つまり「トンネルを掘る」のではなく、地面から直接ガバガバと穴を掘って石炭を採掘します。日本でも高層ビルを建てる前に地面を掘りますが、あれをずっと巨大にした感じですね。
どうも、オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。
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【柳沢有紀夫の世界は愉快!ドイツ・フライデンブルク州編1】
今回はドイツにあるそんな露天掘りの炭鉱にまつわるウォーキングです。というと噴火口または巨大クレーターのような巨大な穴に入っていくのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。
露天掘りの炭鉱で使われていた巨大な機械の上をウォーキングするのです! その機械というのがこちらです。

「いやいやいや。これ、機械じゃなくて橋でしょ? ってことは建造物じゃない?」
そんなツッコミの声が聞こえてきそうですが、端から端にベルトコンベアがつながっているから「機械」なのです。さらには左端と右端の下に巨大な車輪がいくつもついていて、レールの上を動かすこともできますし。
場所はドイツのブランデンブルク州リヒターフェルドという村。旧東ドイツに位置します。もう少し近寄ってみましょう。

全長502メートル、重量1万1000トンの鋼鉄の建造物。「横たわったエッフェル塔」という異名があるとのことですが…別に高さ330メートルのエッフェル塔と比較する必要はないかな。笑
名称は「F60」。構造物全体の高さは80メートルなのですが、ある部分の高さが60メートルなのでこう名づけられたのだそうです。
さてこれを見て「でけ~っ!」とビックリするだけでは「BE-PAL」の記事になりません。はい、じつはこの上に登って端から端まで歩けるんです!
ただその前にちょっとだけこの機械の仕組みについて説明しましょう。

この鉱脈で掘った石炭を左の部分にベルトコンベアで運び、その後橋のようになっている部分に設置された別のベルトコンベアで右側に移し、そこから貨物列車などに載せて運び出したのだとか。
鉱脈の深さは60メートルで長さ3キロメートル。ここから効率よく石炭を掘り出して運ぶためにこの巨大な機械はつくられたのです。
という説明を地上でガイドから聞いている間にも、遠足だか社会科見学だかに来ている地元の小学生集団が上のほうからギャーギャー騒いでいるのが聞こえて、「頭は5歳」の私の気をそらしてくれます。笑
ウォーキングツアーのスタートです!
さていよいよF60へ。最初はもちろん階段を登るところから始まります。

あっというに地上30~40メートルくらいのところへ。

一つの部屋が係員詰め所で、もう一つがコンピュータールーム。ベルトコンベアの制御はコンピューターで行うからですね。

半端ない「鉄の塊」感に圧倒されます。


通路の手すりには黄色いペンキが塗られています。ベルトコンベアが通るのはこの通路の左側です。
意外と多いアトラクション!笑
じつはこの「F60」を歩き始める前、ちょっとした心配がありました。それは……。

…ということではありません。まあ、真下を見ると足がすくみますが。
私が心配だったのは「橋のようにただまっすぐ通路が続いているだけだったらどうしよう」ということ。もしもそうだとしたらたとえこれが「動く機械としては世界最大級の大きさ」という由緒正しいものであっても、アトラクション的には「陸にかけられた橋」でしかないですからね。しかも「全長502メートル」はグラグラ揺れる歩行者用の吊り橋なら世界有数レベルですが、鉄橋ならそれほど長いものでもないですし。
でも心配無用でした。上がったり下がったり、ちょっと曲がったりもあり…。

それから先ほど「ビビる高さ」と書きましたが…。

ちなみに私のいっしょのグルーブだった女性はF60を遠目から見たときには意気揚々だったのですが、いざ登り口まで来て見上げた瞬間「やっぱりやめる」と撤退しました。
さてさて途中でオレンジ色のゴンドラが上がってきました。

「すみませ~ん。乗せてもらっていいですか?」と叫んだらいっしょに英語のツアーに参加していた人たちには大ウケしたのですが、ゴンドラの乗員には無視されました。ザクセン州ゲルリッツでの記事でも書いたように、ドイツでも旧東ドイツのエリアではあまり英語が通じません。
「橋」の上にアレもある!
そんなこと考えながら歩いていると次に見えてきたのがこの個室たち。

念のためドアノブを引っ張ってみると…。

このF60が現役で稼働していたころ、地上のコンピューター制御室にいる係員とは別に「橋」の上にもベルトコンベアの不具合をチェックしたり直したりする作業員もいました。彼らは一度ここに上がったら勤務時間の8時間ずっととどまっていたそう。だからここで食事もしたしトイレも済ませたのです。
トイレに女性用もあったのが意外だったのですが、じつは労働者の半分は女性だったとのこと。これは別の場所で聞いた話ですが、旧東ドイツでは男女ともに外で働くのが当たり前だったのだそうです。
そういう意味では社会主義国、時代の先端を行っていたのかもしれません。

炭鉱跡から再生可能エネルギーの施設が見られるというのもなんとも象徴的ですね。
いよいよ最高地点かつ折り返し地点へ!
そんなこんなで登り始めてから35分で折り返し地点へ。

やはりここがいちばんの見所ということもあり、最後の階段は渋滞しています。「エベレスト山みたいな行列だね」とつぶやいたらそれなりにウケました。

元々あったものではなく観光用に新設されたものだそうです。
さて登ってきたのとは反対側を下ります。石炭を掘った跡に水を溜めたという湖が見えました。周りは自然公園。

さてじつはこのF60、1991年~1992年にかけて1年3ヵ月しか使われなかったそうです。「それで採算は取れたのですか?」とガイドに聞いたところ、同じようなものが他のところに3~4ヵ所あって、それらは50年とか使われているそう。この1ヵ所だとむずかしいでしょうが、すべて合わせたら採算は取れているのでしょうね。
1年ちょいでまさに「無用の長物」になってしまったこのF60、最初は解体する方向で話がすすんでいました。でも地元の有志などがなんとか残すように働きかけたのです。


オーストリアの岩塩坑跡でも感じたのですが、こういうものを安易に壊してしまわないで産業遺産として公開するのが素晴らしいと思います。
【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら!
ドイツ観光局
https://www.germany.travel/en/campaign/german-local-culture-jp/home.html
F60(英語サイト)
https://www.f60.de/en/




