ユーコンでソト遊び暮らしを実現! 7年の軌跡 第14回
昨年の反省を生かす、2度目の川旅へ出発

「今年もユーコン川へ、去年の続きを下ろう」
漠然とそう思って準備を進めていました。しかし日程的なことと送迎の問題から、今年もテズリン川、ユーコン川の、全く同じ370kmのルートに再挑戦することに。昨年、息子と二人で行った人生初の川旅からの反省点として、①食料問題、②パートナー問題、③日程問題がありました。①は「常に腹ペコだった、もっと食料を持っていくべきだった」ということ。②は「息子と二人も楽しかったけど、大人の友達かソロでの挑戦もしてみたい」。③に関しては「もっと余裕のある日程を組むべきだった」というものです。結果、食料を十分に準備し、ソロで、全行程9日間での川旅スタートとなりました。
一人で漕ぐのはきびしい!

昨年と同じジョンソンズ・クロッシングから、2度目の川旅が始まりました。川の上にかかる橋がどんどん小さくなっていきます。これから先、ゴールのカーマックスまで、橋どころか現役の人工構造物はほとんど存在しません。大冒険の始まりです。漕ぎ始めてまず思ったのは(こんなにしんどかったかな?)ということ。昨年は9歳の息子もいましたが、彼も意外と漕げていたんだなということに気付きました。疲れたらAllyの床面に座っておやつ休憩をしたり、時には10分ほど昼寝しながら流されてみました。
“1キャンプ地1グループ制”

カヌー旅は川地図を頼りに進んでいきます。川地図には周りの地形や目印、かつての集落など立ち寄るべき場所のほか、キャンプ地も記されています。初日は、スタート地点から30kmほどのところに泊まろうと決めていました。さて、目標のキャンプ地が近づいてきます。しかし、その上陸地点にはすでにいくつかのカヌーが陸揚げされていました。
昨年学んだことですが、川旅では“1キャンプ地1グループ制”が不文律のようでした。なのでここには泊まれない。焚き火を前にくつろぐパドラ−達に手を上げて挨拶し、先へ。もう少し行ったところにも他のキャンプ地があるようなので、岸に近づき、目を凝らしながらゆっくり進んでいきます。
(あれかなぁ?)
キャンプ地はそれとわかりにくい場合が多く、しかも川という性質上後戻りができません。とりあえずフネを岸につけてロープでしっかりと木にくくりつけ、斥候してみました。
(焚き火台が無いけど、今日は火をおこさなくても大丈夫か。もうしんどいし、ここにしよう)
荷物をカヌーから下ろし始めたと同時に、無数の蚊が襲いかかってきました。さらに足を踏み外して長靴の中に水も入ってしまった。最悪のコンディションの中、とにかくテントを組み立てて蚊から避難しました。しばらくすると雨も降り出し、川旅初日のキャンプは最悪のスタートとなりました。
川旅の醍醐味を思い出した2日目

翌朝5時半頃、テントのすぐ近くでリスがケンカを始めて目覚めました。外に出てみると、夜の間降り続いていた雨はすっかりやみ、川は朝もやに包まれてました。
「そうそう、これこれ!」
川旅の朝の爽やかさと、今日はどこまで進もうかという高揚感に包まれて、トレイルミックスをひとつかみ口に放り込み、蚊だらけのキャンプを後にしました。舟出してすぐ、とても良さそうなキャンプ地を見つけました。どうやら川地図が示していたのは、本当はそれだったようです。
(今夜こそまともな所でゆっくり焚き火したり本読んだりしよう)
そう心に固く誓った2日目の朝でした。
しばらくすると岸辺にムースが一頭、こちらをじっと眺めていました。なかなか幸先のいい一日のスタートです。
思い出のキャンプ地に到着

今日は50km近く漕ぎ、お目当てのキャンプ地も近付いてきました。一日の間、昼食はフネの上で行動食を取るだけ。たまに漕ぐのをやめて休憩したりもしますが、上陸するのは基本的にトイレの時だけです。天気も良く、陽の光をもろに浴びるので体力はどんどん削られていきます。
「頼む、あのキャンプ地に入りたい。誰もおらんといてくれ……」
祈るような気持ちで、最後の力を振り絞って漕いでいきます。カーブを曲がり、目的のキャンプ地らしい場所が見えてきました。赤や緑の人工的な色が見えたら他のカヌーですが、どうやら誰もいない! やった! 大喜びでパドルを漕ぎ、無事に上陸成功。今日もよく漕ぎました。昨年も泊まった思い出のキャンプ地です。30mほどの崖を登ると川が一望でき、遠く遠くに今朝通ってきた山並みが見えました。川旅の醍醐味は、人によって差はあるとは思いますが、私の場合は川4:キャンプ地6ぐらいの割合です。この楽園で、今夜はしっぽりと焚き火をしよう。
新たな出会いが思い出を更新していく

ホクホク顔で崖を下ると、赤いカヌーが一杯下っていくのが見えました。“1キャンプ地1グループ制”なので、そのまま行くだろうなと思っていましたが、カップルが上陸してきて話しかけてきました。少し申し訳なさそうに「今晩僕らもここに泊まっていい?」とのこと。内心(うわー)、しかし笑顔で「もちろん、大歓迎だよ!」と返しました。聞くとロンドンから来たとのこと。本国でもカヌーはするが、今回のような大きな川旅は初めてだということでした。私が野田さんのようにもっと社交的で酒飲みだったら楽しい一夜になったのでしょうが、お互いに何となく気を遣い合い、微妙な距離感のまま夜は過ぎていきました。
あたりも暗くなり始めた夜9時過ぎ、川の方から「ブッ、ブッ」という不思議な音が聞こえてきて、3人で顔を見合わせました。見に行ってみると、なんとムースの親子が川を泳いで下っているではありませんか。レアな光景に出くわし、その時ばかりは3人とも心がひとつになりました。
川旅、2日目が終了。そろそろ陸でゆっくり過ごす時間が欲しいなと思いながら、テントの中で眠りにつきました。




