ユーコンに帰って来るサケの産卵を見にいってきた | 自然観察 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル

ユーコンに帰って来るサケの産卵を見にいってきた

2021.12.24

海のないユーコンにサケが帰って来る

カナダ、ユーコン準州の左隣はアラスカ、そして南に位置するのはブリティッシュコロンビア州。それぞれは太平洋に面していて、そこへ向かって流れる川の上流部がここユーコン準州にはある。そのうちのひとつ、クルアニ国立公園周辺を流れる川に、サケを探しに出かけてみた。

フィッシュキャンプ

クルアニ国立公園周辺を流れるサケが遡上して来る川では、夏から冬の始まりにかけてキングサーモン、ベニザケ、シロザケ、ギンザケの順で遡上してくる。

国立公園南側を流れるクラクシュー川。その川が地元ファーストネーション(先住民)のサウザンタッショーニ族の村、クラクシュー村の中を流れる。この村は、普段街に住む人たちが遡上時期にサケを取るための場所として使われていて、川も浅くて泳ぐサケが見やすい。

ベニザケ

この村では夏が終わって紅葉が始まる頃、産卵を間近に控えて、身体中が真っ赤になったベニザケの観察ができる。サケは常に上流に向かって泳ぎ続けているかというとそうではなくて、流れの弱いところで体を休めつつ、タイミングを見測るように流れの速い難所をサッと泳いで、また流れの緩いところで体を休めるといったことを繰り返す。

時には周りにメスがいなくても、オス同士で泳ぎやすいルートを取り合うかのように、噛み付き合いのケンカをしている。そのたびにせっかく上った急流を、下ったり上ったりを繰り返す。

流れが穏やかな箇所まで上がってくると、産卵の準備がはじめる。メスが尾びれを使って川底の土や小石を巻き上げて、柔らかくして、産卵用のベッドを作りはじめる。そうするとオスたちが周りに集まり始めて、オスはメスを取り合ってケンカを始める。メスがオスを選ぶというよりは、メスが産卵の準備が整うタイミングで、勝ち残ったオスが交尾の権利を得られるという流れのようだ。オスとメスの数のバランスが程よい時は、オス同士のケンカは少ないように見えた。

僕はカメラトラップやリモートカメラではなく、自分でシャッターを押さないと気が済まないタイプなので、ウェットスーツを着てカメラを防水処理して、冷たい川の水に浸かるということを毎年数日間やっている。そうやって川底に近づいて見てみると、生まれて間もない卵が見られることもある。

それ以外の動物たち

今年はコロナ禍の影響で、9月を過ぎた頃から村人以外は村に入れなくなってしまった。それでも村の外の川沿いを歩いてサケを探してみると、偶然にも他の動物にも遭遇することができた。

どこからともなく威嚇するような荒い鼻息が聞こえると思って見回してみると、周りに誰も居ないが小さな気配は感じる。よく対岸を見てみると、カワウソの親子がこちらを見ていた。巣が近くにあるのかもしれない。

「サケ=クマ」と思っている人も多いと思う。サケが遡上してくる季節でも、ベリー類の木の実がなっている時期は、そちらを食べるのに忙しいらしい。その証拠にその頃川沿いに落とされたクマの糞は、ベーリーの皮と種ばかり。

川に戻ってみた

ベニザケの季節が終わって雪が降りはじめた頃、もしかしたらまだギンザケが戻ってきているかもしれないと、クラクシュー川に戻ってみた。

サケや他の動物の形跡を探しながら川沿いを歩いていると、背後で微かに音がした。ゆっくり振り返ると20メートルくらい離れた大きな木の影から、ヌーっとゆっくり大きなグリズリーが顔を出した。慌ててカメラを取り出してもう一度クマの方を見ると、もうそこに姿はない。クマのいた場所まで行ってみると、川から上がって濡れた足跡が雪の上に残っていた。自分の長靴の大きさと比べてみると、クマの大きさが想像できる。

こんなにも大きな動物が自分の姿を見てさっさと森の中に姿を消したと思うと、なんだか愛おしい気持ちになった。雪の上の足跡は森の中に向かって続いていたけれど、僕はそっとその場を離れることにした。

それから1週間もしたら、気温が連日マイナス20度C台になった。もうクマは冬眠をしないといけない頃だな。そしてユーコンに本格的な冬がやってきた。

私が書きました!
ビデオグラファー、フォトグラファー
杉本淳
カナダ、ユーコン準州ホワイトホース在住。2008年にユーコン川下りで訪れて以来、ユーコン準州に通い始める。2011年に移住後も、ユーコンに生きる野生動物や人々の生活を引き続き撮影中。ユーコンから色々なトピックをお届けします! ウェブサイト:www.arcticmediacreation.com

 

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