嬉しいのです。

阿蘇山の段彩図。中央の阿蘇山は茶色で盛り上がって見えるように、鉄道も走る周辺のカルデラは緑色で平らかつ低く見えるように、それぞれ地形に着色しています。

剱・立山の段彩図。中央の茶色く高くなった部分が剱岳と立山で、その東側には下ノ廊下と呼ばれる峡谷が深く切れ込んでいます。このようにそのエリアの地形的特徴を視覚的に捉えやすいよう、段彩の色合いに工夫をこらしています。

安全への願いとアップデートを重ね続ける未来への地図づくり 

実際に歩いて調査を行ない、山のプロによる監修のもと毎年更新版が作られるなど地図づくりの裏側を知ることで、使う側の私たちもコースタイムだけでない使い方、読み取り方ができるのでは。

色彩表現へのこだわりなど私たちが意識的に見ることで新しい発見も得られるのだと思いました。安全登山を願う編集部の地図づくりへの探究は尽きません。

さっそく本棚から地図を取り出して広げてみませんか。

使ってみよう!「山と高原地図」

今回の記事に関する関連情報は下記のURLからを見ることができます。

商品のラインアップと収録範囲が確認できます。
https://www.mapple.co.jp/blog/3310/

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私が書きました!
JSPO公認山岳コーチ
岸 正夫
アウトドアの楽しみを多くの人と共有したいと“山ごはんクラブ”を主宰。キャンプだけでなく低山ハイキングから高山縦走まであらゆる山行を楽しむ。トレイルランニングやウルトラランニング歴も長い。遊ばせてもらっているフィールドに恩返しする気持ちで、ハイキングコースの整備に取り組んでいる。
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