東日本大震災を経て生きる人びとの記録。 ドキュメンタリー映画『たゆたえども沈まず』 | ニュース 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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  • 東日本大震災を経て生きる人びとの記録。 ドキュメンタリー映画『たゆたえども沈まず』

    2021.06.05

    2011年3月11日東日本大震災。あれから10年経った今年、テレビ岩手が製作したドキュメンタリー映画『たゆたえども沈まず』が公開されています。被災地を地元とするローカルテレビ局がその只中で、丹念に丁寧に映し出すあの日と、その後の記録です。

    釜石の街を襲う津波。一瞬で街を飲みこむ、その速さと強烈な力に言葉を失う。

    映画は3月9日に起きた地震のニュースに始まりその二日後の14時46分、モーメントマグニチュード9.0という日本周辺における観測史上最大の地震の発生直後のテレビ局内が映し出されます。散乱する資料、ロッカーが倒れないよう両手で抑える職員。ゆっさゆさとした揺れはなかなか収まりません。あのときの揺れは、こんなに長い時間だったのか。そんなことから、もう驚いてしまいます。

    意外とのんびりとした足取りで高台へ逃げるお年寄りや息を弾ませている小学生たち。お友達と走ってきたのがちょっと楽しかったのか、なかには笑顔の子もいます。けれど振り返って海を見ると、津波が黒い濁流となって自分たちが暮らす街をそっくり飲みこんでいくのです。車はぷかぷかと浮き、家も丸ごと波に流されて行きます。

    「うわ~来た来た来た。た~いへんだ。もうダメだ。いやあ……」

    あまりのことに言葉を失うおじさん。さっき笑っていた子も、いつの間にかその光景に絶叫しながら泣いています。冒頭の津波の映像を改めて観て、本当に心臓が痛くなりました。無意識に、あれは過ぎ去ったことでなかったことにしようとしていた記憶が一瞬で蘇り、映像の力を思い知るよう。それが映画の始まりです。

    親戚の子に語りかけるようにカメラマンの体調を気遣う旅館の女将は、身を寄せる近所の住民数十人に温かい料理を提供し続けます。「こういうときこそ地域住民の足になるべきじゃないか」と震災からわずか五日後、被害を免れた区間を無料で運転再開した三陸鉄道の職員。そして丁寧に頭を下げて電車を後にする利用者のおばちゃん。そんな姿にいちいち心を掴まれます。

    宝来館の女将。震災後、旅館の裏山に、車椅子でも上がれる避難路を整備する。

    生き延びた人びとがカメラ目線で、行方不明になった家族の安否を尋ねるビデオメッセージでは、自身がギリギリの状態であるはずなのに誰かを思いやる姿にもらい泣きしてしまいます。そして映画の後半、彼らの現在の姿に触れ、必ずしも全力でハッピー! とはいえなくても懸命に生きている(生きていた)姿にじんとしてしまうのです。ごくフツーでまっとーな人びとの、ちょっと信じられないような力強さ。なんども思い出すであろう映像が続出し、何年後かにまた繰り返し観たいと思わせるのです。

    〝たゆたえども沈まず”――揺れ動きながらも決して沈まない。人は本来そうした力を持っていて、それはごくありふれた真実であることを思い出させる、真に力強いドキュメンタリー映画です。


    『たゆたえども沈まず』(配給:テレビ岩手)
    https://www.tvi.jp/tayutaedomo/

    ●監督:遠藤 隆(テレビ岩手)●ナレーション:湯浅 真由美
    ●ポレポレ東中野で公開中。6/19〜シネマ・トーラス(北海道苫小牧市)他、各地での上映を目指す。
    (C)2021テレビ岩手

    文/浅見祥子

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